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BOOK REVIEW

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#書評

森絵都 みかづき

森絵都 みかづき

友人S氏の推薦本。
灰谷健次郎の『兎の眼』にも通ずるテーマをガルシアマルケスの『百年の孤独』の手法で物語る、"教育"をテーマにした三代記。

"不条理な世の中を行きぬくための、たしかな知力を子供たちに"

どこかで聞いたことのある言葉だけど、この言葉を出発点に物語は始まる。明子と吾郎は志を同じくして八千代塾を立ち上げ、結婚する。
"塾"を舞台にありとあらゆる教育の問題に立ち向かい、時に飲み込

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あのこは貴族

あのこは貴族

素晴らしいとしか言いようがない…!
今までずーっと心の片隅で燻ってた部分が、この本を読んだらスカーーーーッと晴れた感じ。.

東京生まれの箱入り娘v.s.地方生まれの雑草系女子という文言が帯にはあるけれど、実際に描かれているのは、"生粋のお嬢様の、マジな悩み"。その、お嬢様ライフの描き方もリアルだし、おぼっちゃまたちの嫌らしさも如実に描かれてる。(『軽薄なパステルカラーのポロシャツ着て、バミュー

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怒りにまみれた白羽と怒りを知らない古倉さん

遅まきながら、昨年の芥川賞受賞作品であり、読書芸人おすすめの1冊でもある『コンビニ人間』を読んだ。(文芸春秋で)

感想を端的に申し上げると、「短い物語の中に、たくさんの要素が詰まっていて読み応えがあった」というところだろうか。

おおまかなあらすじは知っていた。コンビニから「世界」に出て行くのではなくて、コンビニという「世界」に帰っていく物語だと。だけど、主人公の詳細な人物設定や、巻き起こる(と

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