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官費留学生から考える国の行く末:アフリカ人は中国へ、日本人は北欧へ?

米国在住スミさんが、東京の友人コイさんと、哲学・テクノロジー・歴史などについて毎週Facetimeでトークします(第28回)。

1.明治政府が頑張った官費留学

図22

(…Facetimeの呼び出し音)

ーこんにちは。元気?

米国のブラックフライデーに乗せられて、ネットで買い物たくさんしちゃいました。笑

ーいいじゃない。笑

反省して、この1時間は勉強してました。今読んでる、官僚制度の歴史の本が面白いんです。
今ちょうど、明治維新付近の1870年代の第一回文部省留学生の話が過ぎたくらいで。

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ーおお、小村寿太郎とかの時代ね。

そうそう。
それまでも官費留学制度ってあったんだけど、外国に行きたい人が続出して金がかかる一方で、帰国してきた後に活躍してないしコスパ悪すぎ、ってあったらしくて。

ーなるほど。

それで留学制度が再編されて、第一期には南校(後の東京大学)でもずば抜けて頭のいいメンバーを選抜して行くようになったらしいんです。

【主な第一期留学生たち】
・鳩山和夫(法律・コロンビア大学)
・小村寿太郎(法律・ハーバード大学)
・古市公威(土木技術・エコール・サントラルパリ)
・斎藤修一郎(法律・ボストン大学) など

ー帰国後は明治政府の枢要をになっていった人たちだね。
法律とか土木、公衆衛生とか、プラクティカルな分野が多いよね。

そうですそうです。
ある意味だらっとしてた留学生が、一気に近代国家の成立に貢献するようになったって言う。

ー「外国の最新を学ぶ」ってコンセプトも、国の発展段階と絡めて考えると興味深いよね。

と言いますと?

ーたとえば江戸末期1860年代後半に、伊藤博文はイギリスに密入国したり、渋沢栄一はパリ万博に視察に行ったりした。
その時は、「海外の国や産業や行政の在り方を、大づかみする」っていう感じじゃない。つまり近代国家を形成するための理念や概念を、まず知った。

確かにそうですね。

ーそれでスミさんが言うように、間に数年間はさむ形で、ふわふわした、ある意味流行みたいな留学が流行った。
さらに今度は換骨奪胎して「海外の実践的な制度や技術を学ぶ」っていう目的にアップデートして、日本に持って帰ってきたわけだよね。

2.現代のベストな留学先は、本当にアメリカ?

図23

まさに国家の発展と社会改革の状況にあわせて、海外を使っていった感じ。

ーそうそう。

でもそう考えると、現代日本の官費留学先がいまだにアメリカがほとんどっていうのも辺かもしれない。アメリカって、別に行政機構が優れているわけでもないし。

ーまあね。本当は次を見据えたら、北京大学とか精華大学とか、そういうところになるかもしれない。

たとえば、アフリカとか南アメリカからすれば、キチッとした行政機構を作りたいなら余計、中国を選びたくなるかも。

ー実際、アフリカ留学生はどんどん中国に行ってるよ。

そうなの?

ー2017年には、アフリカ人の留学行き先は、イギリスとアメリカを追い越して中国がフランスに次ぐ第2位だったみたい。
2020年の最新の数字はわからないけど、その時点でも今年は中国がアフリカ人の留学先トップに予想されてるね。

https://mg.co.za/education/2020-09-05-where-do-africans-study-abroad/

そうなんだ!知らなかった…でも、中国語の壁もあるのにすごいね。

ーまあ、中国のトップ大学は英語で通じるだろうし、逆に世界各国の孔子学院を使って、中国政府も中国語を外国人に教えてるからね。

留学を受け入れる中国の恩恵も大きいね。
制度や文化のソフトパワーもそうだし、それを社会実装するための水道とかデジタルインフラみたいなのも、Made in Chinaをアフリカに持っていける。

ーそうね。デジタルシルクロードとか、一帯一路みたいな国家戦略とも連携させてるだろうからね。

3.日本人の次の行き先は北欧?

図24

そうなると、GDP第3位の日本の東大とか京大が選ばれないのは、だいぶ国際競争で負けてますね…
それが外交や経済に響いてくるんだとしたら余計。

ーそうね。
でも「インフラ輸出!」とか「経済安全保障!」「イノベーション!」みたいな、中国のようなマッチョな政策が、今の日本に合ってるかっていう議論もあるよね。

まあねえ。

ーそれこそ2000年代初めから、「産業構造改革」と銘打って雇用の流動化とか、ベンチャーを大企業にとって代わらせるとか、政府が試みてはみたものの、結局うまく行ってないよね。

結局、日本のキャラに合ってないことで頑張ろうとしても無理な気もする。
ゾンビ企業の議論も、それが雇用の受け皿になっているのは事実で。

ーそうだよね。効率性より、結局、「優しい社会」をとる。

なんというか、1980年代くらいまでの成功体験がある「おじさん世代」はどちらかといえばマッチョな産業政策、社会政策にこだわりがある気がする。
でも私達のように、失われた30年間に生まれた若い世代は、そうでもない。笑

ーアメリカや中国をライバル視する、っていうメンタリティが、ちょっと時代遅れになってきてるのかもね。
アメリカは日本と違って、常に変化が起こる社会構造になってるから、同じ土俵で戦おうとするのはちょっと変かもしれない。

そういう意味では、社会や経済がある程度成熟した国を次の手本にする、ってのはいい気がするな。
例えばノルウェーとか、フィンランドとか。noteでもそういう国にいる書き手の方の記事よむの、面白い。

ーあとデンマークとかカナダとかも面白そう。造船業で外貨を一定程度稼ぎつつ、もうちょっとウェルビーイングに傾倒してる感じの。

そういう国って、国際情勢も日本と立ち位置が似てますよね。
近所にはずっとソ連(ロシア)っていう巨大国家がある中で、その緊張関係でうまいこと立ち位置を探してきた。

ーそうだよね。

個人的には、北欧諸国ってちょっと社会主義ぽいイデオロギーの「福祉国家」っていうイメージだったんですけど、国の成長段階から考えて参考にするのはやっぱり合理的な気がする。

ーうん。それに、雇用が維持されるなら、マッチョな産業からウェルネス・ウェルビーイングに転換したほうが一市民としても俺は幸せだな。笑

私もです。笑

ー笑。

まあでも、そうこう言いながら私はこのロックダウンされたロサンゼルスで部屋に閉じこもって勉強します。
留学もあと半年で終わるし…。

ースミさんのような内省型の人にはいい機会じゃない?笑

そうかもしれない。

ーまあ、身体に気を付けて。

ありがとうございまーす。
コイさんも年内もうちょっと仕事がんばってください!

ーはーい。ではでは。

(…Facetime終了)




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