現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その26)
上手《うま》く辿《たど》り当てた縁だと喜ぶ権中納言はこれにかこつけて、不慣れな恋心でひたすら気持ちがままならないことをほのめかしながらひどく嘆いた。
相手の態度に尼君は当惑した。
「確かに世間から隠し続けるのは難しいと思っていたものの、人目の少ない、巌《いわお》に囲まれた場所だから大丈夫だと安心しきっていた。そもそも最後まで隠しおおすのは無理な話で、見苦しいやり方だったかもしれない。それにわたし自身、姫君が何者なのか知りたいと思っている。いずれにしても、素性が明らかになれ