まち編「羊まみれの2019 」をアーカイブ 。i-wool(アイウール)活用に関わった 1年を、ざっくり振り返り。

アイウール(県産羊毛)を生かす。

一昨年春から、岩手県では肉用羊の羊毛活用に向けた事業をスタートさせている。このnote内でも以前、羊の生産者訪問やイベント開催の様子を紹介したが、「まちの編集室」では、その取り組みに少しばかり関わっている。ざっくりと記録を残す意味で、2019年春から秋の活動を紹介しておく。

現在、岩手県内で飼育される羊は肉として出荷することが主目的なので、体格がよいサフォーク種が多い。その活用に向け、2018年度はホームスパンの作り手がいくつか試作を重ね、素材としての可能性を確かめた。そして、丁寧に育てられる県産羊からとれた羊毛を「i-wool=アイウール」とネーミング。ブランド化に向けて継続した取り組みをすることになった。

サフォーク種の羊毛は弾力があってやや硬め、毛足もそれほど長くはないので、ふんわりと柔らかなメリノ種とは質感も用途も違ってくる。ブランケットやネクタイ、コート、ジャケット、双糸にして使うニット用の糸などに向いている素材のようだ。

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■県産羊毛アイウールのポスター

2019年度は、前年よりさらにアイテムを充実!(軽く言ってますが、素材を生かして糸を紡ぎ、手織りものを作る技術がある岩手だからできること)、同年秋に予定していた「盛岡ホームスパンの祭典 ミーツザホームスパン2019」に、i-woolブースを作って出展することになった。

春、羊毛の生産者を訪ねた4月。

岩手県内で飼育される羊は、600頭あまり。昨年協力いただいた江刺の松島さんをはじめ、羊毛活用に関心ある他の生産者さんにも声をかけて、羊毛を仕入れることに。
手をあげたのは、一関市萩荘地区の「下大桑ひつじの会」だ。4月中旬の晴れた日曜日、毛刈り見学を兼ねて一関へ。同行してくれたのは、ホームスパン作家の澤村さん、原さん、小山さんの3名。

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■ずらりと並んだサフォーク種の羊たち。手際よく毛刈り作業を行うのは、奥州市江刺区「もっこもこ羊牧場」の松島さんだ。

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■刈った羊毛は一つに繋がった状態で広げ、汚れの多い裾部分を取り除いてまとめる。ここでは、地域のお母さんたちが大活躍。

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■ケンブリッジという名前は、「陸上選手のケンブリッジ飛鳥のようにイケメンの羊だったから」だそう。みなさん、愛を注いで育てていることがよく分かる。。

個性あふれる羊たちを見て、毛に触れ、しっとりともっちりした毛、内側の柔らかさなどを確認しながら、その場で4、5頭分の羊毛を入手。

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■すっきり毛を刈って、全体のフォルムが80%くらいになったサフォークたち。てくてく歩いて帰る姿が、たまらなくめんこいのだった。また、来年よろしく!と心で挨拶し、皆で帰路に着いた。

フライスランド種のいる、宮古「しあわせ牧場」へ。

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そして、春にもう1件訪ねたのは、宮古市の高地で農場を営む「しあわせ牧場」さん。こちらは、牛やヤギをメインに飼っており、牛乳、ヨーグルトやプリンなどの乳製品の加工品販売を行っている会社の牧場だ。

同社で飼育する羊は、県内で珍しいフライスランド種。乳用羊として飼っているそうで、一頭一頭毛の個性が違うのが魅力的。触ってみると、やや長めでツヤがあり、野性的な印象がある。こちらは、一関市在住トワイニング織りのラグ作家、千葉もとこさんと一緒に訪ねた。

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■生まれたばかりの羊たち。サフォーク種も数頭!

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■広大な敷地を伸び伸びと駆け回るフライスランドたち。呼ぶとやってくる。。羊は単純に「かわいい」というところでポイント高し。

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■ちなみに、同社では、宮古駅前にて直営菓子店を営業している。やぎミルクとシュークリームの美味さに感激!


