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【奈良県三宅町町長の声をレポート#1】 複業人材を登用した官民連携プロジェクト。 新しい地方創生の形とは。

2020年12月8日「奈良県三宅町複業プロジェクト」の記者会見が行われました。株式会社Another works(@works_another)と奈良県三宅町は、複業人材を登用した官民連携での地方創生のロールモデルとなることを目指し、10月より人材募集を開始。「DXアドバイザー」「人事・採用戦略アドバイザー」「広報戦略アドバイザー」の3職種で7名が選出され、3月末までプロジェクトを遂行。

森田町長自ら挑戦を始めたプロジェクトですが、「驚いた」と話すその理由とは。複業メンバーの選考の裏側から、生の声をレポートします!

※本記事は、このプロジェクトに広報推進担当として登用された複業メンバーが森田町長へインタビューを行なった内容です。

▼奈良県三宅町町長 森田浩司氏(@miyake_cho_cho

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複業メンバー7名の熱量に驚き

―いよいよプロジェクトが始まりましたね。7名全員とのミーティング、各チームでのミーティングが終わり、どんなことを感じていますか?

正直、期待以上ですね。皆さんとても前向きで「一緒に頑張ろう」という気持ちを強く感じます。

記者会見(※掲載メディアはページ下記に記載)が行われる前にメンバーで顔合わせを行ったんです。昔からの顔なじみかと疑いたくなるほど、全員がお互いのキャラクターが分かっていて、役割分担ができている空気感でしたね。皆さんお仕事をやられながら取り組むプロジェクトにも関わらず、出てくる意見は本気度が高いものばかり。自分たちで何かを生み出そうというエネルギーを感じました。


―ありがとうございます。プロフェッショナルなメンバーが集まっていることを感じますね。メンバーを選出するために、およそ100名の応募人数から選考されたと伺いました。

書類選考では「思い」の部分を大切にしていました。通過者が決まったあと、一人ひとりと面談をしました。6名を選出するつもりでしたが、プロジェクトマネージャーである佐野さん(@taishokugaku)と面談をした際、「この人にはプロジェクトマネージャーをしてもらいたい」と直感的に思いまして。背景も経験も様々、個性的なメンバーが集まるメンバーを一つに繋ぐためには、絶対に佐野さんが必要だと感じたんですよね。なので、最終的にはプロジェクトメンバーは7名となりました。メンバーが決定した時点で、このチームであれば上手くいくだろう、と想像していましたが、ミーティングを重ねるごとに確信に変わっていきましたね。


―「思い」の部分が強いメンバーが集まったんですね。では、町長がこのプロジェクトを始めようと思った理由を教えてください!

多様化する住民のニーズに、行政だけで応えていくには限界がある。外部の力を借りたいけれどお金がない。多くの自治体が抱える問題を、三宅町も抱えていました。

あと、私自身、町長になってから組織のマネジメントをするようになり、組織を構成する「人」の育成の大切さを実感していました。一つのポジションで一つのことしかやらない、といった決められた働き方だけをしていても、その人自身が持つ本当の能力や可能性は発揮されません。もっと働き方を柔軟にすれば、人はパフォーマンスを最大化できるのではないか、と考えていて。

そんなとき、Another worksさんと出会いぜひ挑戦してみたい、と思いました。また、様々な働き方が求められる時代背景や、Another worksさんのサービスの将来性も感じ、今回のプロジェクトに取り組むことを決めました。

▼2020年12月8日 オンラインで行われた記者会見の様子

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職員の「働き方」に変化を起こし、行政組織に代謝を

―森田町長自身の働き方に対する柔軟な考え方も、今回取り組む理由の一つなんですね。職員さんの反応はいかがですか?

開始前、職員からは「また町長が変なことを言い出した」くらいに思われていたと思いますね。3か月の実証実験という形でのスタートですが、プロジェクトのゴールが明確には見えないために、実際の業務は何をしなければならないか、職員にも私にも漠然とした不安がありました。

Another works代表の大林さん(@obayashi_aw)にも実際に三宅町に来ていただきました。担当の職員へ丁寧にお話してくださったこともあって、職員からの目立った反対意見はありませんでしたね。


―プロジェクトのミーティングには、職員さんも参加されています。職員さんに変化はありますか?

最初は不安な顔を見せる職員が多かったので、自由にミーティングに参加してほしい、と伝えていました。ミーティングをするたびに「悩みを引き出してもらった」「指示をされるだけだと思っていたが、困っていることを一緒に考えてくれた」などと、とても前向きな感想をもらっています。

行政組織はどうしても、部署できちんと役割が決まっていて、部署間の関わりが少ないんです。人間関係が悪いわけではないのですが、悩みを持っていても抱え込んでしまう人が多くなる組織構造になっているのが現状です。しかし、ミーティングでは、プロジェクトメンバーが気さくに話を聞いてくれたりアドバイスをくれたりするので、職員たちは安心して信頼を寄せている様子です。

先日、DXのミーティングに何名かの職員とともに参加しました。30代前半の若手職員も同席しており、一人ずつに発言を求めたところ、全員が自分の意見を述べていたんです。これまであまり目立っていなかった若手の職員が、課題意識を明確に持っていることに驚きましたし、私も知らない問題が見えてきて、とても新鮮でしたね。


―プロジェクトが新しい風を吹き込み、組織の代謝が起こっているように感じます。なぜこのプロジェクトのスタートはうまく切れたのでしょうか?

