永江雅邦

北海道旭川市天寧寺(浄土真宗本願寺派)住職です。1970年生。尊敬する人は関根勤、鬼越トマホーク。好きな作家は宮脇俊三、山田風太郎。新刊を待つ漫画単行本は『ハンチョウ』『こづかい万歳』です。

永江雅邦

北海道旭川市天寧寺(浄土真宗本願寺派)住職です。1970年生。尊敬する人は関根勤、鬼越トマホーク。好きな作家は宮脇俊三、山田風太郎。新刊を待つ漫画単行本は『ハンチョウ』『こづかい万歳』です。

最近の記事

サブカル大蔵経1009横道誠『みんな水の中』(医学書院)

人はどんな風に世界が見えていて、どんなふうに著述してくれるのか。それを覗くように読みました。 今思うのは、それが陳腐な選民意識ということだ。生きづらさを感じることが、むしろ選ばれているのは自分たちの側だと言う傲慢さにつながることがある。/脳の多様性が選民思想であってはいけない。p.81 〈多様性〉や〈仲間〉という言葉の奥の特権意識。差別問題の研修会などで私が感じる〈特権意識〉のことについて何箇所かで言及してくれています。 イチローや北島マヤを同胞として思うことなども、興

    • サブカル大蔵経1008とよ田みのる『これ描いて死ね』①(小学館)

      Twitterで榎本俊二さんが絶賛していたのを思い出し、店頭で購入しました。とよ田みのる作品は初めて我が家にやって来ました。 ページを開いて、初めて島が舞台と知りました。 『シマダス』を読んでから、ずっと島のことを想っていたので、何か引き寄せてくれたような気分になりながら読みました。 今まで自分が読んできた漫画とまったく違うような、似ているような、そして何よりも、読後すぐ読み返したくなりました。 そんな感覚はいつ以来だろう。 優しいような、厳しいような予感も漂わせながら

      • サブカル大蔵経1007小出裕章『原発事故は終わっていない』(毎日新聞出版)/戸谷洋志『原子力の哲学』(集英社新書)

        今日、地元の旭川で小出裕章さんの講演会があります。 その前に小出先生の本『原発事故は終わっていない』(毎日新聞出版)を読みました。 そしてnoteでフォローさせて頂いている藁谷さんが編集担当している戸谷洋志さんの『原子力の哲学』(集英社新書)を読みました。 小出さんの本で印象に残っているのは 原子力というものは国の根幹にかかわっているため、いくら裁判をやっても必ず国が勝つということです。p.143 彼らが原発で学んだことは、「どんな悲惨な被害を出しても、誰も処罰されない

        • サブカル大蔵経1006上田さち子『修験と念仏』(平凡社)/碧海寿広『考える親鸞』(新潮選書)

          現在の私と親鸞を結びつけようとする時、その直結さは危ういんだと、親鸞以前と以後の流れを伝えてくれたこの二冊が教えてくれました。 親鸞研究や本願寺などの教団をメインとすれば、それ以外の法脈を辿ることは、今まではサブ扱いでメインではなかったのかもしれません。しかし、ここ数年その動きが変わる好著が出されています。 民衆にとって、教義は二の次である。大切なことは、そうせざるをえない民衆の心情をうけとめて、そこから考えることのはずである。p.225 上田さち子さんの著作での白眉と

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          サブカル大蔵経1005安部公房『砂の女』(新潮文庫)

          砂とは何か。 とりあえずサンシャインを念頭に読み進めました。 地上と地下の境目もほとんどない。 ふとしたところから奈落に堕ちる。 すぐそこに見える現実の世界が、 絶望的に遠い。 地上と地下とどちらが本当の居場所なのか分からなくなってきた。実は移動していないのかもしれない。 砂は決して休まない。p.15 流動性と無常性。だから怖い。 全身を麻痺させるような無力感…p.51 砂とは私を疲弊させる繰り返される日常か、世間そのものか。 安部公房の実家、旭川市東鷹栖。 ウ

