#40 ダイエットの価値観
パーソナルトレーニングジムSISEIの宮谷です。
みなさんはダイエットされていますか?
なんのためにダイエットしますか?
ダイエットは、“食事の量を制限したり、エクササイズや運動をしたりして減量すること”と一般的にも認知され、”美しく”“若々しく”“カッコよく”スタイルを磨きたい目的で始める人が多いと思います。
または、健康診断などで医師から健康のためのダイエットを薦められ、健康のために始める人も少なからずいらっしゃいます。
医師や多くのSNSやメディアでも、“体重と健康が直結している”かのようなメッセージを発している人が多く見受けられ、「健康=ダイエット」と思われている人も多いのではないでしょうか?
しかし、本当に「健康=ダイエット」なのでしょうか?
太っている人でも活発で元気な方もいる一方、痩せている人で元気がなく疲れやすい方もいるのが現実です。
体重が増加することが必ずしも健康を損なうわけではないということは、近年さまざまな専門家が指摘しています。
では、なぜこのようなメッセージが、なかなか一般の人々まで伝わってこないのでしょうか?
「体脂肪が高い、体重が重いことは悪いこと」という印象が強すぎるため、「健康的なライフスタイルへの道」を間違って捉えられているのかも知れません。
今回は、“ダイエットを始める前に知っておきたい”、多くの人が見落としている重要な事実を、文献を引用してご紹介します。
体重だけが健康の指標ではない
見た目は細く体重が軽くても、BMI(ボディマス指数)が標準値であっても、実際は体脂肪率が高い“隠れ肥満”と呼ばれる人がいます。
見た目に現れる「皮下脂肪」が少なくても、体内にはたくさんの「内臓脂肪」がついている状態です。
内臓脂肪は、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。
肥満のタイプは「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられ、生活習慣病へのリスクが高いのは「内臓脂肪型肥満」と言われています。
この結果、見た目や体重、BMIは健康の指標にはなり得ません。
「ダイエットして痩せたから健康になった」とは言い切れないのです。
健康的な行動の方が重要
※ ストレスについては、こちら記事も併せてお読みくだい。
栄養バランスが偏った食事制限ダイエットをして、結果的に痩せたとしても、それは本当に健康的なのでしょうか?
人が健康に過ごすために必要な「5大栄養素」をしっかり取れないダイエットをしても、体重が減ったところでどこかに歪みが生まれてしまいます。
特に不足しがちなビタミンやミネラルは、カラダで作られない(ビタミンD、ナイアシンは微量に作られる)ため、食事からの摂取が重要です。
これらは3大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)から、エネルギーやカラダの組織を作る助けをする役割があります。
ビタミンは、美肌作用や抗酸化作用、免疫力を高める働きもあるため、食事からの摂取量が足りないと老化を早めてしまいます。
ミネラルは、恒常性維持(体内を一定のよい状態に保つ)作用、神経や筋肉を正常に保つ働きがあるため、不足すると正常にカラダを機能させることができなくなってしまいます。
健康的でない食事制限ダイエットをするより、「運動習慣をつける」「バランスの良い食事を摂る」「7時間は睡眠する」「喫煙や過度なアルコール摂取をしない」など、生活習慣を見直すことが健康には1番大切なのです。
「生活習慣を正すことがダイエットの近道」というのが事実です。
体重が重いからといって、体調が悪いわけではない
これらの結果において重要なことは、体重を占める割合において、「脂肪が多い」のか「筋肉が多い」のかです。
脂肪と筋肉の比重を比べると、水の密度1に対して筋肉は1.1、脂肪は0.9で、筋肉のほうが重いのです。
例えば、3辺がそれぞれ10cmの立方体になった、筋肉と脂肪を想像してみましょう。※これは水なら1ℓのサイズに相当します。
