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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ… もっと読む
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2023年1月の記事一覧

AIが進化、冒険心は

 先日、札幌の道民活動センタービル「かでる2・7」でTOKYO FMの公開放送「未来授業」を道内の学生や社会人向けに行った。そのテーマはズバリ「人工知能(AI)ロボットはエベレストに登ったら喜ぶか?」というタイトルだった。  僕自身、原稿を書く際も駅の行き方を調べるにもスマートフォンが欠かせない。現代の生活にIT(情報技術)はなくてはならないものになった。少々ハードルが高いタイトルだと思ったが、その準備を始める過程で最近のAIの進歩に驚いた。  その一つが今年3月に韓国で行

ラジオ情報で天気図作成

 新谷暁生さんの知床エクスペディションに参加した僕たちグループは、知床の落合湾に上陸した。知床が世界自然遺産であるのは知床半島の山岳地帯と海の関係性がしっかり見られるからだという。実際に僕たちはそこまでたどり着くのに3日間、カラフトマスが大量に川に押し寄せる様子やヒグマがいたるところにいるのを見かけた。  沈み行く太陽を見ながらその日を振り返っていると、新谷さんがかなたにある水平線から湧き出る積乱雲を見て目を細めた。「ずいぶん大きな積乱雲だな」といいながら自分の天気図と見合

新谷さんと知床大遠征

 念願の新谷暁生さんの知床カヤックエクスペディションに参加した。新谷さんは父と旧知の仲で一流の登山家であり、シーカヤッカーである。  新谷さんの主催する知床エクスペディションは、エベレストがエクスペディションと呼ばれているのと同様に、まぎれもない大遠征であった。せかし自然遺産である知床半島、そのほとんどが文明と断絶された海岸線であり、そこで過ごすため7日間の食材、料理道具、テント、個人・共同装備をすべてカヤックに詰め込み自分たちの手で漕いだ。  初日、ウトロを出発し、最初の

無人島で培う生きる力

 夏休みの終わり、YMCA、サントリー、ミウラ・ドルフィンズが共同で開催する毎年恒例の余島アドベンチャーキャンプは小豆島の南西にある余島からカナディアンカヌー2艘接続して作ったカタマランを漕ぎ、9㌔先にある葛島と千振島に向かう。  葛島も千振島も無人島である。2日間過ごす無人島では衣、住、食の整備が生きるための生活原理となる。中でも食事を作るのは大仕事である。食材は持ち込みであるが、それでも全員で力を合わせないと作れない。初日のメニューは牛丼だ。かまどを作り、まきとなる流木を

認知症予防のために

 先日、父三浦雄一郎が厚生労働省から認知症サポーター大使に任命された。認知症サポーターは認知症について正しく理解し、認知症の人や家族に対し温かい目で見守る応援者になることを目的とする。  認知症の高齢者に優しい地域づくりと認知症サポーター養成に取り組む日英両国が連携して国際展開を推進、父は世界中に広報する役割を担うことに。  僕の親しい人達も認知症で苦しんでいる。思い立って厚労省の認知症サポーター養成講座を受けてきた。講師は群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学講座

ニセコブームの火付け役

 今年の夏休みを利用して、トレーニングを兼ねて北海道ニセコに行ってきた。その際、アウトドアプログラムセンターであるニセコアドベンチャーセンター(NAC)を訪ね家族とともにラフティングを楽しんできた。  NACの創設者はオーストラリア人のロス・フィンドレー氏。彼が日本に来たきっかけは、父、三浦雄一郎が行っていたスノードルフィン・スキースクールのインストラクターとしてであった。スキースクールに勤めて数年、ニセコの存在を知り、ニセコ連峰や羊蹄山が広がる広大な自然に魅せられる。このこ

カヤックのルーツ

 北海道・ニセコ雪崩調査所所長の新谷暁生さんに会いに行ってきた。新谷さんは登山家、スキーヤーでありながら海洋冒険家としての顔も持っている。  日本ではおそらく最も長く現役で知床のカヤックのガイドを行い、またカヤック発祥の地であるアリューシャン列島に幾度となく足を運び、そのルーツを探っている。先日も7度目のアリューシャン列島の旅を終えて帰ってきたばかり。僕は新谷さんの冒険談を聞きたくてうずうずしていた。  アリューシャン列島は米国のアラスカからロシアのカムチャツカまで1930

「青砥流」でスポーツ振興

 2年前、新潟県の観光特使に任命された。観光特使として新潟のウインタースポーツの活性化を図ることが僕の仕事ではないかと思い活動している。  新潟県はソチ五輪で3人のメダリストを輩出。こうした選手が活躍し続けることによって次世代が育つ「新潟ウインタースポーツサポート制度」を提案、地域と選手がつながるような活動をしている。  その一環で先週、村上市で講演した。村上市はソチ五輪スノーボード男子ハーフパイプ銀メダリスト平野歩夢選手の地元である。昨季も平野選手はエクストリームスポーツ

遊び続ける「才能」発見

 昨年、長男が小学校に上がったのをきっかけに多くの習い事をやらせた。合気道、体操、英悟、水泳、子供向け塾等だ。  息子も最初こそ、意気揚々とこなしていたが、数ヶ月もすると一つやめ、二つやめと長続きしない。自分の息子をこういうのもなんだが、とってもマイペース。興味のあるものには(たとえそれが毛虫が葉っぱを食べているところであっても)夢中になる半面、人の話を黙って聞くのが苦手である。  親として心配ではあるが、これも持って生まれた性格だと割り切り、思い切って週1回のアウトドアプロ

神隠し伝承残る屋久島

 屋久島は本当に不思議な島である。屋久杉と呼ばれる杉は樹齢千年を超える。通常の杉が樹齢500年程度だと考えると、驚くほどの長寿の杉だ。  また孤立した島であるのにシカやサルがいる。これらはヤクシカ、ヤクサルと呼ばれ九州のシカやサルの近種であるが、島は60キロも大隅半島と離れている。どうやってここまで来たのだろう。  しかし、やはり一番驚くのは、その山の深さだろう。周囲100キロ程のほぼ円形の屋久島、その沿岸をぐるりと囲むようにそびえ立つ山々は前岳と呼ばれる。島の中心近くには

宮之浦岳、記録も楽しむ

 先日、友人たちと日本南端の百名山、屋久島の宮之浦岳に登った。屋久島はほぼ円形に近く面積が504平方キロ㍍、その90%が森林と山岳地帯だ。その島の中心に宮之浦岳はある。  僕はこれまで屋久島縦走を含め3度、宮之浦岳に登った。毎回日の出前にスタートするが、最後は日が暮れる。宮之浦岳は〝長い〟という印象が強い。  山の特徴を知るために今回はセイコーから新発売されたプロスペック・アルピニストS830を持参した。この時計は登山用時計の新作で、これまでの基本機能(登行スピードや積算上昇