プロジェクトメンバーと職員との間に利害関係がなく、対等な関係だからこそ、いいことも悪いこともフラットに話し合えているのではないかと思いますね。お金が発生するプロジェクトだと、上下関係がどうしても発生してしまい、お互いが頑張ろうという同じ気持ちになれない気がしています。

▼2021年には、三宅町でグローブの製造が開始され100周年を迎えます。

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官民連携の「うねり」が生んだ、他の自治体へのつながり

―本当に、「思い」の部分で繋がれている気がします。ところで、本プロジェクトはメディアからかなり注目を浴びていますよね。読売新聞や朝日新聞、日経ビジネスにも露出しています。これからどんな影響があると思いますか?

プロジェクトを通して「何ができるか」という不安より、「どう広がるか」に期待しています。これからの社会では、行政も民間も、お互いの働き方が変わっていくと思うんです。プロジェクトの動きがいろんな地域に広まれば、地域にいい人材が集まる、地域が元気になる、そのきっかけになると思います。

また、埼玉県の横瀬町でも、三宅町と同様にAnother worksを利用して、複業メンバーを募集しました。「複業」をきっかけに、横瀬町とのつながりができたんです。「官民連携」を越え、民間を通して自治体同士が繋がり「官民官連携」ができるようになれば、地域はますますおもしろくなる。連携を深め、メンバー同士が繋がりどんどん情報交換ができればいいな、と思います。


―思わぬ副産物が!三宅町だけではなく、他の自治体への広がりも期待できそうですね。今後プロジェクトで期待することを教えてください!

住民の幸せの「花」が咲くための「種」をまき「芽」が出るよう、今後も残る取り組みになるといいですね。

プロジェクトが始まり、官民連携の化学反応で、役場内への良い刺激が生み出されている感覚があります。住民のニーズが多様化する中では、複合的な働き方が、いい行政サービスを提供するキーになると感じています。行政が、チームで仕事をすること、新しいものを生み出すこと、仕事の組み立て方などをプロジェクトで学び、住民のサービスへの満足度を上げたいと考えています。

また、官民が融合することで、行政がより柔軟になるきっかけになってほしいと願っています。職員にとっての、「薬」になるか「毒」になるか、プロジェクトメンバーにかかっている気がしています(笑)。

プロジェクトを成功させるために、相互理解をとにかく進めたいです。お互いが持っている強みや不安をどんどん出し合って、全員が同じベクトルに向かっていきたい、と思いますね。日本で二番目に小さい町が起こす「うねり」に注目してほしいと思います。


編集後記
町長や職員の方々の心の中に起きている大きな「うねり」をリアルに感じることができ、心がとても揺さぶられました。これから複業メンバーと三宅町とが交わり生まれる「うねり」がどう変化していくのか、とても楽しみであり、身の引き締まる思いです。ありがとうございました!

【話し手=森田浩司(奈良県三宅町町長)/インタビュアー・執筆=宮武由佳(うどん県出身のライター)/編集=佐野創太(プロジェクトマネージャー・顧問編集者)/監修=三宅町複業メンバー一同】

【お問い合わせ先】
●三宅町 https://www.town.miyake.lg.jp/
●森田町長Twitter @miyake_cho_cho

【複業メンバー一同】
人事・採用戦略アドバイザー:3名
佐野創太氏(プロジェクトマネージャー) @taishokugaku
ひと・物・組織・新規事業の編集者/退職学の研究者。株式会社オーネットのオウンドメディア『おうね。』編集長、株式会社TRUSTDOCKの採用広報、yup株式会社のサービス編集長、桑原木材株式会社の端材を活用した新商品開発、複業をテーマとした電子書籍の編集長を務めている。退職学の研究者として「セルフ終身雇用」をAbema Primeなどで発表。1児の父であり、Covid19と出産をきっかけに妻の実家の長野と東京の二拠点生活中。

勝村泰久氏 @katsumura1123
音声Techのスタートアップにて、VPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、アライアンスや事業開発も担当。並行して東証一部で人事顧問、HRTechスタートアップでCCO、就活サービスベンチャーで戦略顧問、学校で講師、オンラインサロンを主催など7社で副業中で、パラレルキャリアにチャレンジしている。

安田翔氏 Facebook
大手人材会社で法人営業に従事。東京本社で採用・人事に5年間従事したのち、今年4月、大阪の法人営業部への異動をきっかけに奈良へ移住。副業で、奈良の企業と共に地域の人材育成事業の立ち上げにも携わっている。

DXアドバイザー:2名
安倍直希氏 Facebook
ベンチャー企業にて事業企画・営業企画・地方創生などの幅広い分野に携わりながら、DXプロジェクトなどにも従事。副業でDXプランナーとして活動中。様々な業界の課題に対して、データサイエンスを使ったDX企画立案を行なっている。

河上泰之氏 Facebook
トヨタ自動車様などの企業のDX支援や、東京商工会議所でDXなどの講師を務める。日本IBM、デロイトなどを経て独立。 IBMではデザイン思考チームの立上げに専門家として従事し、社内講師として数百名を育成。

広報戦略アドバイザー:2名
小林慎一郎氏 Facebook
プロデュースハウスSync Japan代表。渋谷駅街区再開発のマーケティング、NTTグループのコンテンツサービス事業、大手外食チェーンなどのアドバイザーなどに携わる。朝日放送にてテレビ編成から番組制作、新規事業に従事した後、独立。山梨県北杜市と渋谷区との二拠点で活動中。

宮武由佳氏 @udon_miyatake
地方、中小企業向けにデジタルマーケティング支援を展開する企業で、Web広告の運用コンサルティングや、自社採用サイトの編集を兼務。東京本社で、広報PRに1年半ほど従事。副業で、瀬戸内地域の雑誌『せとうちスタイル』やWebメディア『another life.』でインタビューやライティングを行なう。

【メディア掲載】(Webメディアのみ)
・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20201215-OYTNT50028/
・日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00215/121500008/
・夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/201225/ecn2012250004-n1.html


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