その場合、筋肉が約1,100gに対し脂肪は約900gとなり、その差は200g(0.2kg)です。
このことから同じ身長や見た目の人を比べると、筋肉量が多い人ほど体重は重くなり、脂肪量が多い人ほど体重は軽くなると言うことになります。
言うまでもなく、筋肉量が多いほうが楽に運動でき、代謝が正常で適切な体力を持っている健康な人です。
「体重」が「カラダの健康」に必ずしも関連しないことが、このことからも分かりますね。
体重を減らす≠健康が向上する
ダイエットをすることが、必ずしも健康の向上につながるわけではありません。
これは主に、ダイエットサプリや痩身エステなどの非運動系ダイエットを指しています。
健康を向上させながらダイエットするためには、「運動」というプロセスは外せません。
「運動」は体脂肪を燃焼し、基礎代謝を高めるダイエット効果のほかに、心肺持久力や筋力の向上、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防、骨粗しょう症やロコモティブシンドロームの予防にも効果があることが認められているからです。
運動には大きく分けて、「有酸素運動」と「無酸素運動」があります。
「有酸素運動」はウォーキングやジョギング、スイミングなど、酸素を使用し時間をかけて行う継続的な運動のことで、「無酸素運動」とは筋トレや短距離走など、酸素を使用せず短時間で行う強度の高い運動のことを指します。
体脂肪の燃焼効果は「有酸素運動」が高く、基礎代謝を高める効果は「無酸素運動」のほうが高いので、どちらの運動もダイエットには大切です。
体重は、“摂取カロリー”と“消費カロリー”だけの問題ではない
欧米での研究では、「遺伝子の変異」が肥満の原因の一つであることが分かっています。
この遺伝子の変異を持つ人は、血液中の「グレリン」という空腹を感じさせるホルモンの濃度が高く、食事をしてもすぐに空腹を感じると言うのです。
また、食欲を制限するホルモンである「レプチン」が効きにくくなることで、食欲を抑えられなくなって過食をしてしまうとも言われています。
物価の高騰により、クリーンな食品の値段が高くなったことも、体重に大きく影響を及ぼしていると考えられます。
スーパーで食材を買って作るよりも、ファストフード店や外食チェーン店のほうが、安価で気軽にいつでも食べられる現代。
所得格差などの社会的要因も、体重に影響を与える要因であると言えます。
このようにほんの一部を切り取っても、体重に影響を及ぼす要因はさまざまです。
ダイエットは、「摂取カロリーを減らして、消費カロリーを増やす」とした単純明快なプロセスなのですが、コミットするためには、これらの要因も考えなければいけないと思います。
事実、痩せ過ぎは良くない
体重指数であるBMI(ボディマス指数)は、BMI = 体重kg ÷ (身長m)² で算出されます。
標準体重は、日本ではBMIの標準値22を用いて、標準体重 = (身長m)² × 22 で算出されます。
一度、BMIと平均体重をみなさん計算してみてください。
参考までに、例として現在の私は[身長176cm、体重82kg、体脂肪率は約18%]です。
算出するとBMIは26、標準体重は68kgとなり、下記の表で見ると、私は軽度の肥満(1度)と分類されます。
ですが体脂肪率で見ると、成人男性の基準値10〜19%の範囲内ですし、体脂肪率から計算すると、除脂肪量は67.24kg、脂肪量が14.76kgとなり、除脂肪量がほぼ標準体重と同じ重さになります。
※体組織計(インピーダンス法)にも誤差は生じますので、100%正確なデータとは言いきれません。
前項で「BMIは健康の指標にはなり得ない」とお伝えしましたが、問題は計算式の“体重”には筋肉も脂肪も含まれているということです。
筋肉と脂肪を比べると筋肉のほうが重いため、BMIだけでは筋肉によって体重が重い場合と、脂肪過多で体重が重い場合の区別がつかないのです。
体重やBMIの数字だけで評価してしまうと、健康的に運動やトレーニングで筋肉量を増やすことが肥満につながるとなってしまっては、本末転倒ですね。
