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燻らせる春

心や頭が何の整理もできず路頭に迷っているとき
皮肉にも私は創作活動に没頭できる
なんて苦しいやつなんだろう

私たちはいつだって元を辿れば
自分のことで頭がいっぱいだから
100%の自分を理解する他人なんて一人もいない
誰も私のことを知らない 
私は誰かのすべてを理解できない

それでもこれこそが自由なんだと笑う自分にいつか出会いたい
そんな私を愛したい この腕で愛していたい
終わりを待たずに、終わりへ急ぐように
ゆっくり生きるなんて 
あの日から無理だって決まっていたんでしょう

声に出してはいけないのだという感情があるのなら
それは大きな波から無数に弾け飛んだ
小さな粒の一つである私が抱えている

自分のことが嫌いだ 
嫌いだという私をこの世で一番愛するための
愛しい矛盾を抱えながら 眩しさに目を細めている

天井があること 底があることはとても安心で
そんなことさえどうでもいい 
誰かの必要ない筒抜けの何かに
私はいつも生かされていました



寒暖差も気圧の変化も、環境も大きく揺れ動く季節で
人の心はいとも簡単に左右される
私にとって春先は 暖かくて柔らかい雰囲気の中で惑わされながら
沼の底へ進んでいる気分になるもの

森に住まう動物のように
木々が芽吹くまでずっと冬眠していたい
死んだように眠っていたい
きっと目が覚めたら朝日も風も土の匂いも煩わしいなんて感じない
すべてが心地よくてたまらないと
空想を膨らませては風船のように空へ消える
寝癖を梳きながら
新しく処方された眠剤を飲んで眠る
そんな毎日です

気づけばアパートの近所に植えられた梅の木は
愛らしい花で少しずつ頬を染めはじめ
その隣にあった名も知らない大きな木は
鈍い機械音と共に切り倒されて
運ばれてゆく

この先工事中の看板と
見晴らしがよくなってしまった見慣れた景色を見て
私は死を思いました


どうですか
春はもうそこまで来ているのでしょうね


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