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綾瀬さんと真谷くん

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シリーズ「綾瀬さんと真谷くん」を読みやすくまとめたもの。この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 2020年12月21日…
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綾瀬さんと真谷くん1「綾瀬さんと僕」

僕には好きな人がいる。今日も麗しい綾瀬響さんだ。さらりとした長い髪の毛が陽光を反射して青みがかって、まるで物語のお姫様のように艶めく。その髪を耳にかければきらりときらめく華奢なイヤーカフ。校則が緩いから邪魔にならなければアクセサリーを身につけてもOKで正解だ。可愛らしさが際立っている。
 何も見た目だけじゃない。中身だって素晴らしい。学級委員長を務められる誠実な人柄、そして誰に対しても優しく接する

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綾瀬さんと真谷くん2 「真谷くんと私」

私には気になる人がいます。クラスでは目立たない、いつも本を読んでいて真面目そうな顔つきの真谷くん。優、という下の名前に相応しく優しそうな目の色をしていて、そして実際に優しいのです。学級委員の仕事が立て込んでいて大変な時に助けてくれたりとか、催し物がある時に議論が紛糾すると、双方の意見をまとめて、どちらがより良いかを私に代わって意見してくれたり。何かと煙たがられがちな私にも自然な態度で接してくれます

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綾瀬さんと真谷くん3 「デートをしよう」

綾瀬さんと付き合ってはや一週間。この間特に何も起きず、昼休みに話したり、たまに一緒に帰ったりするくらいで、至って普通で日常的なことしかしていない。
 そろそろ、デートがしたい。というわけで、本を読み漁り、デートに誘う時などの作法を一通り調査した。初デートは無難に遊園地が良さそうだということと、誘い方しかわからなかったが、まぁ収穫はあったということでよしとする。
知識だけ増やしても仕方がない。ちゃん

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綾瀬さんと真谷くん4「トラブル発生」

デートから1ヶ月、色々忙しかったりして、図書館とか近場でお金のかからないようなところでのデートが続いた。これはこれで身の丈に合っているからいいとは思うけど、もうちょっといいカッコしたい。
 そんなある日だった。昼休み、いつも通り二人でお昼を食べていると、ソワソワとしていた響ちゃんが、
「あのさ、優くん……」
そ、と耳元で囁いてきた。お互い名前呼びにはなんとかなれたけど、耳元で声がするのは話が違う。

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綾瀬さんと真谷くん5「バレンタイン」

綾瀬さんと真谷くん5「バレンタイン」

散歩がてら駅の近くを歩いていると、巨大なサイネージに「キューリアで好きを伝えるバレンタイン!」という広告が。
「そういえば、もうすぐでしたね」
すっかり忘れていました。手作りチョコをあげたら優くんは喜んでくれるでしょうか。
資金を収集して、スーパーで物資調達です。
「ショコラーデ、クリーム、ヴァイスも買ってくかぁ」
変な人がいます。チョコレート売り場で変なことを呟きながらひょいひょいと品物をカゴに

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綾瀬さんと真谷くん6「無理は禁物」

寒さがまた少し厳しくなって来ました。ここ数日、熱っぽい気がしますが、大丈夫でしょう。このくらいで休んでちゃ、学級委員長として名がたちません。
「響ー!」
あ、優くんが話しかけてくれました。今この廊下には二人だけです。他の人がいるところでは今でも「綾瀬さん」「真谷くん」と呼び合っています。トラブルが起きたらいけませんから。お昼だってもともと私が一人で食べていたところに優くんが後から合流するようにして

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綾瀬さんと真谷くん7「大事なもの」

綾瀬さんと真谷くん7「大事なもの」

寒さがまた少し厳しくなって来た。ここ数日、響の調子が悪そうだ。今日こそ体調が大丈夫か聞かないと。
「響ー!」
いたいた。先生と一緒に授業で使った器具を片付けた帰りに響と遭遇した。今この廊下には僕たち二人だけ。他の人がいるところでは今でも「綾瀬さん」「真谷くん」と呼ぶことにしている。トラブルが起きたらいけないしね。主に僕がやられる側だと思うけど。響はクラスのマドンナだし。お昼だってもともと響が一人で

