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夢と希望を教えてくれた音楽
夢や希望といった『キレイごと』が大っ嫌いである
夢や希望は一時的な安心だけを与える詐欺師
現実は常に非情で優しくないし『キレイごと』は責任を取らない
ポジティブアレルギーを患っていた当時の私はそんなことばかり考えていた。アレルギーであると同時に求めてもいた。本当は夢と希望を求めていたい、信じていたい。
行き場のない私は音楽から光を探した。そこで出会った音楽たちは邦楽はもちろん、クラッシックhip-hop、ラウドロックなどジャンルを問わず背中を押してくれた。
音楽は確かに私に夢と希望を与えてくれた。
ひねくれた私をちょっとだけ真っ直ぐにさせてくれた数々の曲の3つを紹介させてほしい。
「人生は夢だらけ」椎名林檎
ワルツのように三拍子で進行していく曲。
ピアノだけの伴奏が中盤から派手なトランペットを先頭に荘厳なオーケストラへと劇的な変化をする。
椎名林檎の歌唱力は言わずもがな表現力に長けていて圧巻としか言いようがない。ただの音源でもミュージカルの講演に来たような錯覚を覚える。
ドラマティックな演出なこの曲。一見キラキラした美しい人生賛歌にみえるが違和感がある。あまりにも『劇的』である。
何もかも後ろから見れば冷たいハリボテで、いつか夢から覚めてしまう。そんな儚さをどうにも感じてしまうのだ。
痛感したいです 近寄れば悲しく 離れれば楽しく見えてくるでしょう
終盤の歌詞である。喜劇王チャップリンの言葉「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」を引用したものだろう。
私たちがエンタメとして遠くから楽しんでいる椎名林檎とその曲は最高の喜劇である。しかし本人とっては、ただの人生であると同時に悲劇であるのだろう。
ご存知の通り私たち一般人にとっても自分の人生は喜劇ではない。おおよそ辛く、虚しい日々が大半だ。
喜劇の極致のような曲で人生を歌うというなんとも皮肉めいたメッセージであるが彼女が伝えたいことは嫌みではなく「それでも人生は素晴らしい」であると思う。
鱈腹味わいたい 誰かを愛したい 私の自由 この人生は夢だらけ
それは人生 私の人生 誰の物でもない
奪われるものか 私は自由 この人生は夢だらけ
繰り返し登場する「自由」と「夢」。基本的に僧侶の如く俯瞰した目線で人生の無常さ、言わば悲劇を語っている歌詞であるがここでついに彼女の強い意志があらわれる。
「自由」とは個人の強い意志の象徴。何者にも動じない折れない芯。
「夢」とは可能性のかたまり。私を豊かにするものである。
くだらない人生でもそれは、あなた、そして私のものであり、無限の可能性が秘められている。
演目:悲劇「人生」の舞台で誰の指図も受けず踊り幕が下がるまで演じきる
煌びやかで美しく彩られた「人生は夢だらけ」から彼女の凄まじい熱量がひしひしと伝わって来るのだ。
「夢と希望の平原」Toby Fox
ゲーム「DELUTARUNE」より抜粋。少しだけゲームの概要について語らせてほしい。「DELUTARUNE」とは2015年に発売され一躍ネットで話題となったインディーズゲーム「UNDERTALE」の続編、兼パラレルワールドの物語である。
元となる前作「UNDERTALE」は「誰も死ななくていいやさしいRPG」のキャチコピー通り、道中の敵を倒さずに友達になることができる。
このゲームで頻繁に出現するワードは希望と夢である。
主人公は最終戦、暴力を行使せず希望と夢を胸に抱くことで強大な相手に立ち向かった。この2つのワードはそれほどまでに重要な要素である。
まだ未プレイの方はぜひともプレイしてほしい。
紹介したいBGMは「希望と夢の平原」
マリオでいう1-1のような初めのステージの音楽だ。闇の世界へと落ちてしまった主人公の冒険の一歩と共にBGMがスタートする。