健康なライフスタイルに大切なのは、体重の数字に捉われないで、健康的な生活習慣の積み重ねをすることです。
神経質にならず、健康の三原則である「食事・睡眠・運動」の正しい習慣を実行していけば、結果は自ずとついてくるものです。
栄養的にバランスの取れた食事が「ダイエット」よりも効果的
体重を1kg落とすためには、7,200kcalのカロリーが必要です。
例えば、1カ月で体重を1kg減らすには、7,200kcal ÷ 30日で、1日およそ240kcalのカロリーを減らす必要があります。
これはご飯1杯(約150g) = 約234kcalを、毎日減らさなければいけないことになります。
1カ月で体重を5kg減らそうと思うと、36,000kcal ÷ 30日となり、1日およそ1,200kcalのカロリーを減らさなくてはいけないことになります。
これはなんとご飯5杯分(約750g)にあたり、一般的な成人女性の1日に必要なカロリーが平均1,900kcal(1,400〜2,400kcalの範囲)ですので、約60%のカロリーに相当します。
食事制限だけでダイエットをしようとすると、1カ月に1kgが理想的なラインであり、継続しないとリバウンドしてしまいます。
また、加齢や運動不足で筋量が減少すると基礎代謝も低下するため、体型を維持するためには、摂取カロリーをもっと減らしていく必要があります。
もっと深刻なのは、カロリー制限をすることによる栄養不足です。
栄養不足は体重は減少しますが、免疫力や回復力の低下、筋量・筋力の低下、便秘や肌荒れ、精神的な落ち込みなども招きます。
肉体的・精神的な健康を害するだけでなく、基礎代謝量もどんどん減少して、ますます痩せにくいカラダになってしまうのです。
さらには、食事による摂取カロリーが少ない時期が続くと、飢餓から身を守ろうと人間の持ち備えたホメオスタシス(恒常性維持)機能が働き、生命維持のため消費カロリーを抑えてしまいます。
栄養的にバランスの取れた食事を摂ることは、実はダイエットには1番大切なことであり、ダイエットのために消費しなければならないカロリーは、運動やトレーニングでカラダを動かして増やすことがもっとも健康的なのです。
ダイエットは悪いこと?
「ダイエット≠ 健康」と言ってきましたが、痩せて適正体重に近づけることは健康に良いことです。
大切なのは、痩せるためのプロセスです。
そもそも太る原因を考えると、「運動不足」「不摂生な食事」「睡眠不足」と健康の三原則を著しく守らないことの積み重ねです。
この3つを改善することがダイエットの近道であり、生活習慣病やさまざまな疾病の予防にもなり、健康的なライフスタイルにつながるのです。
「体重が重いから不健康だ」ではなく、「体重に関係なく、不摂生な生活習慣をしているから不健康」なのです。
メディアやSNSでさまざまなダイエット方法が紹介され、一時期流行っては、また新しいダイエット方法が出てきます。
成果が出る方法もあれば出ないものもあり、人それぞれだと思います。
痩せたけど、すぐにリバウンドしてしまったという人の話もよく聞きます。
「◯◯だけを食べて(食べないで)ダイエット」「◯◯だけしてダイエット」のような安易なダイエット方法は、特にリバウンドしやすい傾向にあります。
分かりやすく実践しやすいという利点もありますが、一面的で飽きやすく、長続きしないというデメリットが原因です。
長続きしやすいダイエットには、多面的なアプローチが重要です。
色々な流行のダイエット方法を試す前に、まずはご自身の生活習慣を見直すところから始めてみませんか?
「週末にトレーニングする」「食事の栄養バランスを考え、サラダを食べる」「夜更かしをしないで早く寝る」など悪い習慣を改善させ、少しずつ習慣化させるところから始めてみましょう。
ダイエットも「千里の道も一歩から」です。
良い習慣の積み重ねが成果につながり、リバウンドしないスタイルがキープできるのです。
今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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