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スタートは山下洋輔でモーリス・ラヴェルを経由してモーツァルトに着地した件。

ひと目惚れとかひと耳惚れ。

好きになるきっかけは常に思いもかけないことからだ。

クラシックを聴くことになるとしたらバッハから入るだろうなとジャズばかり聴いていた若い頃には思っていた。

予想はみごとに裏切られて目の前に現れたのはモーツァルトだった。

しかもジャズ・ピアニストの山下洋輔さんからという変則的な入り方だ。

【きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第78回】

山下洋輔トリオを解散してソロ活動を始めてから洋輔さんはモーリス・ラヴェルの「ボレロ」をレパートリーにとり上げられるようになった。

中学の音楽の時間に「ボレロ」を聴かされたけれど「だから何なの?」な演奏でドキドキもワクワクもしなかった。

イ・ムジチの演奏するヴィヴァルディの「四季」も退屈極まりなくその時点でクラシックへの扉はピタッと閉ざされてしまったのだ。

通常は管弦楽で演奏される「ボレロ」を洋輔さんは大胆にもソロ・ピアノで演奏した。

これが面白くないわけがない。

1985年の夏にニューオリンズ、セントルイス、カンサスシティ、シカゴへとミシシッピーを北上しながら各地で洋輔さんに道場破りをしてもらうアメリカ乱入旅の最終地点ニューヨークでソロ・アルバムの録音を企画した。

その旅がどんな珍道中だったか、洋輔さんの演奏に対するアメリカ人たちの反応はどんなだったかは電子書籍『きっかけ屋アナーキー伝』で一部始終をお読みいただけます。

アルバム録音前の予習ということでシャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団の「ボレロ」を聴いた。

「ボレロ」は相変わらずつまらなかったが同時購入したデュトワの元妻マルタ・アルゲリッチのラヴェルのピアノ・ソナタの演奏に世の中にこれほどの演奏をするピアニストがいるとは!しかも超美人❗ 明らかに不公平な神様の手落ちとしか思えないと驚いた。

これがクラシック開眼のスタート地点、否、正確に言うとクラシックには開眼しなかったけど。

さっそく信頼できるクラシック好きの友人に「おすすめレコードを教えてちょうだい」と尋ねるとモーツァルトのピアノ・ソナタとピアノ協奏曲を聴きなさいというご命令だった。

そのあたりの経緯は第62回、第63回でお読みいただけます。


ちなみに最近はどんな作曲家が人気なんだろう。

2019年11月 島村楽器従業員アンケート(男性220名女性220名)
男性
1 ショパン
2 ベートーヴェン
3 バッハ
4 リスト
5 ドビュッシー
6 モーツァルト
女性
1 ショパン
2 べートーヴェン
3 ドビュッシー
4 モーツァルト
4 ラフマニノフ

マイナビ 2015年社会人ライフ (社会人男女00人) 
1 モーツァルト   20.2%
2 ベートーベン   16.4%
3 ショパン     14.8%
4 バッハ       6.8%
5 ドビュッシー    4.0%

一般財団法人クラシックソムリエ協会 2015年。
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン期間中、クラシックソムリエ協会ブースに入場した
2351名による人気投票。
1 バッハ 270票
2 チャイコフスキー 229票
3 ショパン 221票
4 ベートーヴェン 186票
5 モーツァルト 176票
6 ブラームス 168票
7 ラフマニノフ 166票
8 ドビュッシー 120票
9 ラヴェル 116票
10 ドヴォルザーク 87票


モーツァルトは一般的には人気があるけれどクラシック通にはあまり好まれていないということかな。

モーツァルトをきっかけにして幅広くクラシックを聴くことになるだろうというぼくの甘い期待は見事に裏切られた。

モーツァルトから離れられない、というか、モーツァルトを聴くだけでせいいっぱいだったし他の作曲家を聴いてもしっくりこない。

暑苦しいベートーヴェンにしろ憂鬱なブラームスにしろオシャレなショパンにしろ全く興味がわかない。

モーツァルト以前の作曲家には耳がそそられたけど。

さくっと音楽の歴史をおさらいするとこうなる。

1 中世・ルネサンス時代(5~16世紀)
  グレゴリオ聖歌

2 バロック時代(17世紀~1750年頃)
  バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディ他

3 古典派時代(1750~1820年頃)
  ハイドン、モーツァルト、ベートーベン

4 ロマン派時代(1820~1850年頃)
  ショパン、リスト、メンデルスゾーン、シューマン他

5 国民楽派主義(1850~1883年頃)
  スメタナ、ドヴォルザーク、グリーグ 

6 1883年以降
  ワーグナー、ラフマニノフ

バロックや中世・ルネッサンス音楽にはドキドキ、ワクワクするけれど古典派のモーツァルト以降のクラシック音楽にはほとんど興味がわかなかった。

モーツァルトをコンパスの軸にして、西欧音楽の基本と思われがちな平均律に対する誤解と純正律との出会い、音楽の授業で叩き込まれたクラシックの中心がドイツだという“捏造された歴史観”の嘘などの面白さにワクワク、ドキドキする幸せな20年を過ごしたわけです。

最後までお読みいただき有難うございました。

ベルギーのフォルテ・ピアノ奏者ヨス・ファン・インマゼールの演奏する古楽器演奏の魅力たっぷりのモーツァルトの「キラキラ星変奏曲」をお楽しみください。


次回は平均律って誤訳なんですねという話にしようかな。

次回もお寄り頂ければ嬉しいです。

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2002年から書き続けているブログ「万歩計日和」です。


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