水野ひろ子

ライター/エディター。岩手県滝沢市在住。LLPまちの編集室にて、地域誌「てくり」および…

水野ひろ子

ライター/エディター。岩手県滝沢市在住。LLPまちの編集室にて、地域誌「てくり」および「いわてのうるし」「岩手のホームスパン」等のムック誌を発行。食、工芸、旅などの取材であちらこちら。ここ数年は、羊毛活用やホームスパンをはじめとする県産工芸に関わる機会増。常に学びの日々。

マガジン

  • ホームスパンや羊の話

    ホームスパンや岩手の羊毛にまつわる活動や取材などのメモ

  • 本の話など

  • 取材雑感

    てくりをはじめ、日々の取材の所感など

最近の記事

2021年は、手紡ぎ手織りのちいさな教室がはじまった年。

長引くコロナ禍、いつもより加速して動いた2021年。 羊とホームスパン がらみでは、さらによく動いた年だった。2017年にスタートし、隔年で開催してきた「盛岡ホームスパンの祭典 Meets the Homespun」。3回目を数える同年度は、ホームスパン継承と作り手育成をめざす団体「いわてホームスパンユニオン」発足を記念し、改めて「ホームスパン産地・いわて」を紹介する展示を行った。すでに過去の記録となってしまったが、1年越しにその活動を記録しておきたい。 例年通り、盛岡市

    • 大宮政郎さんからいただく、熱量。 「21世紀はないものを描く、つまり、音楽の生まれたもとの時代に還っていくんです」。

      初めて大宮さんの作品を見た時は、わけがわかりませんでした。わからないけれど、心の中にむくむくと何かわきたぎった気がします。「北異のマグマ」の一作に向き合った時、得体の知れない熱量が私に向かって発せられて、しばらくそこから動けなかったし動きたくはなくて。ご本人にお会いしたくて、てくりの「あなここ」取材をオファーした際伺った幼少期からの話は、取材では成人したあたりで時間切れとなったのです。 そこから、改めて時間をつくっていただき、2度ほど八幡平にお邪魔しました。「もう眼が見えな

      • i-woolでホームスパンのマントを!プロジェクトは、夏からはじまった。

        2020年12月18日、19日の2日間。盛岡市中ノ橋通にある「岩手銀行赤レンガ館」にて、ホームスパンやお菓子、小物、雑貨を販売するクリスマスマーケットが行われました。来訪者たちを迎えるドアマンが纏うのは、手つむぎ手織りのホームスパンで織り上げたオリジナルのマント。まるで英国紳士のような装いです。  2020年12月、明治期に建造された「赤レンガ館」にて初めて開かれた「クリスマスマーケット」。 以前からホームスパン の作り手さん達と雑談のなかで「赤レンガ館の入り口でホームス

        • i-woolを生かす活動、秋は西和賀から。

          2020年のアイウール活用への第2弾は、素材となる原毛の毛刈りをしたあと、汚れのひどい部分をより分け(スカーティング)し、洗ってゴミをとる作業ができる人を増やすこと。つまり、汚れた羊毛から素材としての羊毛(アイウール)に価値化する仕組みを、県内各地に増やしていくことです。それによって、ホームスパンの素材として活用しやすく(購入しやすく)なるのもポイントですが、生産者の皆さん自身がフェルトにしたり、紡いで糸にしたり、製品や作品にすることが可能になっていきます。 一関の下大桑の

        2021年は、手紡ぎ手織りのちいさな教室がはじまった年。

        • 大宮政郎さんからいただく、熱量。 「21世紀はないものを描く、つまり、音楽の生まれたもとの時代に還っていくんです」。

        • i-woolでホームスパンのマントを!プロジェクトは、夏からはじまった。

        • i-woolを生かす活動、秋は西和賀から。

        マガジン

        • ホームスパンや羊の話
          5本
        • 本の話など
          4本
        • 取材雑感
          1本

        記事

          「くずまきの羊に会いに。」行ったのは、6月!げ、もう秋深まってるじゃない。

          アイウールの羊毛リサーチ活動は、これまで県南農家さんを中心に行ってきましたが、実は、葛巻町ではずいぶん前からサフォーク種の羊が肉用として飼育されています。盛岡からは少し距離があるので、なかなか訪ねる機会を逃していたのですが、6月に県南農家の松島さんと二人で見学。葛巻町は、盛岡から車で1時間弱。小高い高原は夏でも涼しいので、暑さに弱い羊にとっては過ごしやすい場所です。広い高原に放牧された羊たちは、のびのび過ごしていました。 羊舎をのぞくと、かわいいサフォークたち。春に毛を刈っ

          「くずまきの羊に会いに。」行ったのは、6月!げ、もう秋深まってるじゃない。

          「暮しの手帖」話、のつづき。

          さて、「暮しの手帖」の話のつづき。もう一つ、最新号で気になったのが「また旅」の岡本仁さんの沖縄旅の話。ふと文章を追う中、山之口獏のことが書かれてあった。「あ、」と思った。これまた、なんというタイミングかしら。山之口貘は沖縄出身の詩人。岡本さんは、若い頃、フォークシンガー高田渡の代表作で知られる「生活の柄」の詩が山之口貘であることを知って詩集を買い求めたのだそうで、この沖縄旅でも山之口貘ゆかりの場所を訪ねていた。 「あ、」と思ったのは、ちょうど先月、ラヂオもりおかの「ほにほに

