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ニセコブームの火付け役

2016年9月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 今年の夏休みを利用して、トレーニングを兼ねて北海道ニセコに行ってきた。その際、アウトドアプログラムセンターであるニセコアドベンチャーセンター(NAC)を訪ね家族とともにラフティングを楽しんできた。
 NACの創設者はオーストラリア人のロス・フィンドレー氏。彼が日本に来たきっかけは、父、三浦雄一郎が行っていたスノードルフィン・スキースクールのインストラクターとしてであった。スキースクールに勤めて数年、ニセコの存在を知り、ニセコ連峰や羊蹄山が広がる広大な自然に魅せられる。このころ知り合い、結婚した現在の奥さんとニセコに移り住み、これほど豊かな自然があるニセコで、通年アウトドアができないかと考えNACを設立した。

 時は1990年代半ば、ニセコは既にスキーリゾートとして知られてはいたが夏にはほとんど観光客が来なかった。ロスが最初に始めたのが尻別川を下るラフティング。ラフティングとは川下り用のゴムボート(ラフト)に乗り、激流や清流を複数の人と楽しむアクティビティー。
 このラフティングが注目を浴び始める。新聞やテレビで紹介され、当初はロスがガイド、奥さんがサポート、ラフト1台であったあったものが数年もたつと各地からアウトドア志向の若者がガイド志望として集まり、ラフトも十数台に増えた。このころ、実は僕も2年間、ラフティングのガイドとしてロスのもとで働いていたことがある。

 その後、ダッキー(1人用ラフト)、カヤック、マウンテンバイク、キャニオニング、インドアクライミング、トレイルラン、バックカントリースキーなど、次々とニセコのアウトドアフィールドを開発して、ニセコを一大、通年型アウトドアリゾートとして確立させた。さらにこうしたニセコのアウトドアの魅力を海外に示したのもロスの存在があったから。現在ニセコにインバウンドブームの流れを作ったのはNACとロスといっても過言ではない。
 事業家としてもアウトドア人としても成功したロスに将来を聞いてみると「日本は仕事がライフスタイルの中心にあるが、オーストラリアではライフスタイルのため仕事をする」という。まだまだアウトドアがライフスタイルの中に入る余地が少ない日本で、それを広げることを自分の仕事として捉えている。

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