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詩と詩と思しきものの観察及び観測

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詩と詩と思しきものを観察または観測したものです。
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#現代詩

ゾンビ[詩]

ゾンビ[詩]

 クレープってどう食べるのが正解なの?
 今数学の脳だから分からん
 少し乾いた薄い皮とその下のクリームが臨終の祖父の手みたいだ 君のおじいちゃんご健在でしょ 考査終わりなんて空疎な気持ち

 手に負えるサイズ感の生地で考査と課題を片付けて、そこに遠足みたいなホイップを添えて(なるべく受験期前までに)くるくるっと円錐に巻く バナナチョコおいしい
 クレープを焼いているおにいさんがあのロックバンドの

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葬祭[詩]

葬祭[詩]

 色付いた並木道を抜ける
 日曜の朝は空気がかろくて澄んでいて
 ああ これは祭りだ
 昨日の雨は落ち葉を湿らせ澱を流して
 街を覆っていたフィルムが剥がれてしまったようだった
 ああ これほどの祭りの日はないだろう
 吸った空気が冷たくて
 肺の奥まで青い秋になった

↑じつはちょっと文字の色青っぽいの。

鹿の骨[詩]

鹿の骨[詩]

 夕方 川沿いの砂利を歩いて骨を拾った
 シカの骨に違いないと思った
   シカの骨だね
 川の音で掻き消えているのに
 あなたがそう言ったのがはっきりと分かった
 私はうなずいて骨を遠くに放った
 夕の川沿いの薄闇の中 骨はゆるく弧を描いて川底に沈んだ

ヒート・アイランド[詩]

ヒート・アイランド[詩]

 浜辺を波が 滑らかに走っている
 夜の入り口と 夕焼の最後が適当に混じって
 
 紫色になっていた
 
 水平線が溶け出している 路面の熱
 空で肺をみたす つややかな夜が来るまで
 凪を待って 街灯の一歩先を歩く

無題[詩]

無題[詩]

ここにはなにもない
 おなかへったね
 空虚がこちらをみている

ゆびさきまで神経がかよう
 どっとでこうせいされたわたしと
 その他 のさかいめをうしなう
 じぶんでうごかせないもの
 と
 触れられないものと
 みえないものの3分子が
 ひたすらうしろでまわっている

うつわからばけものがはみでている
 贅肉?
 うでのながさがたりない
 ずる とやわらかな身が器をでる
 それだけ

くさはら

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予知[詩]

予知[詩]

 風が入ってきて
 教室の空気が揺れた
 夏
 目をあけて眠る金魚の
 無意識に前のほうの席の半袖

 風が入ってきて
 外の木立が揺れた
 午後
 目をあけて眠る金魚は
 ふと水が黄金色にひかった気がした

長いうた[詩]

長いうた[詩]



プルトップの狂態に
水槽の奥の
シーラカンスがプカリとわらった
昨日とその前からの惰性が皮膚の下に蓄積している
脱皮?
アマゾンからきたという凶暴な魚が
身を持てあまして困っていた
金曜の夜
丸い皿を上からのぞく
「今日あなたがわたしを食べたって 明日はあなたも食べられるんです」
と死んだ浅蜊が底で言った
殻を持たないのであっさり食われるだろうとおもう
イルミネーションがカメの甲羅で小さくおど

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自由地[詩]

自由地[詩]

 雨晒しの豊饒に触れる
 明る過ぎて眼を瞬く自分がいた
 やがて低気圧が北上してこの街にくる
 脚の欠けた椅子がひとつ
 錆も砂にうずまってしまうまで
 誰かの訪うその日まで