最近読んだ本の話 vol.21
『最近読んだ本の話』の第21弾です。6月に入りましたが緊急事態宣言が継続中で出かけられず、今週も本を読んでいました。最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、アントニオ・タブッキ『イザベルに: ある曼荼羅』
ポルトガルの独裁政権下で地下活動に関わり姿を消した女性イザベルをめぐる物語。
リスボン、マカオ、スイスと舞台を移しつつ9人の証言者によって紡がれる謎の曼荼羅。
『インド夜想曲』『遠い水平線』の著者が遺した最後のミステリ
-Amazonより引用-
イザベルの消息をたどって、ある人物がイザベルのことを知っている人物を訪ねる形で物語が綴られています。章ごとに場所が変わり、リスボン、マカオ、スイスへとイザベルの消息をたどる人物は移動していきます。アントニオ・タブッキが書き続けていて引き出しにしまってあった未刊行の原稿が、亡くなられた後出版されたそうです。『レクイエム』の続編のようで、同じ登場人物の別の形の物語が描かれているそうです。先日エッセイを読んだ時の感じが小説にも表れていて、こういうふうに小説になるのか、と思いました。どこまでが小説の中で起こっていることで、どこからが夢のようなできごとなのか判別が難しいです。それが魅力なんだろうなあ。
2、ポール・オースター『インヴィジブル』
はじまりは一九六七年のニューヨーク。文学を志す二十歳の青年の人生は、突然の暴力と禁断の愛に翻弄され、思わぬ道のりを辿る。フランスへ、再びアメリカへ、そしてカリブ海の小島へ。章ごとに異なる声で語られる物語は、彼の人生の新たな側面を掘り起こしながら、不可視の領域の存在を読む者に突きつける―。新境地を拓く長篇小説。 -Amazonより引用-
読み始めると夢中になってしまう、ポール・オースターの罠にはまってしまう、そんな小説です。一九六七年のニューヨークから物語は始まりますが、主人公の青年はあっという間に色々なできごとに巻き込まれて苦しみます。「あの時あの人と出会っていなければ」「あの時こういう選択ができていれば」そう思うことはありますよね?大丈夫なのか?どうなるんだろう?と心配しながら読み進みます。途中で語り手が変わったり、小説の中に小説や日記が入っていたり変わった構造になっています。どこまでが小説なのかも謎かもしれない。
3、李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』
多様な性的アイデンティティを持つ女たちが集う二丁目のバー「ポラリス」。気鋭の台湾人作家が送る、国も歴史も超えて思い合う気持ちが繋がる7つの恋の物語。 -Amazonより引用-
私は台湾に興味を魅かれるので、「台湾」と聞くと気になって読まずにはいられなかったです。今やLGBTという言葉を聞かない日はないほどですが、まだまだ変えていかなければいけないことは数多くあり、偏見や生きづらさを感じている方がたくさんいらっしゃると思います。この本を読んで自分が知らないことが本当にいっぱいある、と感じました。台湾の学生運動のことも、多様なセクシュアリティのことも、新宿の歴史だってよく知らなかった。知ることから、一歩一歩。
今週も「最近読んだ本の話」書くことができました。毎週追い立てられるような気持ちで本を読んでいますが、知らないことを知ることが何より楽しいので読むことはやめられません。書くこともやめられないかなあ。最後までお読みくださってありがとうございました。
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