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はっぴぃもぉる 025

彼女の話はこうだった。

できるだけ簡潔にまとめたいとは思うのだが、
なんせ突飛に過ぎる話であるため、
簡単に要約できる自信はない。

僕の背中、左肩部分、首筋と言っても良いかもしれないとのことだが、
とにかくそこには1つのほくろがあるらしい。

そして、そのほくろは、ある時とない時があるらしい。

豚まんのCMじゃあるまいし。
とツッコミたくなるが、彼女のその刺すような視線を前にすると、
その関西ローカルなツッコミは飲み込まれてしまった。

ここで早くも聞きたいことがいくつかある。

まず、何故それを彼女は知っているのか。

そして、何故それを僕は知らないのか。

更には「ある時とない時がある」とはどういうことなのか。

そして、その「ある時とない時がある」という事実、現象は、
僕の身体や暮らしに、どう関係しているのか。

ただほくろが消えたり現れたりするだけならば、
なんら日々の暮らしに影響など無いはずだが、
案外そうでも無いのだろうか。

などと、僕の脳内は行き交ういくつもの思考で交通渋滞を起こしていた。
それが為に、言葉を発する機能にはブレーキがかかってしまった。
受動的に尋問されていたのは、それも影響しているだろう。

聞きたいことが多すぎて何も聞けない、ということは、誰しも経験したことがあるはずだ。

そしてその交通渋滞が整理されないまま、彼女はまた新たな、そして最大の疑問を投げかけてくる。

「それで、あなたは2つの違いを認識できていないってことでいいのね?」

ここで一触即発、なんとか秩序を保っていた脳内の幹線道路は、耐えきれず事故を起こし交通止めとなってしまった。

シャットダウン。
思考はストップしてしまった。

はっぴぃもぉる 026へ続く




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