1/1000のウォーホル
みなさんウォーホルは好きですか?
私は正直あんまりよく知りません。
「キャンベルの缶とかマリリンモンローの肖像画をカラフルにした人でしょ?」
そんな感じです。
ただ、20世紀を代表するアメリカのアーティストということはわかるので、
この↓ニュースを見て、すごいことを考える人がいるものだ、と驚きました。
ニューヨークのブルックリンに拠点を置くアート集団、MSCHF(ミスチーフと読みます)がウォーホルの作品を2万ドル(約228万円)で買ったあと、最新のデジタル技術を使って巧妙につくった贋作999個に紛れさせてどれが本物とでどれが偽物なのかの区別が(一般人には)つかない状態で1つ3万円弱で販売するということです。
「当たった人はラッキー」という、なんだか宝くじみたいですね。
※こちらのサイトではロシアンルーレット、という表現がされています。(HYPEBEASTは香港発のメディアですね。日本語のサイト・アプリもあり、海外の限定スニーカー情報やアート情報など面白いので私もよく見ています。オススメです。この記事はUSのサイトなので日本語版にはまだ載っていないようです。※EST 10/27(水)19:00現在)
MSCHFは過去にラッパーのリルナズXと組んで、NikeのAir Max 97に本物の人間の血を入れて改造したスニーカーをサタンシューズとして666個販売しNike訴えられるなど、なかなかに物議を醸してきた集団です。
アートが既存の伝統的な価値観や概念・手法に挑戦する(ぶち壊しにいく)のが常、というのはわかりますが(デュシャンの『泉』然り。あれは今の時代でも驚きませんか?私は驚いた)
実際の人間の血を使って制作、とかってなると生理的に・道徳的に受け入れられないのもよくわかります。
今回の取り組みに関しては、
・アート業界の中での”当たり前”への課題提起
・このプロジェクトに参画する1000人みんなで共有する、というアート体験
・通常の金額では到底買えない人がアート作品を手にする機会創出
ということが彼らの意図だったと考えると、その型破りな発想の裏にはアーティストとしての信念があることが伺えます。
既成の概念を打ち壊して、その上に新しい概念を生み出す・積み上げる、というのはまさにイノベーションだな、と思いました。
今回の取り組みに批判が出るのもわかりますが、個人的にはとてもチャレンジングで、面白い取り組みだなと思いました。
1/1000の確率でウォーホルのデッサンが手に入るかも?という今回の取り組み。
ご興味あるかたは、MSCHFのサイトやSNSなど、覗いてみてはいかがでしょうか?
-----以下が記事の日本語訳全文です。-----
1,000点のウォーホル作品が1つ250ドルで販売へ。ただし本物は1個だけ。
あるアート集団が、アンディ・ウォーホルのオリジナル・ドローイングを2万ドル(約228万円)で購入し、幸運な1人の買い手に250ドル(約28,500円)で販売しています。しかし、これには問題があります。この作品は、999点の高品質な贋作と一緒に提供されており、制作者でさえ見分けがつかないのです。
これは、ニューヨークのMSCHFによる最新の試みです。MSCHFは、約20人のアーティストで構成されており、本物の人間の血を使って改造した「サタン」スニーカーを作ったとして、Nike社から訴えられたことで有名です。
このプロジェクトを「Museum of Forgeries(贋作の美術館)」と名付け、MSCHFは1954年にウォーホルが描いた本物のペン画「Fairies」を購入し、デジタル技術とロボットアームを使ってウォーホルの正確なストロークを再現し、熱、光、湿度によって人工的に紙を劣化させました。
999枚の偽物にオリジナル1枚を混ぜ合わせ、MSCHFは「もうどれが本物のウォーホル作品かは分からない」と主張しています。そして月曜日からは、すべてが「Possibly Real Copy Of 'Fairies' by Andy Warhol(アンディ・ウォーホルの「フェアリーズ」のリアルなコピーかもね)」と題された1,000点の作品のうち、1人1点だけを250ドルで購入することができます。しかし、MSCHFのチーフ・クリエイティブ・オフィサーのルーカス・ベンテルは、「MSCHFはこの作品そのものが評価されることよりも、この作品によってアート作品の真贋に関心の高い業界や、それを作り出した人たちをからかうことを意図している」と述べています。
