人間を感じる②
久しぶりに担当した「入浴介助」。
たった2時間弱の間でしたが、「生きる」「命の動き」をぎゅーっと感じることができました。
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話すの楽しい
Aさん90代男性。ダンディー。
うちを利用して2年以上。ご夫婦で元気にご利用中です。
昔に会社を経営されていて、社会活動もかなり積極的にされていたこともあり、かなりダンディーな方です。
綺麗なポロシャツにスラックス、革靴を毎回お召しになっています。
毎回、”いらっしゃいませ!”をお声かけすると、右手を出され「いつもどうも!お元気そうで!本日もよろしくお願いします!」と中音ボイスで満面の笑み。
こちらに粗相があっても「いえいえ、こちらこそ不注意で申し訳ありません!気をつけます!」と満面の笑み。
僕の私生活の話も、随分前にお話したことも完璧に覚えられていて、
「岡山のおじいさんおばあさんはお元気でしたか?先月帰られたとか?」
3ヶ月ほど前に、”再来月くらいに帰るんですよ〜”と話してから、多分100日以上経っていました。(本当に90代なのか・・歳誤魔化してるんじゃ・・・w)
そんなAさんとは、
・戦争の話
・若い頃の武勇伝(僕が質問攻めにしてるだけw)
・ゴルフの話
をよくさせて頂きます。
この日は、・戦争の話 をしました。
僕の地元である岡山の話から派生して、「私の恩人がね、岡山にいらっしゃるんですよ〜本当にお世話になってね、命の恩人ですよ!」
戦争で海外に駐在していた時、最前線の部隊で苦楽をともにされた方だそうです。
実は、この話、僕が聞かせてもらうのは、多分20回目くらいです。
でも、いつもこの話の時は、顔つきが変わられます。
遠くを思い出したような、でも嬉しそうで、寂しそうにも見えます。
ご本人曰く「またいずれお会いしたいですね〜」とのことですが、
その時の表情は、何かを察したような、もしかするともう会えないんじゃないかと悟ったような、そんな表情をされています。
いつも本当に勉強になります。
経験や知識だけでなく、出来事や思い出の「捉え方」や「考え方」、そしてその事象にどう想いを馳せるのか、心が成長できる30分間でした。
”生きる”を感じる
Bさん80代男性。アクティブ。
うちを利用して、まだ3ヶ月。
江東区内のタワーマンションの”上の方”にお住いのBさんは、多分、絶対、相当デキるビジネスマンだったようです。
お話される内容も、いつも整理され、伝わりやすく話してくださいます。
そんなBさんは、病気の影響もあり、両足が不自由です。
歩行はゆっくりですが、スタッフが横につきながらご自分でされています。
「この膝がね・・」
少しばかり寂しそうな表情のBさん。
「ほんの数年前までね、マラソンとかしてたんだよ〜」
実はBさん、かなりのスポーツマンだったそうで、ハーフマラソンを年に何度も走られていたそうです。
運動が好きで、若い頃も仕事の合間でマラソンイベントに参加したり、サークル活動をされていたそうです。
こういう時、なんて声をかければいいのか、今だにわかりません。
ひたすら気持ちに寄り添うことしかできません。
でも、Bさんは前向きです。
「少しでもよくなってね、走るのは難しいかもしれないけど、歩いたりね、山に登ったりしたいわね!ハハハ!」
汗をぬぐいながら語られた表情は、カッコよかったです。
長生きするだろうなあ〜w
”命の向かう先”を感じる
Cさん70代男性。江戸っ子気質。
この日の利用者さんの中では、おそらく一番身体状況が思わしくない方です。
数年前に難病を発症され、回復の見込みはほぼゼロ。
車椅子とベットで生活されていて、チューハイと痛み止めとインスタントラーメンを楽しみに生活されています。
上記、どんな印象を受けますか?
業界の人だと「まあ、いるよね〜」と思うかもしれませんが、そうではない人、あまり介護や闘病や”死”があまり身近ではなかった人は、想像が難しいかもしれません。
Cさんは、とにかく「痛みを少なくする」「最低限美味いものを口に入れる」ことを最大の喜びにして生活されています。
でも、Cさんはとにかく明るいです。
フロアでは、他の利用者さんに話を振ったり、テレビやDVDの画像を”いちいち”解説してくださったり、感想を言ってくださったり。
正直、スタッフとしては、仕事がしやすいですw
そんなCさんとの久しぶりのお風呂です。
脱衣所に入るなり、「はぁ〜、まったく、良くなんねえもんなあ。。。」
声色が変わります。
江戸っ子丸出しで、いつも強気、大声のCさん。
でも、皆んなから離れると、いつもこんな感じです。
不満・不安・恐怖・諦め、心の裏側のヒダというヒダの全てを見せてくださいます。
浴槽に入られている時間5分前後ですが、いつもは”失礼します”といって浴室を出て待機します。
ただ、この日は、浴室に残り、Cさんと話し込んでいました。
もしかすると、それは、「もしかすると、これがCさんとの最後のお風呂になるかもしれない」と、どこかで思っていたのかもしれません。
Cさんの話に、ただ頷き、ただ共感するだけの5分間。
とても長い時間に思えました。
「いやあ〜!あったまった!!よかったよ!上がろう!」
目に寂しさを浮かべながら、でも笑顔は多分本心で、両手でグッと上半身を持ち上げていました。
人間を超えて、
生き物を超えて、
肉体を超えて、
命を超えて、
心を超えて、
魂に触れられたように感じました。
僕よりも50歳以上年上だけど、なぜかこの言葉が頭に浮かびました。
「生まれてきてくれてありがとう」
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感じる。
この感覚をたくさんくださったお三方に感謝したいと思います。
終わり。