「しあわせ牧場」さんでは、千葉さんがラグ用の羊毛を仕入れることに。ほか、編み物用の糸などに使ってみたいとの声もあり、3頭分ほど提供いただいた。普段、岩手のホームスパン作家たちは、それぞれにお付き合いある羊毛業者から素材を購入するのがほとんどで、作り手が直接生産者を訪ねるのは貴重な機会だ。「県内に生産者がいて、その素材を生かしてものづくりができる」その価値は大きいことを改めて感じた春の生産地訪問となった。

夏、スコーレ高校生と、下大桑ヒツジの会(一関)を訪問。

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そして、7月。盛岡市のスコーレ高等学校生徒たちとともに、再び一関の「下大桑ひつじの会」を訪ねた。同校には、ホームスパンの父といわれる東和町の及川全三氏が直々に通って指導にあたった歴史があり、現在も授業の中でホームスパンに取り組んでいるのだ。

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秋の「盛岡ホームスパンの祭典Meets the Homespun」に向かって、同校生徒たちにも県産羊毛を使った作品づくりに取り組んでもらうことになっていた。その一環で、羊毛を提供してくれた生産者を訪問したのであった。

秋、「i-wool 」製品総数250点を展示販売!

こんな感じで、駆け足で生産地を巡り、羊毛を手配した春。あとは作り手にお任せ!の夏から秋。皆さん、羊毛を仕分けて洗って、染めて、紡いて、織って。
あっという間に、季節は11月に。

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「盛岡ホームスパンの祭典Meets the Homespun2019」は、2019年11月2日(土)3日(日)、盛岡市中の橋「岩手銀行赤レンガ館」にて開催された。2017年に行われた第1回目は、2日間で県内外約1,500人が来場した実績を持つ。開場後は、全国からお集まりいただいたホームスパンファン、つむぎ関係の方々、工芸好きなど、多くの人で賑わった。

会場では、ホームスパン作品の展示販売をメインに糸紡ぎ体験やワークショップ、トークイベントも行われる中、今回は「いわてのひつじ アイウール展」の専用ブースを用意。ホームスパンや手織り作家が、ブランケット、ネクタイ、マフラー、ラグなどを展示販売した。

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出展者は、田中祐子、植田紀子織物工房、森由美子、中村工房、みちのくあかね会、木村泰子、佐々木トモミ、富樫由紀子、澤村佳菜、原しおり、mää-mää homespun、小山牧子、立花なつみ、松島紘子(ひつじがりや)、千葉もとこ、盛岡スコーレ高等学校、下大桑ヒツジの会(敬称略)、の皆さん。

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マフラー、ショール、ネクタイ、ウール人形、ミニマット、ブランケット ポットマット、ラグなど、ホームスパン作家、羊毛作家、生産者の16組による総数250点がずらり。(写真手前は、スコーレ生徒たちの羊たち)

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■フリースも展示、小分けした羊毛も販売。

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■ニット用の毛糸も人気だった。

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■ジャケットは手が届かないというメンズに好評だったネクタイ

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■宮古のフライスランドの羊毛で作った、大判ラグもどーんと展示!

2日間で、のべ2323名(岩手銀行調べ)の来場者。めん羊産地としての新たな取り組み、羊毛活用、実際の作品をアピールする場となった。

I-woolのエモーションは、まだまだつづく。

その後、「盛岡ホームスパンの祭典Meets the Homespun」 終了後は、ホームスパン作家らが県内外の店舗やイベントへのブース出店にて、共通タグをつけて、i-wool製品を販売展開。

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■(mää-mää homespun提供 / 2019年11月松屋銀座7F「カオリモリオカ3」に出店したブースでアイウールネクタイを販売)

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■(小山牧子提供/2019年11月「横浜赤レンガ倉庫あーてぃすとマーケット」出展ブースにて、アイウール製品販売)

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■(木村泰子提供/ 􏰉􏰓􏱖􏰉􏰉􏲁􏰆􏰓􏰭􏰵􏰉􏰆􏲁􏰉􏰭 􏰿􏱷􏱏􏱮􏱩􏲆􏲭􏱇􏱱􏳐􏰭􏲊􏱎2019年11月盛岡市盛久ギャラリー「木羊日展」にてアイウール製品販売)

と、2019年、羊にまみれた1年の活動をざっくり紹介。イベント以外にも、羊毛洗い講座や糸づくり講座など、地域の中でアイウール(県産羊毛)を生かす取り組みも実施。今後も、作り手それぞれの取引先や人脈を生かし、製品の見直しを図り、継続的な販売展開をしていく予定だ。

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羊からいただく羊毛の温もりは、いろんなモノに形を変えても、変わらず温かい。アイウールのエモーションは、1頭の羊から作り手へ、作り手から皆さんの元へ。2020年春以降も、引き続き、アイウールがつなぎ、紡ぐ活動にみなさまご注目ください。


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