みねこんぶ茶

新書・文庫の一部を大雑把にメモしたものです。 お忙しい学生さんや社会人の方々の読書案内…

みねこんぶ茶

新書・文庫の一部を大雑把にメモしたものです。 お忙しい学生さんや社会人の方々の読書案内になれば嬉しいです。

最近の記事

一極・多極世界システム

 今日はサミュエル ・ハンティントン先生のお誕生日ということで、なんと20年以上前に出版された「文明の衝突と21世紀の日本」の一部を紹介します。優れた見通しを持っておられました。 1998年12月の講演から。  冷戦時の世界政治構造はまず、主にイデオロギーに基づいて分けられていた。自由民主主義の国家、共産主義国家、独裁主義による第三世界の国々である。  しかし現在出現しつつある世界では、国々の主な違いは、文化の違いであり、国々を文化的に最も大きく類別するものが文明である

    • 紹介できない本

       このところ記事を書くのがおろそかになっていますが、読書は続けています。  これまでの執筆で最も気になったことがあります。読んでいる本の内容がショッキングで紹介できないことです。  例えば、去年の新書大賞に入賞した「独ソ戦」「教育格差」やその前の年の「日本軍兵士」なんかは、私には生々しすぎて紹介できません。各方面への影響を鑑みて途中で記述をやめたものもありました。  それに大学のテキストとかで使われそうな「概説書」みたいなのも難しいです。「戦後政治史 第四版」なんて戦後

      • 文科省主導から官邸主導の教育改革へ

         2010年代の小学校英語政策が2000年代までと異なるのは文科省主導の政策形成から官邸主導に変わった点ある。  もっとも文部省外部の政策決定への参加者、たとえば臨教審や財界も小学校英語に関する政策提言を行っていた。が、それらは象徴的なアピールであって、文科省に具体的な政策提言を行うものではなかった。  しかし、10年代は官邸が文科省を飛び越えて英語教育改革を具体的に提言するようになり、文科省のイニシアティブは大いに低下した。  2013年4月25日に「第二期教育振興基

        • 「教科」でない「外国語活動」という「領域」

           この時代の早期英語教育論から、1980年代に流行したアルファ波・ベータ波などの超科学系「トンデモ論調」は駆逐された。第一に英語活動が公式の教育課程に入り、以前に比べると多くのリソースが投入された。第二に大学で英語教育に携わる研究者が支援・助言のために大量に小学校の現場に入った。第三に少々無理筋の早期英語の効能を声高にすることがなく、地道に漸進的に現状を変えていくような研究がなされた。第四に、早期英語によって英語が身につくという信念が実証研究の蓄積によってもはや迷信に過ぎない

        一極・多極世界システム

          2000年代、小学校英語実践の積み上げと論争。大衆歴史ブームとの類似性

           2002年に始まった総合学習における英語活動は、私たちが英語学習と聞いてイメージするものとは相当のギャップがある。  総合学習の時間に何を学ぶかは各学校が自由に決めてよい。その内容として国際理解に関する学習を選べて、その場合「外国語会話等」を行なってもよいという。  2005年の調査結果を見れば、国際理解は必ずしも多数派ではなく、たとえば地域学習や文化・伝統に関する学習の方が人気があった。  変化の激しい社会に対応できるように、子供の「生きる力」を育成し、この目的のも

          2000年代、小学校英語実践の積み上げと論争。大衆歴史ブームとの類似性

          90年代に本格化する小学校英語導入の議論

           1990年代に入ると小学校英語をめぐる政策論議が本格化する。1992年から研究開発学校において小学校英語の実践が始まる。  1990年代の第三次行革審において小学校英語に関する議論がなされ、1991年に「多様な初等教育が行えるよう学習指導要領に基づく教育課程の運用の弾力化を図る。例えば、小学校においても英語など外国語会話の特別活動を推進する」という提言がなされた。これまでの小学校では全国一律で英語教育を排除してきたが、これからはこうした画一的で硬直化したカリキュラムを改め

          90年代に本格化する小学校英語導入の議論

          サンデースペシャル「日本史の新常識」

          ここが変わった日本史の教科書 昭和→令和 鎌倉幕府成立 1192年→1185年  いいくに→いいはこ  1192年は源頼朝が征夷大将軍になった年だが、征夷大将軍になったからといっても、政治の仕組みはあまり変化しなかった。  1185年は源頼朝が朝廷から自分の部下を守護・地頭の任命権を得た年。それが武家政権の成立といえる。 最古の通貨 和同開珎→富本銭  天武天皇の時代から「富本銭」という日本で最初の銅銭が作られた。しかしどのくらい流通したかはわかっていない。これは日本各地

          サンデースペシャル「日本史の新常識」

          小学校英語前史

           小学校英語は戦前からの取り組みがあった。一部の公立尋常小学校、高等小学校、私立小学校だったが、現代に比べてスケールが小さかった。  実は英語は高等小学校発足当初(1872年 明治五年)から教えられていた。開校した学校の割合は、少ないときで2%台、ピークでも10%弱。しかし一部の私立小学校、(高等)師範学校の附属小学校では先進的な英語教育が展開されていた。  小学校英語の推進者はわずかで、英語教育の第一人者であった岡倉由三郎(岡倉天心の弟)でさえ反対者だった。  理由は

