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サブカル大蔵経994グレゴリー・ショペン/小谷信千代訳『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』(春秋社)

夜警の仕事をした後、日本にも一年留学していたグレゴリー・ショペン先生。

本書は、さまざまな先生たちが引用された仏教研究の黒船です。

大乗仏教はインドではメジャーじゃなかったという、日本で一番タブーな論説をあえて紹介される小谷信千代先生に感服。

鎌倉仏教が当時はメジャーじゃなかったことと同じようなことなのかも。

それか、韓国のお酢の飲料「ミチョ」が以前は通販でしか買えなかったのに、今や近所のドラッグストアでも買えるようになりました。もしミチョが、韓国で実は周辺の飲み物だったとしたら…?

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大乗はどうしてインド仏教史上に分不相応とも言えるほどよい地位を与えられるに至ったかを解明p.3

分不相応!

ある思い込みが潜んでいるのです。p.6

インド仏教と中国仏教の関係性の再考察。

二、三世紀のインドで大乗が世に受け入れられるにはほど遠い状態p.13

龍樹の時代に大乗が嫌悪されていた記述。

中国においては、大乗が少数派でなく次第に主流となっていったことはかなり確かです。しかしインドにおいては、大乗は極めて周辺の存在であり続けたようです。p.18

周辺の大乗!周辺こそグローバル化した。

インド側から見れば、最も重要でなく最も成功しなかったこれらの仏教集団が、今日最もよく知られているということは、皮肉の最たるものです。p.30

小乗仏教の僧院の勢力の強さ

死んだ寄進者に偈頌を唱え供養することは、根本説一切有部の僧院の日常の行事であったと思われます。p.112

僧院における〈僧侶の仕事〉

「尊者よ、ここには貴方のお父さんもお母さんも見当たりません。ですから税金を支払ってここを立ち去って下さい。」p.195

徴税官に所持品の税を取られないための嘘をつく僧侶。パーリ「経分別」このほか遺産や相続税も。

マハーカーシャパがいかに裕福であったかは、彼が仏陀の死体のための供養を完全にやり直したという事実p.220

まさかあの場面が…、同じサンガだからではなく、儀礼を行う金銭の問題だったとは…!

シャーリプトラが死んだ時、新入りのチュンダが葬式、もしくは死体供養(śarīra-pūja)を行ない、p.232

僧侶と俗人の供養対決を仏陀がさばく。

【訳者あとがき】

経典には僧の理念的な在り方が描かれているのに対して、碑文や律典には比丘たちの現実の生活が反映しているのではないかp.308

私も学生の頃、印哲や仏教思想はインドの一部のインテリで、少数だと思い、説話文学を選びました。

教団では思想はさほど問題にされないのです。p.315

インドでは思想より行為だと。

彼らは仏教を単に受容しただけでなく、それを発展させ、まったく異なる状況に適応させたのです。p.317

堕落ではなく、創造だと。

仏陀はアーナンダに葬式の心配はしなくてよいと言いました。日本ではこの記述に基づいて、仏陀は僧が葬式を行なうことを禁じたかのように言う人がいますが、ここにはそのようなことは一言も述べられていません。仏陀は比丘が葬式をすべきでないとは一言も語っていません。p.318

涅槃経の世界をショペン先生が解釈。葬式仏教擁護者にはお墨付きの援軍か。

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