「アートを収集している大多数の富裕層にとって、それは美的価値のためではありません」と、彼はニューヨークからのビデオ通話で語った。「投資価値のためです。この作品は時間が経てば評価されるか否か、ということです。」ベンテルと共同でチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるケビン・ウィズナーは「アート界の顔にツバを吐きかけると同時に、彼らがやろうとしていること、つまりアートを投資手段として利用することを、より良く実現できるような作品を作るのは、いつもとても面白いことです」と付け加えました。
出所の破壊
MSCHFは、本物のウォーホルを買った人はそれに気づかないかもしれない、と考えています。専門家であればその違いを読み取ることができるかもしれないと認めつつも、これらの贋作は作品の出所に永久に疑念を抱かせるのに十分な出来だ、とウィズナーは述べています。
「今後、この作品を(本物の)ウォーホルとして提供するギャラリーと真剣につきあうなんて、気が狂っているとしか思えません......今回、信頼の連鎖が取り返しがつかないほど壊れることを私たちは願っています。」
MSCHFは価値という概念が主観的な性質を持つものであるという主張をするだけでなく、他の方法ではウォーホルの作品を買えないような人々に手に入れてもらいたいと考えています。ベンテルによると、このプロジェクトは1つの作品の価値を破壊するだけではなく、1,000人の購入者全員が共同で所有するというまったく新しい作品を生み出すものだそうです。
「ウォーホルの作品を手に入れることは、ほとんどの人にとってまったく現実的ではありません」とウィズナーは言います。「ある意味、ウォーホルのような作品を誰もが手にできるようにすることにより、私たちは作品を民主化しているのです。」
ウィズナーは、大量生産を自らの作品に取り入れ追求したことで有名なウォーホルも、このプロジェクトに賛同してくれるのではないかと考えています。「彼が喜んでくれることを願っています」
恐るべき子供たち
アンディ・ウォーホルの遺産を管理するアンディ・ウォーホル財団が、この離れ技を熱狂を持って迎えてくれるかはまだわかりません。
MSCHFは、法的な問題はないだろうと述べています。しかし、チーフ・レベニュー・オフィサーのダニエル・グリーンバーグが認めたように、MSCHFは今年初めにラッパーで歌手のリル・ナズ・Xと組んで、血のついた「サタン」シューズを制作して物議を醸したときも、同じように考えていました。
3月には、大手スポーツウェア企業がMSCHFを商標権侵害で提訴しました。「無許可のサタン・シューズは、混同や希釈化を引き起こし、MSCHFの製品とナイキとの間に誤った関連性を生じさせる可能性がある」と主張したのです。
「その時、私が言ったことで忘れられないことが2つあります」とグリーンバーグは振り返る。「1つは『私たちはナイキに訴えてほしい』と思っていたこと。もう1つは『これは10000パーセント合法だ』ということです。そしてなんと、彼らは私の願いを叶えてくれたのです。」
両者は最終的に和解に至り、その過程でMSCHFは世界的なスポットライトを浴びることになりました。しかし、このグループは2019年にも、世界で最も危険なウイルスをインストールしたノートPCを130万ドル以上で販売したことで、話題になっていました。それ以来、2週間に1度のペースで披露される、不遜な「ドロップ」と呼ばれる一連の毒々しいアートプロジェクトに乗り出しています。
2020年には、ダミアン・ハーストの有名なアート作品である「スポット・ペインティング」に3万ドル以上を投じた後、88色のドットをひとつひとつ手作業で切り取り、別々に販売して巨額の利益を得ました。また、今年の初めには、エルメスのバッグ バーキン4個を解体し、世界で最も高価なサンダルとなる「バーキンストックス」を制作し、3万4千ドルから7万6千ドルの価格で販売しました。
ベンテルは、ウォーホルの作品を鍛造することで、「破壊による価値の創造」を続けていきたいと考えています。そして、彼らアート界の最近の恐るべき子供たちは、その過程でアート業界を鏡に映し出そうとしています。
「たとえそれが風刺であってもなんの反応も得られなければ、それはただ現実を描写したに過ぎません」とウィズナーは語っています。
※CNN style(https://www.cnn.com/style/article/warhol-art-mschf/index.html)を参照、和訳
※こちらは意訳です。文法や表現に不確かな部分がある可能性があります。ご容赦ください。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
みずきもり
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