見出し画像

「もっと勉強したい」以外の感情を失った『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』◆書評′19#12

今年は、読んだ本の感想を全てnoteにメモしていきます。
2019年12冊目は、『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』です。

本書は、題名の通り現代経済学、主に20世紀半ば以降に展開されてきた各種主流派経済学についての解説書である。
いかにも学術的で難しそうなタイトルではあるが、
あくまでも現代経済学の全体像を捉えることを目的としており、また文章も平易で読みやすい。
前提としての専門知識が無くとも、我々一般人が十分に楽しめるような入門書になっている。

とはいえ、完全に背景知識ゼロで臨むには若干抵抗があるだろう。
そういった方は、まず『この世で一番おもしろいミクロ経済学』という漫画でサッと概要に触れておくと、良いウォーミングアップになると思う。


さて、この『現代経済学』のサブタイトルにあるゲーム理論・行動経済学・制度論は、
経済学の中でも、近年特に注目を集めている分野であり、政治やビジネスの世界にも積極的に取り入れられている。

中でも行動経済学は、日本でも一大ブームを巻き起こしていると言っても過言ではないだろう。
ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』や、ダン・アリエリーの『予想通りに不合理』などは、
ある程度読書の習慣があるビジネスパーソンであれば、読んだことがあるのではないだろうか。
確かに、実生活やビジネスにも反映できる知見がたくさん詰まった行動経済学は、それ単体でも十分に面白いし、有意義であることは間違いない。

しかし、その誕生までに、経済学がどのような経緯の下でどのように展開してきたのかというところから見ていかなければ、おそらく行動経済学の真の価値を知ることはできない。
そしてそれは、行動経済学に限らず、ゲーム理論や制度論、その他の新しい経済理論の全てに対して言えることである。

こういった意味で、本書は(上からの評価で恐縮だが)非常に秀逸な一冊である。
経済学という学問は、ここ百数十年で、急激に細分化・専門化・複雑化が進んでいる。
にも関わらず、時間的にも分野的にも十分な広さと深さを保ちながら、
しかし、ただ教科書的に各理論を分断したまま解説するのではなく、それらの違いや、あるいは繋がりについても自然な論理展開で述べられており、
現代経済学の全体像を、3次元的なネットワーク構造として理解しやすくなっている

これを一般人でも理解可能なレベルの文章で、約270ページにまとめられていることも素晴らしいと思うし、
それを1,000円未満で読めてしまうことにも、ただただ感謝しかない。


必ずしも明確に線引きされているわけではないが、「科学」と呼ばれるものには、
その研究対象とする事象について理解・解明・記述することを目的とする「理学」と、
研究から導かれた知見を現実社会に反映して、新たな価値を生み出していくことを目的とする「工学」がある。
基本的に、理学と工学は、相互に循環しながら共に発展していくものであり、経済学においてもそれは例外ではない。

グローバル化やテクノロジーの進歩によって、社会の構造も大きく激しく変化する中で、
今後、経済学は社会のどんな不思議を解明してくれるのか
そして、社会に対してどんなインパクトを与えてくれるのか、とても楽しみである。


今はただ、「もっと経済学を広く深く勉強したい」という気持ちしかない。
今回特に興味が湧いた部分については、よりそれに特化した本を探して読もうと思う。
単位や評価のためではなく、純粋に自分の興味探求のために行う「大人になってからの勉強」は、この上なく楽しいものだと思う。


タメになる度 :★★★★☆
文章の読み易さ:★★★★☆
分かりやすさ :★★★★☆
総合オススメ度:★★★★★


この記事が参加している募集

飲食店の開業を目指して準備をしています。バカな若者をちょっと応援したいと思った方、サポートお願いいたします。 スキ・コメント・SNSシェアだけでもとても嬉しいです。