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山寺芭蕉記念館「芭蕉の周辺と蕉門」展の芭蕉真筆(現代語訳)

山寺芭蕉記念館サイトの「芭蕉の周辺と蕉門」展(開催中)ページで紹介されている芭蕉の真筆懐紙を、現代語訳してご紹介します(実際に展示されているかどうか確認したわけではありません。御了承ください)。

「芭蕉の周辺と蕉門」展
会場・山寺芭蕉記念館(山形市山寺)
会期・6月9日まで
今後の休館日・6月5日

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蘇東坡(注1)は雲の浮かぶ空の下で笠を傾(かたむ)け、杜甫(注2)は遠い異郷の空に降る雪を笠に積もらせた。私はといえば、草庵で暇にまかせて、自ら渋を塗った笠を張って、西行法師(注3)の侘しい笠(による旅)を手本にしようとしているのである。

〈世にふるも更に宗祇のやどり哉〉よにふるもさらにそうぎのやどりかな
(このように世を過ごしていることも、宗祇の詠んだ通り、ほんとうに短い時雨のあいだの雨宿りのようなものだ)
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(注1)そとうば(1036-1101)。蘇軾(そしょく)の別名。中国・北宋の詩人で政治家。生涯で何度も地方に流されて暮らした。
(注2)とほ(712-770)。中国・盛唐の詩人。日本の旅の詩人たちにも影響を与えた。
(注3)1118-1190。平安末~鎌倉初期の歌人。よく旅をして歌を詠んだ。

宗祇(飯尾宗祇。1421-1502)は、室町時代後期の連歌師です。上の芭蕉の句は、宗祇が詠んだ〈世にふるもさらにしぐれの宿りかな〉を1語入れ替えただけの句ですが、そのことによって、旅の詩人・宗祇の人生観に深く同調しているものと思われます。この句は芭蕉の生き方や、作句上の考え方にとって重要なものになったようです。今回ご紹介した、山寺芭蕉記念館サイトに掲載されている懐紙がいつのものかはわかりませんが、芭蕉の〈世にふるも〉の句は天和2年(1682)の作です。

山寺芭蕉記念館サイトはこちら

本文は、山寺芭蕉記念館サイトに掲載されている真筆懐紙の写真に拠っています。


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