          サブカル大蔵経1004長田弘『読書からはじまる』『すべてきみに宛てた手紙』(ともにちくま文庫)

          「本の文化」を深くしてきたものは、読まない本をどれだけ持っているかということです。p.9 読書エッセイなのに読まないことの意義。 読書のためにいちばん必要なのが何かと言えば、それは椅子です。p.40 読み漁ろうとするこちらを、その言葉で、やんわりとたしなめてくれる。 逆説かつ根源的な言葉で、こちらの発想が転換されていく。 なぜか初めて長田さんが偉そうに思えた。 ことごとく「正しい」から悔しくなっているのだろうか。 本に関するエッセイのひとつの到達点か。 本を読

          サブカル大蔵経1003武論尊原作・平松伸二漫画『新装版ドーベルマン刑事』全29巻(ゴマブックス)

          なぜ『ドーベルマン刑事』が現代こそ読まれるべきと思えるのか。 法律訴訟、弁護士、コンプライアンス全盛の現代への警鐘か。いや、劇中でもそれは執拗に描かれている。 加納は本当に護られるべきものを命がけで返り血を浴びながら明らかにしていく。 今年に入ってから、江口寿史さんのツイートで、Kindle Unlimitedにアップされていることに気づき、初めて読み始めました。 『そしてボクは外道マンになる』を読んでいたので、 なんとなく「ネタ」としてドーベルマン刑事のページを開きました

          サブカル大蔵経1002『スペクテイターvol.49自然って何だろうか』(エディトリアル・デパートメント/幻冬舎)

          うまく答えられなかった問いほど、今でも心に残っているのはありがたい。 学生の頃、印哲の研究室にいた時に、先生がいきなり、「〈自然〉という言葉から何を連想しますか?」と尋ねられました。今思えば大喜利のような。 みんながおそらく上手に答えていた中、私は親鸞の自然法爾のことを話したような。今なら「自然とは庭です」と答えると思います。 そんなモヤモヤした記憶を抱えているので、本書の表題を見た瞬間、購入しました。久しぶりに買った今回の「スペクテイター」は、連載もなくなり、漫画とイ

          サブカル大蔵経1001吉田豪『証言モーヲタ 〜彼らが熱く狂っていた時代〜』(白夜書房)

          【サミュL】今回のこのシリーズって証言モーオタであって証言モーニング娘。ではないんですよね。/結局あの頃の人間関係の話ばっかりしてるんですよ。p.268 青春、恋愛、活動、宗教、麻薬、戦争。 さまざまな言葉に喩えられるモー娘。の特定の推しの応援時代。その戦友達をひとりひとり訪ね歩く、美談なき奇跡の叙事詩。 【吉田豪】考えなくていいことを考えますよね、特にサブカルチャーという自意識過剰な文化を通ると。p.168 記憶の奥底の告白が、人を引き寄せる。 そして、もし自分がその

          サブカル大蔵経1000宮脇俊三『時刻表2万キロ』(河出書房新社/河出文庫)

          私は宮脇俊三に、人生を狂わされました。学生時代の夏休みと春休みは、すべて日本国内の鉄道一人旅についやしていました。 時刻表を買い、未踏破の路線を往く旅程を作り、できる限り鈍行列車に乗り、必ず一路線に一駅は降りるというルールを課し、全国をまわりました。 旅先では、地元の人オンリーの車両にお邪魔して、悟られないように快楽を愉しむ。恥ずかしさとハードボイルド。ばかばかしさと厳格さ。不自由で自由な旅。二律背反の恍惚感。 思えばその背徳的恍惚感は、プロレスと似ているような。宮脇俊

          サブカル大蔵経999三木成夫『胎児の世界』(中公新書)

