建築家ってどんな職業かよくわからなかった私。40年たって、その時の"ある決断"がやっぱり正しかったと思う理由。【進学・就活・留学・海外就職】
ウィーンで建築家の仕事をして30年以上たった。
ヨーロッパと日本の間で仕事をするなかで、ずーっと違和感があったことがある。
こんなやり取りを何回したことだろう。特に、日本のクライアントさんに多い(笑)
「専門性の細分化」
「専門性は狭く・深く」
「職業」
「技術」…
仕事にこんな視点が最も大事とされていた時代に、
大学・大学院で学び、社会に出た私たち。
それから、30年。
「建築家」という職業名と
「一級建築士」という資格と
「建築事務所」を持って活動をしてきたけれど、
何をしてきたかと言えば、
「ひと」のための「空間」をつくってきた。
という一言。
私がこの30年間、手掛けさせていただいたプロジェクトは本当に多岐にわたっている。
住宅、レストラン、ショップ、オフィス、公共建築、公園、広場、地域計画、そして展示会・メッセ、インテリア、家具、ランプのデザインまで。
「ひと」と「空間・デザイン」がかかわるものは全て。
最近、「土」の時代から「風」の時代になったと言われたり、
専門領域を越境できる人材がこれから必要になってくる、
という言葉を聞くたび、思うことがある。
(私は、先見の明があったり、時代を先取りできるタイプではないのだけど)
こんな時代だからこそ、専門や職業にしばられないで
第6感で
スキと感じたこと、
興味があること、
なんか気になること、
をやってみるのは、間違いでないと思う。
職業とか専門性とかのグループ分けがないクロスオーバーの時代が来ている。
努力はもちろん必要なのだけど、
好きなコト、興味があるコトのほうが頑張りやすい。
で、実は私は、いろいろな人生の節目でそれをやって来たんだと思った。
(それは、ときどき当時の価値観にそぐわないこともあったのだけれど)
「建築家」という職業を選んだことが正しいというより、
理由とかゴールが漠然としていても,
「何が好きなのか、何がしたいのか」
の声に耳を傾けたことが正しかったのかも。と今さらながら思う私の話。
高校生の時、こんな単純な動機で、建築学科を受けようと思った
今の私をご存知の方の中には、Miyakoさんはきっと、志があって、「建築家」という職業を選んだのでは、と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、まったくそんなことはない。
勉強が嫌いじゃなかったので、受験をして中高一貫進学校に進んだが、高校2年のとき、進路を決めなければならなくなった。
さて、私は困った。
周りは、医者の家庭の子が多く、志望は医学部の子が多かった。彼女たちにとって身近な職業だったからだと思う。
私はと言うと、
地方公務員だった父と、パートをしていた母の家庭に育った私は、愛情を受けて大きくなったが、「職業」や「職能」というテーマは家庭の話には一回も登場しなかった。(大体、父は忙しすぎてほとんど家にいなかった。)
「職業」をもって働くというイメージが全くない中、いろいろ考えられるはずもなくて、ただ、
理数系の勉強が好きだから、理系に行こう。
と思い、そして、
でも、人と交流があまりなく、研究ばかりはきっと私に向いていない。
そうだ、そのなかでも、人と関りがありそうな「建築」を勉強しよう。
なんと、こんな単純な動機で将来の進路すなわち職業を選んでしまったのだ。
でも、今、思う。
30年、「ひと」に関わってきた。「ひと」を幸せにする「空間」をつくろうとしてきた。
あのとき、何もわからなくても、心から、第6感で感じた、
「ひと」と関わりたいということ、
「ひと」に喜ばれたいということ
は、建築を通して、(そして建築を通さなくても)これからも私がしたいことなのだ。
30年後にその「企業」や「職業」や「専門」があるかなんて誰にも分らない。価値観も変わる。
大学で卒業論文を書くとき、建築の中でも専門性を選ばなければいけない。
またしても…よくわからないのに選ぶ。(私が不勉強だったのかもしれないけれど)
意匠設計か、構造設計か、施工か、都市計画か、土木か、建築史か…
私は、スキだった意匠設計を選んだ。
ちなみに、私の行った「OO大学理工学部建築学科」はこの名前ではもう存在しない(笑)それほど、時代が、教育の現場も変わっているということ。
私が働いてきたこの30年間でさえ、時代の流れがすさまじい。
社会人になって5年、手書きだった図面が、コンピューターのCAD図面に変わった。そして、2Dだけでなく、3Dというものが出来なければいけなくなった。そして、いまは、レンダリング、ビデオ制作…
