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終夜

いつも思考回路はいろんな道を辿っていて
汚らわしい感情も
言葉の型に流し込んでしまう前のぐちゃぐちゃした黒い塊も
丸ごとぜんぶを表してしまえたら
丸ごとぜんぶあなたにぶつけられたら
表現という名の暴力で殴ることができたら
どれだけ楽だろうと考えることがある
すべてを余すことなく目の前を通り過ぎていく人の隙間に埋めていくことができたら
たぶん私は濾過が済んだ水たまりの一部になって
誰かと誰かがどこかで愛し合っている途中で
上に向かって蒸発していくんだろう

誰かが死んだ夜は
視界に映るものすべてが嫌になるくらい綺麗で
冷たい空気を吸い込みながら
世界が輝いて見えることに悪態をついた
だってさんざん傷つけられたんだ
終わった瞬間に綺麗になるなんてずるいな
写真でずっと笑っているなんてずるいじゃないか
黒い額縁の中で写真が西日のせいで褪せたとしても
これからずっと笑っているんだろ

死がすべてを美しくするなら
生きていてくれよと思う
死だけが平等に与えられているなら
大切な人にだけ終わりがあればいいのに
そうなれば
世界が透明になったみたいに美しく見えるはずだ
そして私は何も手につかなくなって、
宝石みたいな涙が毎晩のように流れるはずだ


愛とか恋とか友情とか
そんな飽和しきった言葉は
いくらフォントを変えたところで意味は変わってくれない
この気持ちに意味なんていらないと思うよ
綺麗じゃなくていいよ
意味を持たせた途端この繋がりはありふれた関係になるんだよ
こんな悲しいことはないだろ
君たちだけでいい
私たちだけでいい









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