わけもわからないまま薄暗い平原へと投げ出され、敵も襲ってくる絶亡的な状況。しかし、ここは希望と夢の平原。温かくてどこか懐かしい電子音がプレイヤーの背中を押してくれるのだ。
希望と夢のタイトルにしてはこの曲は切なすぎる。だが、このギャップこそが最大の魅力であると思う。
希望と夢の平原は私たちの生きる現世に近さを感じる。先もわからない、前も見えにくい、何が起きるかわからない。それはゲームも現実も同じだ。
ではどうやって前に進むのか?希望と夢である。一筋の温かなものを胸に抱きながら前進していくしかない。
もう一度曲を聴いてほしい。
電子音のドラムベースは軽快だがどこか淡々としている。
その上に包み込むような控えめでやさしいピアノのメロディ、温かいサックスの音が混ざることによって一気に曲に立体感が出て人間味まで感じる。
人間くさいこのBGMのおかげで主人公と自分を重ねあわせてしまう。
どんなに不安で目の前が真っ暗になっても希望と夢がそばにある。
温かくてやさしいこの曲が教えてくれる気がするのだ。
「MY LAND」Wienners
数々のアーティストに曲を提供し作曲家としても活躍している玉谷2060%率いるキャッチーで奇想天外な銀河系パンクバンドWiennersからの一曲。
ハイスピードで畳み掛けるような爆裂シンセサイザーの玉谷節をぜひとも体験してほしい。演奏については「考えるな感じろ」と言ったほうが早い気がするので歌詞について語りたい。
毎日毎晩こじらせた 頭ん中ちょっとだけ晒してみ
そこにしかないような空想を 誰も止める権利なんて持っちゃいない
何十何百繰り返した 諦めと忍耐なんか終わらしてみ
建前 かこつけは置いといて 裸同然の姿になってみな
1番と2番のサビ初の歌詞、この曲で主張したいメッセージが顕著にあらわれている。人は誰しもなりたい自分を想像し、夢として思い描く。
でもいつか現実を認識し夢として封じ込む。大人になるとはそういうことだ。しかし玉谷氏は語る。「開放しろ」と。
get a my land すごい楽園さ
get a my land フリーダムさ
むき出しが唯一許される スーパーネイキッドステージへ
MY LANDとは天国やユートピアなどと同義だろう。社会や周りの目から身を守るための鎧を脱いでも許される場所をネイキッドステージと表現している。また、冒頭でそれをneo statesとも言っている。
深層に到達した 本来の状態へ
ネイキッドステージ=neo states=深層
悟りの極致のような難しい言葉が羅列するが、実はこれは本来の状態であると玉谷氏が言う。
私はこの歌詞が狂おしいほど好きだ。
特別でもなくて本来の自分が一番良くてサイコーなんだぜ!!!
この歌詞だけで自分はここにいてもいいんだと救われた。
本来の状態を肯定することはカウンセリングなどでも有効な手段である。
本来の内なる自分「インナーチャイルド」と向き合うというのは心理学でも有名である。
意図的かどうかはわからないが玉谷氏は音楽という媒体を使い、全国の病んでる人間にお薬を処方出来たと思う。「MY LAND」は音楽の力を最大限発揮できたのではないか。
パンクでロックな奇想天外な曲とともに本来の状態で生きていきたい。
無限大の可能性を秘めた曲である。ぜひ聴いていただきたい。
そしてまたneo satesでお会いしましょう。
最後に
人生はしんどい、生きるだけだって一苦労する。
しかし前に進まなくてはならない。
進むためのガソリンが夢や希望なんだと思う。
枯渇してしまうエネルギーを補給することができるのが音楽である。
音楽はたしかに私に夢や希望を与え、存在を思い出させてくれた。
本当にありがとう。
この記事が誰かに届き、素晴らしい音楽と共に夢や希望の指針となってくれることを願いたい。
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