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一陽来復の娘 21


こちらの続きとなります↑

※こちらのお話は少し長めのお話しになっています。ご注意下さい。(3172文字)


「彼女」は、改めて、私の方を向くと、


「…私は、身分や財力や力で、人は、押しのけあい、傷つけあうのが当然、という世界で育ったの…

途中までは、理由もある、仕方ない事もある、
これが世界というもの、自分を守らないと自分がやられるんだから、って言い聞かせて、
自分の気持ちに目をつぶって生きてきた。

でも、人生の最期にね、どうしても、
自分に嘘をつけなくなって…

…人が、周りや、自分自身をいたずらに傷つけあいながら、一生を終えるのを、見るのは…
もう、疲れた、と…

もっと、自然に触れて…いたわりあいながら…

そして、家族や、生まれ、というものを越えて…

様々なへだてを超えて…

多くの人々と手を取り合い…

一人の人として、納得の行く人生を生きたいと…

この、心の内にずっとある、どうしても消えない、
くすぶる熾火のような思いのままに、

今度こそ生きてみたい、と…そう、思って…

だから…」

その「体験」の為に、

「様々な事」を手放して、

思いのままに、真っ直ぐに、生きられるように…

その為に…

理解や愛、人間というものの、「様々な面」を…
深く学べる「家族」や「環境」…

望みを叶える「自分」を「作り上げる」為の
「もの」を「選んで」生まれて、

「自分」の心の命ずるままに、生きる…

そういう「生」を選んだのだ、と、

申し訳なさそうに、俯きながら、
呟きました。

(…うん、まあ、そんな感じかもなって、思ってた…
…(;´∀`)


私もさすがに、そこまで鈍くありません(^.^;

目の前に起こる事を「見て」いれば、
自ずと察するものもありました。

「……思っていたのとは、違っていた事も
多かったけど…

あなたと共に歩んだ人生は…

知りたかった事を、沢山、知れて…
やりたかった事も、沢山、出来た。

…本当に、感謝しているわ…

ありがとう…

でも、その為に…私は…

「あなた」に、どれだけの思いをさせてしまったのか…

ごめんなさい…」

 
彼女は、沈んだ声で、言いました。


(……う、うーん…(´ε`;)


私は、一瞬、返事をしあぐねてしまいました。


彼女はきっと、「自分」の望みの為に、まさか、

大変な思いをする者が出るなどとは思っても見なかったのでしょう。

その、望みを持った時は…


でも、それは、仕方なかった…

「彼女」は「知らな」かった…

「わから」なかった…


その「思い」が、「新しい自分」に、

どのような「体験」をもたらすものなのかを。


頭で、正しい、こうあるべき、こうあって欲しい、

と思う事の枠組みの「外」にある事など、

私達人にはわかる筈がないのですから。

だからこそ、「やってみたい」と思うのですから。


目に涙を浮かべながら、繰り返し、私に謝ってくる「彼女」の姿を見つめながら…


私は、ぼんやりと、全く別の事を
考えはじめていました。


「私」という人生を送る事で、

自分の内にある、様々な気持ちに、
折り合いをつけたかった「彼女」…



私は、彼女を見て、
再び「目」を「凝らし」ました。

すると、

俯く「彼女」の「奥」に、
先程の、白い装束の「彼」が見えました。

彼は、私に、

「広い世界を、人の世のしくみを、様々な事を知りたい、と願って、生まれ変わった。」

と、言いました。


(…なら…)

私は、更に「目」を「凝らし」ました。


すると、

その彼の「奥」に、15、6才位の、貧しい身なりの、黒髪をくりくりとさせた少年が「見」えてきました。


私が話しかけようとすると、彼は、

「…ボロ着ててゴメン。うちは、父さんが早くに亡くなってて余裕なくてさ。」

と、少し恥ずかしそうに挨拶をしてくれました。


「…母さんは身体弱いのに、俺をすごい大切にしてくれてさ。無理して俺の為に頑張ろうとするからさ、長男の俺が家族を守らなきゃって思って、うんとガキの頃から、頑張ったよ。