          999冊目に紹介しようと思っていた本に、ようやくたどり着きました。 本書は、読み返すたびに驚きと緊張と発見がある、捨てページの一切ない狂気と幻想のオールタイムベスト新書です。 マッドな科学者か、真実の探求者なのか。医学と仏教の融合、西洋と東洋の因縁、科学と情緒の相克、フィロソフィー心技体、それを後押しする本能。 まなざし、おもかげ、懐かしさ、記憶。 これらは、どこから来ているのか。 自身の生命の進化の旅が始まります。 もちろん、このような論議のすべてを超えて、やはり人間社

          サブカル大蔵経998山田雅教『中世真宗の儀礼と空間』(法蔵館)

          浄土真宗に関する本で、ずっとこういう本を読みたかった、待望の一冊。 葬儀だけでなく、私たちが日常お勤めしていることはいつから始まったことなのか。 当時の作法、儀礼、声明、荘厳、建築を通して、真宗の今が照射されていきます。 「談義」「放談」「改悔」、これらは祖師の面前で行われるのを基本としていた。祖師の没後は、それを再現する場が「御影堂」であったのである。これに対して「阿弥陀堂」は、仏法を聞けたよろこびを随喜の「念仏」という形で表現する場であった。p.173 本尊とは、

          サブカル大蔵経997中村元『釈尊の生涯』(平凡社ライブラリー)

          学生の頃、先輩が「中村元は学者ではなくなった」と言うのを聞いて驚いたことがあります。なんでそんなこと言うのかなと思いましたが、本書を読んで、少しだけその意味がわかりました。学者としておさまらない義侠心というか、熱情というか。 読者の希望と正反対のすがたが出てくるかもしれないので、それは残念ながらであるが、しかしいたしかたない。p.12 「いたしかたない」ー。これはもう、宗派や学問の周辺にまつわる魑魅魍魎を斬る覚悟ですよ。ありがたい仏様の本だと思って本書を手にした人も一緒に

          サブカル大蔵経996渡辺照宏『涅槃への道』(ちくま学芸文庫)

          晩年の先生が身命をかけて完成したこの『涅槃への道』は、奇しくもそのまま先生の涅槃への道ゆきとなったのであるp.339 宮坂宥勝さんが後記でそう述べた本書。1974年から1977年まで「大法輪」で約三年間のにわたって紡ぎ出されたもの。 誰に向けて書かれた〈遺言〉だったのか。 本当の釈尊、本来の仏教を伝えたい。 インドの仏跡に不似合いな石燈籠を建てたり、日本式梵鐘を持ち込んだりするバカ者がいるという話だ。無知ほどこわいものはない。p.55 岩波新書『仏教』を読んだ時の衝撃も

          サブカル大蔵経995佐々木閑『100分de名著 ブッダ最期のことば』(NHK出版)

          ブッダは今でこそ世界の偉人として神格化されていますが、当時の弟子たちにとっては自己鍛錬システムのインストラクターのような存在でした。p.21 仏教の正しい理解のため、まず、ブッダ・釈尊を神格化しない手続きを踏んでいく。業界の佐々木閑さんへの絶大な信頼感。貴重な学術論文を出しながら一般にも啓蒙。律、理系、非僧の3大マウントで既存の教団や坊さんに風穴を開け続ける。 ブッダが作り上げた独自の「組織論」です。p.6 涅槃経とは、組織論だと。出家僧団と在家、互いが共存できる特異な

          サブカル大蔵経994グレゴリー・ショペン/小谷信千代訳『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』(春秋社)

          夜警の仕事をした後、日本にも一年留学していたグレゴリー・ショペン先生。 本書は、さまざまな先生たちが引用された仏教研究の黒船です。 大乗仏教はインドではメジャーじゃなかったという、日本で一番タブーな論説をあえて紹介される小谷信千代先生に感服。 鎌倉仏教が当時はメジャーじゃなかったことと同じようなことなのかも。 それか、韓国のお酢の飲料「ミチョ」が以前は通販でしか買えなかったのに、今や近所のドラッグストアでも買えるようになりました。もしミチョが、韓国で実は周辺の飲み物だ