          「暮しの手帖」話、のつづき。

          「暮しの手帖」のこと。

          じっくり読みたいと思っていた。「暮しの手帖」2020-6/7月号を。これまでも、気になった記事の時は買っていた。でも、北川編集長になって一層、全体の佇まいに居心地のよさを感じる。 わたしにとって、「暮しの手帖」は”雑誌読み”の原点ともいえる雑誌。岩手県の片田舎のまちで過ごした小学生時代、小学館の「世界少年少女文学全集」(だったかな)、70年代に創刊した集英社の「美しい部屋」、そして母がながらく定期購読した「暮しの手帖」で、余暇すごしが成りたっていた。特に、この雑誌は、高

          「暮しの手帖」のこと。

          2020 i-wool活動、はじまり。

          さて、コロナ禍で岩手にも緊急事態宣言が出された直後の4月19日。生業として羊を飼育する生産者の皆さんにとって必要不可欠な、年に一度の「毛刈り」シーズンです。この日訪ねたのは、昨年も同時期に作り手さんとお邪魔した一関市萩荘の「下大桑ヒツジ飼育の会」。毛刈り見学&羊毛購入させていただいたので、今年も何人か連れ立っていく予定でしたが、状況を踏まえて最少人数で訪問。水野だけでは心許ないので、作り手1名澤村さんも一緒でした。 三密とは縁遠い、広い農地での毛刈り。ちょっと雰囲気をお届け

          2020 i-wool活動、はじまり。

          まち編「羊まみれの2019 」をアーカイブ 。i-wool(アイウール)活用に関わった 1年を、ざっくり振り返り。

          アイウール(県産羊毛)を生かす。一昨年春から、岩手県では肉用羊の羊毛活用に向けた事業をスタートさせている。このnote内でも以前、羊の生産者訪問やイベント開催の様子を紹介したが、「まちの編集室」では、その取り組みに少しばかり関わっている。ざっくりと記録を残す意味で、2019年春から秋の活動を紹介しておく。 現在、岩手県内で飼育される羊は肉として出荷することが主目的なので、体格がよいサフォーク種が多い。その活用に向け、2018年度はホームスパンの作り手がいくつか試作を重ね、素

          まち編「羊まみれの2019 」をアーカイブ 。i-wool(アイウール)活用に関わった 1年を、ざっくり振り返り。

          クラムボンのマンデリンと田中さん

          時折、「クラムボン」のマンデリンを買っている。すぐに飲みきるので挽いてもらう。ここのマンデリンを買った時は、てくり20号で取材させていただいたデザイナーの田中文子さんのことを思い出す。田中さんもこのマンデリンが好きなようだった。何度か自宅にお邪魔してお話を聞いたが、その美しく整った仕事場を見るのが好きだった。田中さんはいつも、品の良いお菓子とコーヒーを出してくれて、「足が悪いから好きな『クラムボン』のマンデリンも知人に頼んで買ってきてもらうの」と話していた。なら、今度来るとき

          クラムボンのマンデリンと田中さん

          てくりのつくり。

          1月15日で、ラヂオもりおかで毎週火曜日放送中の「ほにほにラヂオ」が500回を迎える。そして、先週から500回記念という言い訳のもと、てくり3人で完結するスイッチインタビュー風「裏話」を3回連続でお届けしています。改めて創刊から14年たったのかと思いつつ、新年だし「てくりのつくり」について、創刊時を振り返ってみようかと。あくまで私個人の視点ですが。 てくりがスタートした時、スタッフは6人だったけれど、家族の転勤とか出産とか皆の諸事情があって、現在は3人で動いている(ほにほに

          てくりのつくり。

          スタンダードってなんだろう。

          ちあきなおみが歌っていた「黄昏のビギン」を聴いたのは、きっと小学生ぐらい。 別に口ずさむ訳でもないし、好きな歌という訳でもなかったけど、 頭に残っているせいか、なんとなくメロディーが染み付いていた。確か、コマーシャルで誰かがカヴァーもしていた。最近、また思い出して理由もなく気になり、 Youtubeという現代の便利な仕組みで見つけた、ちあきなおみの歌。大人になって聴くと、名曲ですなあ。なんと、ちあきなおみ自身も1959年に水原弘が歌ったものを、30年後にカヴァーして

          スタンダードってなんだろう。

          イワテひつじ展から、早2ヵ月。

          今年の春、江刺で羊を飼う「もっこもこひつじ牧場」さんのもとを訪ねた。 ホームスパン作家たちが、岩手県で育つ羊の毛を使って、糸を紡いで織って……。果たして、どんなものが生まれるのか!活動の様子を追いかけるつもりが、なんだかんだと、もう冬だ。 実は、その県産羊毛を使った作品展示会が9月に開かれたのである。遅ればせながら、記録の意味も含めて、その模様を少しだけ紹介しておこう。 (写真/平成30年9月28〜30日、滝沢市「茶房結の蔵」で行われた「イワテひつじ展」) ホームスパン

          イワテひつじ展から、早2ヵ月。

          地味な鱒、の話。

          スーパーの魚コーナーで、塩サケと塩マスが並んでいたら、どちらを買うか。 木村衣有子さんの著書「あのとき食べた、海老の尻尾」の中に鱒の話があって。淡水魚の鱒が、味も見た目も地味だというくだりで妙に納得したことがある。鱒は、自分自身も内陸育ちで、子どもの頃にさんざん食べた定番食材。でも、大人になって、スーパーでは塩マスよりも塩サケの売り場が広いこと、あるいは、塩マスそのものを置いていない店も結構多いと知った。そして、いつの間にか、夕食も朝食も鱒を食べる機会がすっかりなくなった頃

          地味な鱒、の話。