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シャドウバースというゲームにより脳が犯され、人格が崩壊した話

Cygamesが提供するデジタルスマホカードバトル、shadowverse。通称シャドバ 。現在ではe-sportsの一種の種目となり、4周年たった今でも未だ人気は衰えない。

私はリリース初期からプレイし、masterランクへは到達したがそれ以降は適当に気ままにプレイする。所謂〈エンジョイ勢〉だった。

ある時masterランクの上の称号【grand master】ランクを目指してみたくなった。grand masterになってもアイテムが少し貰えるだけで労力に見合うかはわからないが、上があるなら目指してみたいのがゲーマーの性である。
しかし、これが私にとって危険な選択だった。

・中毒性のあるゲーム性とストレス

ユーザー間でもよくネタにされる「過剰なストレス」というやつである。シャドバは試合の展開がとても早い。
それ故に一方的に嬲る、嬲られるということが多く起こる。一進一退の攻防で負けちゃったけどいいゲームだったね!と、なるのは当時の体感としては10試合に1回あればいい方である。

このゲーム性が過剰なストレスを生み出しているのだろう。このストレスは日常生活で味わう事はなかなか無い。
あえて例えるとするなら完成間近のレゴブロックを他人に足で壊される、そんな理不尽さの感覚に近い。

試合が短いという事は中毒性にも繋がってくる。負けたポイントや心のストレスを取り返そうと何度もバトルをしてしまう。勝ったら勝ったで波に乗っていると勘違いし、勝負を挑みまた負ける。

短い試合を繰り返してくうちに気づいたら半日経っていた、なんてこともある。この中毒性はギャンブルにハマる方なら分かるのではないだろうか。

・私の人格が崩壊した日

grand masterまで残り3分の一に差し掛かった頃。私の脳は完全に蝕まれていた。朝から晩、そして次の朝までひたすらストレスを発散する為にストレスを抱え込んでいた。もはやそこに純粋にgrand masterになりたいという思いは無い。

そして私は流行りの1番強いデッキ(tier1)を使うのを異常に毛嫌いし、それ故に2番手、3番手、それ以下のデッキしか使わなかった。当然、最強のデッキでは無いので負ける事が多い。しかし、弱者の立場から強者のデッキを嬲る快感は凄まじいものであった。

この日は負けが続いた。2連敗、3連敗…。1勝して2連敗、3連敗…。そんなことを繰り返してくいくうちに頭部に存在するであろう液体が沸騰していくのを感じた。

そして5連敗。敗北すると自分のキャラクターが弾け飛ぶ演出があるのだが、私のキャラが負け台詞を残し光になる瞬間、私の頭の中で『ブチッ』という音がした。

確実に何かがキレた。堪忍袋なのか、脳の血管なのか、人として大切な何かなのかはわからない。しかし、キレてはいけないモノがキレたという実感があった。

無表情で次の試合へ。弱いデッキを使っているので当然不利な状況になる。上手い人なら同じ状況でも冷静に相手の出すカードを予測し、自分の勝ち筋を見つけ、勝利へ向かってプレイするだろう。
だが、今の私は『上手い人』でも、『ヒト』でも無く、醜い『ケモノ』になっていた。

自分の引くカード、相手の出すカード、全ての現象に感情の赴くまま過剰に反応した。

「オオオオォォォ…」と唸る、「クソがヨォォ!!?」と大声で暴言を吐く、言葉にならない高い声で奇声を発する、床や机を何度も殴る、など人間とは真逆の位置にいた。
まさしく理性の崩壊である。

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醜悪なケモノである私に相手はトドメを刺した。自分のキャラが弾け飛ぶ姿を確認すると手からスマホが消え、モノがぶつかる鈍い音がした。下を見ると私のスマホがある。

それは意識を介さず行われた行動だった。脊髄が身体の異変を察知して反射的にシャドバを遠ざけたのであろう。
「あぁ…スマホ投げたんだ。」
そう呟くと涙が出てきた。俺は一体何をしているんだろう、なんて愚かだったのだろう、そんな思いが溢れ出てきた。
小一時間放心状態になった後、私はアンインストールボタンを押した。

・『人間』に戻った後

あんな思いをしたのに私のホーム画面にはシャドバがある。実は15回くらいアンインストールした経験はあるがやはりシャドバが『居る』。
今はそこそこ楽しく4周年記念イベントを遊んでいる。たがもう深入りはしない。もちろん、grand masterにもなっていない。シャドバに深入りすると精神が取り込まれてしまうからだ。

少しだけやって笑って楽しもう。
もう『人間』を失わないように。

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