村の人達もさ、いつも困ってる俺に偉いねって言って良くしてくれて、働けるように口利いてくれたり、ちょくちょく見に来てくれたりしてさ。本当に助かってたし、感謝しかないよな。

…でも…


朝、親方の所に(仕事しに)行く途中にある、神様(の像)に手を合わせてるのを見られると、ヒソヒソやられるんだよなあ。
早起きして行ってもさ、時々会っちゃったりしてさ、気まずくてさ。

捧げ物も殆どしてない俺らみたいな貧乏人が神様に手を合わせるのは身の程知らず、とか、
親方に親切にされてるからっていい気になるな、とか、時々ちらちら聞こえてさ。
…みんな、ガキ相手には、つい本音が出るんだと思う。笑

俺もさ、なるべく気をつかってたんだけど、
手を合わせれば、今日も頑張ろう、って思えるというかさ、1人じゃないって…
…まあ、父さんのかわり、って言うか…

どんな事があっても、胸を張って頑張ろう、って思えるからそうしたいだけなんだけど…
難しいよな、こういう事って。

まあ、仕方ないんだけどさ。


だから、だからさ…もし、次生まれ変われたら…

遠慮なく神様に手を合わせられる身分になれたらなー
なんて思ってたんだよな。

ぜいたくだよな、俺!そんな事考える暇あったら働けよ、って親方達に叱られちまう!アハハ!」

と、髪を揺らし明るく笑いながら、私に話してくれました。



そして、その明るい笑い声と一緒に、
「彼」の姿が、すうっ、と薄らぐと、


その奥から、

黒目がちな大きな目を、きらきらとさせた、
4歳位の、小さな女の子が、ふわっ、と、
私の目の前にあらわれました。

その子は、私を見上げると、ほんの少し鼻にかかったような、かわいらしい声で、

「…わたし、わたしね、みんなのために、頑張ったの…」

と、話しはじめました。


「…まーまが、わたしにね、お前は、神さまにあげられるんだよ、すごいんだよ、って…

そうすれば、お雨がふって、みんながうれしくなるって言うから…

そうすれば、村のみんなから、まーまがおこられなくなるんだ、って聞いたから…


まーまの為に…みんなのために…くらいお穴に、うまったの。

さみしくて、こわくて…苦しかったし、うんと泣いちゃったけど、がんばったの。えらかったの。」


鼻にかかったような声が、話しながら、次第に、
本物の鼻声になって行きました。


「…でも、とうとうお雨が降った時ね…

みんな、すごく喜んで、くるくる踊って…

でも、わたしのことをすっかり忘れちゃってたのを、お空から、みたの。

まーまが、みんなが、よろこんだから、
うれしいのに…

さみしくて、かなしくて涙がとまらなかったの。

どうしてかなあ…?」


言い切らずに、少女の目からは大粒の涙が
とめどなくあふれてきました。

「まーまにぎゅってしてほしいよう…
みんなにも、えらかったねってしてほしいよう…」

私は、あどけない口調で、
どうしてかなあどうしてかなあと一生懸命言う
この子をたまらず抱きしめました。

そして、

腕の中の、子どものあたたかな体温を感じながら、
この子の更に「前」に目を向けると、

更に多くの、「命」が…

「彼女」の人生を送る前の…

たくさんの「私」が、見えました。


彼女たち…彼らの、「想い」…

数多の人生で、数多の体験をする中で「持った」…

否応なく「持たされた」…


人とは、何なのか、

生きるとは何なのか、

この苦しみは、体験は、何なのか、

なぜなのか、という問い。


その問いが、

報われない、消化仕切れない思い達が、

未知なるものが、ある、という思いが、

それを体験したい、という思いが、

また、

「生まれて、人としての人生を送ろう」

と、思わせ…


そして、新たな自分に、

また、新たな想いを背負わせて…

それを…

(……一体、どれ位続けてきたのかなぁ……)


私は、

誰に言うともなく、


「…もう、いいよ……もう、大丈夫だから……」


と、つぶやきました。



「…え…?」

私の声に、「彼女」は、驚いて、
目を見開きました。


↓もう一話続きますm(_ _)m💦

お待たせして誠に申し訳ございませんでした
(´;ω;`)


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