          小学校英語前史

          ダークサイドミステリー ”怪しい歴史”禁断の魅力

           以前紹介した中公新書「椿井文書」によると、史料として信憑性に疑いがある偽書だとわかっていても、「事実」として扱われたままのところもあるらしい。  ダークサイドミステリーという番組では、偽造された史料・史実として、明治維新頃の誌名が記入された44人の武士の集合写真、東日流三郡史、チンギスハン=源義経が紹介されていた。  その集合写真は昭和年代にすでにフェイクだと結論づけられていたが、バブル経済崩壊後再び蒸し返され、その後オークションで高値で取引されたという。  東日流三

          ダークサイドミステリー ”怪しい歴史”禁断の魅力

          日本の子どもたちの学力は本当に低いのか?

           日本の子どもたちの学力を国際比較しよう。TIMSS(ティムズ 国際数学・理科教育動向調査)では「学校で習った内容をきちんと覚えていて使えるか」を測っている。一方、OECDが主体となって実施しているPISAの科目は数学・理科・読解がある。これは「学校で習った基礎的な内容を新しい目的に対して創造的に使えるか」を測っている。  TIMSSの2015年の日本の中学二年生の順位は、数学で5位、アメリカは11位、理科では日本は2位、アメリカは11位。TIMSSのランキングでは、日本を

          日本の子どもたちの学力は本当に低いのか?

          「公表」すべきなのは知事の要請・指示

           ところで、24条9項に基づく知事の要請には前提条件がない。一方、本来の対策がある45条には、様々な前提条件がある。  まず政府が緊急事態宣言を出さないことには、外出や営業の自粛要請はできない。しかも、営業自粛要請ができる施設は例示されているか、施行令で細かく決められている。  政府によれば、ウイルス対策で知事が行える「要請」には二種類あり、第一段階は24条9項で、いつでも、誰に対しても要請できるという。ところが本格的に緊急事態宣言をした後だと、45条が根拠になるので、要

          「公表」すべきなのは知事の要請・指示

          役人の恣意?

           特措法24条は「行政機関の権限、所掌事務、構造」などを規定する「組織法」で、作用法の部分は45条で定められている。緊急事態宣言が出た後、そのエリアの中で行う知事の自粛要請などだ。  つまり、特措法24条では休業要請ができない。ただ、誤読の可能性がある。これは2012年の法制定時にパンデミックの経験がなかったため、条文を書いた担当者に具体的なイメージがわかなかったのではないか。また、この条文は、国民の権利制限に関する規定ではなく、どうせ都道府県の対策本部の話だからと言うので

          役人の恣意?

          特措法24条9項に基づく自粛要請は違法か?

           新型インフルエンザ等対策特別措置法では、緊急事態宣言を出すタイミングは、感染経路不明の人が出たかどうかが重要なポイントだ。そうした意味では、屋形船でクラスターが発生した二月中旬の時点で宣言を出しておかなければならなかった。  感染予防については、外国からウイルスが流入するのを食い止める水際対策は国の仕事だが、国内で感染が始まってからは都道府県の仕事だ。  屋形船と同期時に病院でクラスターが発生した和歌山県は、仁坂知事が国の基準では県民を守れないと判断し、徹底したPCR検

          特措法24条9項に基づく自粛要請は違法か?

          新型コロナ対策に関する政府と都道府県の対応

           2020年1月29日、武漢市から第一便のチャーター機が戻ってきた時、2012年に成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法を適用すべきだった。  その特措法の改正が成立したのは3月13日。さらにこの法律に基づいた具体的な対策が決まったのは、習近平の来日が延期になり、東京五輪も延期が決まった後の四月になってから。  政府が打った手のうち、最初に全国に大きな影響を与えたのは、安倍首相が全国の学校に対して行った「一斉休校の要請」だった。  この「要請」には法的根拠がなく、そ

          新型コロナ対策に関する政府と都道府県の対応

          討論ゲームとしてのギリシア・チーム対ローマ・チーム

           ここに、帰国子女が1980年代の海外(アメリカ)の中学校で体験した興味深い事例がある。  この学校のESS(社会と英語が一緒になった授業)でやった世界史の授業について。ここの目玉は古代史をディベート形式で勉強すること。40人の生徒がギリシアとローマの二チームに分かれて、「どちらが良いか」を討論して勝敗を争うもの。  まず先生が一週間かけて時代背景を説明する。この学校では科目数が少ないため、週の帯で同じ科目学習ができる。次の二週間は生徒同士で相談し合って勉強する。  た

          討論ゲームとしてのギリシア・チーム対ローマ・チーム

          アクティブ・ラーニング導入のための課題

           アクティブ・ラーニング導入までの過程において、もう一つの特徴はグローバル化に象徴される大規模な社会変動が強調されている点である。  2018年版の学習指導要領が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」という資質・能力の三つの柱を採用していること自体、コンピテンシー(資質・能力)を軸とした教育改革の国際的動向と歩調を合わせたものと言える。すなわち、「コンテンツからコンピテンシー」または「ティーチングからラーニング」へのシフトである。  この能力観

          アクティブ・ラーニング導入のための課題