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最近読んだ本の話 vol.47

 「最近読んだ本の話」の第47弾です。クリスマスも近づいて、一気に寒くなってもう冬ですね。今週は、最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、アリ・スミス『冬』

不協和音の時代に生まれるメロディを描く、21世紀のクリスマス・キャロル。年末の帰省で母に紹介するはずだった恋人と大喧嘩した男が、代わりに移民の女性を連れてきた。だが、実業家を引退し孤独に暮らすその母は、すっかり塞ぎ込んでいる。そこで息子は、母とは正反対の性格の伯母を呼び寄せた。水と油の人々の化学反応は、クリスマスをどう彩るのか。英のEU離脱が背景の「四季四部作」冬篇。          -Amazonより引用-

 「四季四部作」の『冬』の翻訳が出版されたと知って、読みたい!と思っていました。物語の冒頭から、主人公の母の元に突然現れた子供の「頭」と、少しずつ仲良くなっていく姿が描かれていて、何が起こってるんだ?と一気に物語に引き込まれます。クリスマスの休暇に恋人を連れて母の家に帰省するはずだった主人公アート(アーサー)は、恋人と大喧嘩してしまい、バス停で見かけた女性に恋人役のアルバイトを頼みます。2人が家に着き母親の状況を知るなり、その女性ラックスは、母の姉である伯母を呼ぶ寄せるようにアートにすすめます。そうして何十年も口をきいていなかった姉妹が久しぶりに顔を合わせて…。主人公のアートはブログを書いていて、そのことが何だか他人事とは思えないような感じがしました。恋人にも酷評され、恋人役を頼んだラックスには、「これはあなたじゃないみたい」と言われます。まったく意見の合わない姉妹が、このクリスマス休暇の後はアートを介して連絡を取り合うようになり、その変化が面白いです。歴史も社会状況も社会問題も美術も文学もたくさんのことが物語に詰め込まれていますが、ちょっと息を抜ける所もたくさんあり、バランス感覚が素晴らしいです。こんな小説を書ける人が他にいるだろうか?『秋』に登場したダニエルが『冬』にも登場します。『春』と『夏』も早く読みたいなあ。


2、梨木香歩『ここに物語が』

何を、どんなふうに考えながら生きてきたか。物語を発見する日常を辿る。創る者も読む者も、人は人生のそのときどき、大小様々な物語に付き添われ、支えられしながら一生をまっとうする――どんな本をどんなふうに読んできたか。繰り返し出会い続け、何度もめぐりあう本は、自分を観察する記録でもある。思索と現実、日常にいつも共にある、本と物語をめぐるエッセイ集。                     -Amazonより引用-

 2002年から2021年に書かれた梨木香歩さんの、本と物語をめぐるエッセイです。梨木さんがその本を読まれて感じたこと、過去に読んだ時に感じたことや、様々な社会状況や歴史のこと、お好きだという植物の話など盛りだくさんの内容です。読みながら、紹介されている中で読みたい本をメモって、またリストが増えました。児童書も数多く紹介されています。梨木さんはこの本の中で、このようにおっしゃっています。

p.27 児童文学をもっと大人にも読んでほしいと思うのは、この、「幼かった自分の感覚」を手元に引き寄せることで、今の自分が存在の厚みを増してゆく、確かな「感じ」があるという効能のためでもある。      

 幼いころの感覚をもう持っていなかったとしても、児童文学を読むことで再びその感覚を引き寄せて、自分なりの「感じ」をつかみ直せたら、今の自分にとっても効能があるということです。昔読んだ児童文学をもう一度読んでみようかなあ。


3、こがらし 輪音『7年』

これぞ新しいタイムリープノベル。
電撃小説大賞受賞の著者が贈る感動作!
2020年10月、新型コロナウイルスが蔓延し世界が混迷を深める中、上司や部下にも見放され、家庭も崩壊――。何もかもうまくいかず、ついに急性肝炎で入院してしまった五百旗頭(いおきべ)照夫は急激な立ちくらみに襲われ、目覚めるとなぜか7年前の世界に戻っていた。やがて、1日を経るごとに7年前にタイムリープすることに気づいた照夫は、自身が起こしてきた過去と向き合っていく……。自分はどこで間違ってしまったか? そして未来を変えることができるのか?            -Amazonより引用-

 主人公は、48歳のサラリーマンです。仕事も家庭も崩壊寸前の状況で、急性肝炎で入院中に急激な立ちくらみによって、7年前にタイムリープしてしまいます。主人公の照夫は、7年前の世界で中学生の息子との関係を何とか修復しようと奮闘します。そして眠って翌日になるとさらに7年前にタイムリープしていて…。7年前に遡るたびに、自分に与えられたその1日を最大限に生かして照夫は今までの自分とは違う行動をとり、どんどん人間関係を改善していき、人の命を救ったりもします。もしも自分が同じように7年前にタイムリープしたらどうする?と考えてみたりもして、「うわあ、あの年かあ」と思ったり、思い出してみると色々なことがあって、14年前にはその7年後のことはまったく予想もできなかったし、今だって7年後のことはわからないけど、大事なことを見失わないように生きないと!と思いました。大切なことがたくさん込められている本です。


 今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。体調も良くなって本を少しずつ読めるようになりました。冬休みになったらゆっくり読めるなあ、と今はそれが楽しみです。最後までお読みくださってありがとうございました。

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