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最近読んだ本の話 vol.42

 「最近読んだ本の話」の第42弾です。急に寒くなって、コート着てもいいぐらいの気温になりました。あと1か月ちょっとで12月になるなんて!1年が経つのが早すぎます。今週も最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、上田 岳弘『旅のない』

コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。
芥川賞作家・上田岳弘、初めての短篇集。
【収録作品】
「悪口」
恋人と過ごすホテルでのゴールデンウィーク。「じゃあ、悪口の練習しよっか?」。僕は初めて彼女と会った時のことを思い出す。
「つくつく法師」
朝の散歩は4歳の息子との日課だ。午後、僕は古いPCで、昔書いた小説を読み返す。
「ボーイズ」
10歳と6歳のボーイズは、亀甲柄と市松模様のマスクでやって来た。弟の息子たちを預かることになった夫婦の夏。
「旅のない」
「作家さんなんですよね?」。出張先での車中、会話が途切れると取引先の村上さんが聞いてきた……。         -Amazonより引用-

 上田岳弘さんの短篇集ってどんな感じなのか気になる!と思って読みました。4つの物語が収録されていますが、どの作品も独特で、言葉の切れ味が素晴らしいです。短いはずなのに読みごたえがあります。4つ目の「旅のない」は、途中までは何もおかしなことが起こらない、仕事で九州に出張した主人公の話なのですが、途中から急変します。登場人物の村上さんが村上さんじゃなかったんです。村上さんが学生時代に撮った映画の「旅のない」が作中に登場して、村上さんじゃない村上さんは、主人公を道連れにいきなり車中で映画の続きを撮り始めます。実際に起こったら怖い展開です。どんな映画になったんだろうなあ。


2、岸 政彦『図書室』

四十年前の冬の日、同い年の少年と二人で、私は世界の終わりに立ち会った。定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。ただ、近頃は老いを意識することが多い。そして思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室――大阪でつましく暮らす中年女性の半生を描いた、温もりと抒情に満ちた三島賞候補作。社会学者の著者が同じ大阪での人生を綴る書下ろしエッセイを併録。            -Amazonより引用-

 小説の「図書室」とエッセイの「給水塔」の2編が収録されています。「図書室」は、主人公の女性の小学生の頃のできごとを中心に描かれています。公民館の小さな図書室で出会った同い年の男の子と仲良くなるのですが、二人は世界が滅びて自分たち二人だけが生き残ったら、と想像して…。この二人のやり取りが楽しそうで、めっちゃ可愛らしい二人です。いつまでも仲良くしていてほしいと勝手に思ってしまうけど。
 「給水塔」は、著者の岸さんのことが書かれてあります。岸さんが大阪出身じゃなかったことが驚きでした。関西弁めっちゃうまい!知っている場所もあれば、行ったことがない場所もあって、いろんな大阪のことが書かれてあって楽しいです。以前読んだ『リリアン』の中で、「万博公園」が印象的に登場していたのですが、岸さんにとって特別な場所だそうです。私も万博公園にたくさん思い出があるので、また行ってみたくなりました。


3、坂口 恭平『土になる』

今、僕は自分自身と完全に一つになったような気がする。それ以上の平安がどこにあるだろうか。それが鳥であり、猫であり、虫じゃないか。地に足をつけるとは、このことを言うのではないか。土に聞くまでもない。僕が土になったのだから――。
有明海を望み、雲仙岳を見晴らし、故郷の河内につながる熊本の地で、師匠ヒダカさんの背中を見ながら畑を始めた。日々畑に足を運び、成長する野菜たちと向き合うこと。それは生まれてこのかた、土から遠く離されていたことに気づき、生命を取り戻していく過程そのものだった。
作ること、変化することをめぐる冒険。
『0円ハウス』『独立国家のつくり方』に連なる著者の到達点。
ヘンリー・ソロー『森の生活』、現代版誕生!!     -Amazonより引用-

 坂口さんが書かれた新刊本、どんな内容なのか興味があって読みました。読んでいると坂口さんが体験されていることを、自分も一緒に体験しているみたいな感覚になって楽しいです。土いじりがしたくなりました。畑で野菜や果物を育てたり、パステルで絵を描くことを始めたりして変化したことが毎日書かれています。坂口さんの言葉が私の記憶を引き出して、その記憶に関連する別のことも結び付いてどんどんあふれてくる感じがします。大切なことがたくさん書かれてありました。読んでいると、楽しそうにいろんなことを毎日続けられている姿に元気づけられて、私も毎日続けていこう!という力が湧いてきました。


 今週も「最近読んだ本の話」を書くことができました。読むのが間に合わなくなりつつあり、来月の祝日で挽回したいと思っています。緊急事態宣言が解除されて、休みの日に出かけるようになって、本を読む時間が減りました…でも出かけたい!何とか追いつけるよう頑張ります。最後までお読みくださってありがとうございました。





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