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綾瀬さんと真谷くん8「ホワイトデー」

綾瀬さんと真谷くん8「ホワイトデー」

休日に街へ出かけていると巨大なサイネージに
「もうすぐホワイトデー!」
と広告があった。
「そういえばもうすぐやんな」
自分の失態と共にすっかり忘れてた。バレンタインのお礼にべっこう飴でもつくろうかなぁ。材料は家にあるし風味付けのレモン汁を一つだけ買って帰る。
スマホでべっこう飴の作り方を確認して試してみる。飴を作るのは初めてだから、最初は慣れなくて何度も焦がしたけど、そのうちコツをつかんで、なん

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綾瀬さんと真谷くん9「勉強会」

綾瀬さんと真谷くん9「勉強会」

もうすぐ学年末考査がある。早めに対策しておきたいが、たまには響と一緒に勉強したいなぁ。よし響に聞いてみよう。
「響ー」
人のいないのを見計らって声をかける。
「優、どうしましたか?」
「もうすぐ学年末考査あるでしょ? だから響と一緒に勉強したいなぁって思ってね」
「私の家でやるのでしたら良いですよ」
うん、僕の家だと姉ちゃんがいるからどのみち無理だし大丈夫。
「ありがとう響」
やった。これで響と一

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綾瀬さんと真谷くん10「不穏な影」

綾瀬さんと真谷くん10「不穏な影」

テストが終わって数日後の昼休み、優とお話しようと人目のつかない場所に行こうとしていたら、クラスでも人気のある如月さんとその取り巻きたちが、廊下でたむろしていました。気づかれないように通ろうとしたら、
「あー委員長じゃん!どこ行くのー?」
これはまずいです。気づかれてしまいました。
「え? どこって職員室に向かおうとしてますがそれに何か問題が?」
「ふーん、そう」
はぁ。何とか切り抜けられました。私

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綾瀬さんと真谷くん11「幸せの条件」

あたしの名前は如月歌音。あたしにはー今気になってる人がいてぇ、名前は確かー真谷優だったかなー。真面目でーかっこよくてー委員長のサポートとかもしててぇ、すごいなーて思うのぉ。
そんな優くんを手に入れたいんだけどぉ、このあたしならーすぐオトせると思うのー。それにぃ、あたし優くんからの評価もまぁ高いと思うしぃ? 自分の可愛さは自覚してるし? 最強でしょぉ?
でも、優くんはなかなかなびいてくれないの。意固

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綾瀬さんと真谷くん12「動くべき時」

最近、イライラしやすくなっている。原因は如月だ。僕たちが付き合っていることは、隠さなければならない。如月のせいで最近は響と話せてないし。ともかく僕に引っ付いてくる如月を何とかしないとな。あ、噂をすればなんとやら。
「ねぇねぇ優くぅん一緒にお昼食べようよぉ〜」
「なんで?」
「なんでもいいじゃないのぉー」
こいつと話してて楽しいとは思えない。
「いやだよこの後予定あるからそういうことで」
少し強引に

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綾瀬さんと真谷くん13「少し先の未来」

その後、僕は泣きじゃくる如月を無視して響が待ってる所へと向かった。
「おまたせ響」
「あ、優なんか泣き声が聞こえるけどどうしたの?」
「如月がついてきたからちょっとキツめに言ってたらさ、泣き出したんよ」
「そうでしたか……でもあまり言い過ぎは良くないですよ?」
家への帰り道、如月のせいであまり話せてなかった分響と話した。
「これでやっと如月の妨害から逃れられるわぁ」
「そうですね私たちが付き合って

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綾瀬さんと真谷くん14「新学年」

そろそろ新学年だ。
6月には体育祭がある。それと進路についても考えないとな。そんなことを考えてると、
「優じゃん! こんなとこで何してんの?」
後ろを振り向くと、姉の奏音が立っていた。
「うげっ……姉ちゃんなんでここに来てるの?」
いや同じ学校だから会うくらいは普通だけどさぁ。
「えー別になんでもいいじゃんかー」
姉ちゃんは学校のカーストの上のほうにいるからあまり話したくない。僕の安全的な意味で。

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