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最近読んだ本の話 vol.23

 「最近読んだ本の話」の第23弾です。晴れたり雨が降ったり毎日目まぐるしく天気が変わりますが、6月ももう後半になりました。時間が経つのは早いなあ。今週も最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、金原 ひとみ『fishy』

友愛でも共感でもなく、この刹那に集う女たち。
作家志望のライター美玖、共働きで女性誌の編集をつづける弓子、インテリアデザイナーのユリ。
都内きってのナンパ街となった銀座のコリドーで、
三人は互いのプライベートに踏み込まない距離感を保ちながら、
この場かぎりの「ともだち」として付き合いをつづけている。
気ままな飲みともだちに見えるが、彼女たちが抱える虚無は、
仕事でもプライベートでも、それぞれに深い。
結婚したばかりの男に思いを寄せ、不倫によって日常が一変する美玖。
サレ妻となった弓子は、夫の監視に疲弊しながら仕事と家庭と自尊心を守ることに必死だ。
ユリの生活はリア充に映るが、まったく不透明で真実を見通すことができない。
愚かしく、狂おしく、密やかに――彼女たちの日常にひそむ罠と闇と微かな光。
女性の生き辛さと新たな連帯をを鮮やかに切りとる著者の到達点。
                                                                                              -Amazonより引用-

 3人の女性が主人公で、それぞれが語り手になっています。友達だけど内心は嫌っていたりする、その距離感がちょうどいいのか最後にはこの3人じゃなきゃ、と思った。金原さんは明晰でカッコいい人だ。すごくいろんなものが込められた小説です。主人公たちが遭遇した状況に、ひどいな!と怒りを感じたり、涙が出そうになったり、ラストは3人が落ち着いたようでほっとして、だけど本当に落ち着いたのかは分からないんだけど、いつの間にか親しみを感じていました。


2、ジョン・ファンテ『ロサンゼルスへの道』

アルトゥーロ・バンディーニのサーガ
幻の第一作、本邦初訳!
ページに叩きつけられた言葉の苛烈さ、奔放さ、
そして、そうした言葉に映し出される
透きとおるような誠実さ――(「訳者あとがき」より)
19歳、苛立ち、空回る概念、ピカピカのプライド、缶詰工場、嘘、涙……
                         -Amazonより引用-

 ジョン・ファンテの長編小説の未発表の第一作だそうです。発表されている長編三作の前の時代について書かれていて、作者が亡くなった後、鍵付きの引き出しから発見されたそうです。先週ご紹介した、ジム・トンプスン『漂泊者』と、主人公の置かれている状況が似ています。家族のために収入を得るため過酷な労働をする若者が、小説家になるという夢を持っていて…という物語です。作者は別の人間ですし、主人公の性格も正反対です。この『ロサンゼルスへの道』の主人公は、性格的なこともあり、家族に悪態をつき、とても嫌われ、周囲の仕事仲間からも疎まれます。それでも家族のために働こうとします。ファンテは自伝的ではあるけれど、事実とは異なる物語を書いたそうです。主人公の文学への情熱が、自分とは違う形で報われるように。この最初の物語を、ずっと引き出しの中に入れていた意味が気になります!


3、遠藤 周作『影に対して: 母をめぐる物語』

あの時、私は、本当に母を棄てたのだろうか……。新発見小説は遠藤文学の鍵となる傑作だった! 「人生」を燃焼させようとする烈しい母、「生活」を大事にする父。二人が離婚した時、幼い息子が強いられた選択は、やがて……。今年発見された未発表の中篇小説「影に対して」をはじめ、母を描いた名作を集成。『沈黙』や『深い河』の登場人物が結局キリストを棄てられなかったように、母と別れることは誰にもできはしない――。
                                                                                              -Amazonより引用-

 遠藤 周作さんは有名な作家さんですが、私は今までに作品を読んだことがなく、この本で初めて読みました。母を描いた物語が収められていますが、登場する母のモデルは遠藤 周作さんのお母様のようです。読んでいると胸がざわざわしてきます。物語の中の登場人物たちの言葉を読んで、忘れていた怒りみたいなものが込み上げてくる感じです。読んでいるとお母様の味方をしたくなります。おとなしく従順で常識的な人を良しとするなら、はじめから結婚しなければよかったではないか、と思います。好きなことを情熱をもって真剣にやってきた人が、結婚して何もできなくなるのは悲しい。今の時代だったら、両立はできたんだろうか?家族の形が違ったっていいはずなのに。


 今週も「最近読んだ本の話」を書くことができました。よかった!書く前は、どうしよう、何書こう?と思うのですが、書き終わるともっと書きたいような気持ちになって不思議です。最後までお読みくださってありがとうございました。

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