スクラップ・アンド・ビルドの時代から、すでにあるものをリノベーションして価値を上げることに注目が集まってきた。
スター建築家に憧れていた建築学生が多かった私たちの時代。今は、多くの若い建築家たちは地域づくりに興味を持っている。
「建築家になる」ことが目的なのでなく、「建築」を通して何をしたいか、が大切になる時代になった。
昔、公然とした目的だった「大企業に就職する」ということも、もはや目的ではなくなった。なぜなら、「終身雇用」なんて言葉は当の昔に存在しなくなっているから。大体、企業自体が生き残りに必死な時代がいま。
すごいなー。長く生きてきちゃったな―。事実として、自分自身の体験の中から話が出来るようになるなんて(笑)
「就職」が目的ではなくて、それはこれからの人生をつくる一つの通り道。わからなくても、ワクワクする方へ、見てみたくて仕方がない方へ。計画なんてなくても。周りがどう思っても。
大学4年生の春、大手ゼネコンなどの企業がリクルートにきた。ちょうど、バブルで男女均等雇用法も施行されたこともあり、女子にはじめて総合職のポストもオファーされた。そんな時代だった。
ある意味では、羨ましい時代だったのに、私は、大企業に勤めて自分が一体何になるのか、またイメージできずにいた。
結局、就職はせずに、大学院へ行った。したいことがあった。
アメリカに行って自分の目で建築を見て学んでみたい。
突然留学したいといった私に、親は驚いた。無理もない。親戚中、だれも日本の外へ出たことがない一族。英語もあまり得意ではなかったし。
それでも、親は行くのは許してくれたが、当然ながら、こう言った。
幸運なことに奨学金が受かった私は、アメリカの大学院に留学して勉強することが出来た。
このとき、よくこう聞かれた。
どの質問にも答えることができなかった。
アメリカは未知の世界だったからどうしても見てみたかったけど、
見てみるまでわからない。
アメリカにいって本場の建築を見て、勉強したら、そのあとどうするかなんて計画はもちろん立てられない。
それがいつも私の回答だった。というか、これ以外答えようがなかった。
でも、当時は、このような考え方は、
「行き当たりばったり」
「責任感がない」
「身勝手な」
と思われた。
そして、
「恩返し」ということが、
「日本に帰ってきて」とか「日本に」という非常に狭い境界でしか考えられていなかった。でも、
そんな批判の目も気にならないほど、
私は、アメリカに行ってみたくて、仕方がなかった。
私流の決断術ー「あたま」じゃなくて、「こころ」でもなくて…
で、こうしてアメリカに渡った私がその後どうなったかと言うと…
アメリカでも、日本でもなく、
ヨーロッパ・ウィーンへ新卒で就職することになった。
その時の話は、下記の記事に。(私のnoteの記事の中でも歴代2位という人気記事になりました。興味のある方はぜひ!)👇
人生、どうなるかなんてわからない。そもそも、計画なんて立てられない。ましてや、未来のために正しい決断なんて、できるわけない。
じゃあ、どうするの?
"お腹の声を聴く"
えっ⁉ 「心の声」じゃなくて?
心は頭に近すぎるので、ともすると「考えて」しまうのだ。
だから、
「おなか」の声を聴くのです。
思えば、こんな「おなかの声」が、第6感として、私の人生の大切な決断をいつも後押ししてくれたように思う。
アメリカに勉強に行った時も。
そして、そこからヨーロッパに就職した時も。
(ちなみに、小さい決断は、考えすぎてなかなか決められない私です…笑)
「建築家」なんて実は何をするのかよくわからなかった17歳の時、
「おなか」からでた気持ちが、
「ひと」と関わりたい
そして
「何かを作り上げることがすき」
だった。
いまも、たまたま、「建築家」という仕事をまだしているのだけど、
その活動の根本には「人が幸せになる空間をつくりたい」という私にとって今もワクワクする"動機"があるのだろう。だから、あの時の「おなか」からの決断は、正しかったのだろう。
40年たった今、そんなことを思う。
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今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ウィーンより
ちなみに、「未来」のことは「未知」なので、5年先、何をやっているかは、わかりません(笑)
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