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認知症予防のために

2016年9月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、父三浦雄一郎が厚生労働省から認知症サポーター大使に任命された。認知症サポーターは認知症について正しく理解し、認知症の人や家族に対し温かい目で見守る応援者になることを目的とする。
 認知症の高齢者に優しい地域づくりと認知症サポーター養成に取り組む日英両国が連携して国際展開を推進、父は世界中に広報する役割を担うことに。

 僕の親しい人達も認知症で苦しんでいる。思い立って厚労省の認知症サポーター養成講座を受けてきた。講師は群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学講座・山口晴保教授。
 現在、世界的に見て日本は最長寿国であるが、山口教授によると長寿に伴い増加してきたのが認知症で、統計では日本の高齢者の約半分は認知症になるという。認知症は記憶障害や認知機能の低下により日常生活に障害をもたらす。認知症の要因はいくつかあるが、その中で最も多いのがアルツハイマー型(アミロイドβと言うタンパク質が長期にわたって蓄積、脳細胞を壊死させる)である。
 こうした疾患により、記憶障害、見当識障害、理解・判断力障害、実行機能障害が起こり、性格や心理状態に影響、焦燥、不安、うつ状態、幻覚・妄想、暴力的になることすらある。
 このため健常者から見て普通のことでも認知症を患っている人には難しいことが多く発生する。例えば疑り深くなったり、トイレの場所がわからなくなったり、徘徊したりと言ったことが頻繁に起こる。

 これから日本人の高齢者の半数が直面する認知症の理解で大切なのは、症状を最も自覚し不安になっているのは認知症を患っている本人であると言うことだ。認知症による記憶違い、間違いを指摘、責めることはストレスとなり病状を進行させかねない。
 認知症サポーターとして、認知症の人への対応の心得に「3つのない」提唱している。①驚かせない②急がせない③自尊心を傷つけない。その際、何よりも大事なことは笑顔で接することだという。

 山口教授は、認知症予防のためにも地域のためにも、全ての人に運動と生きがいを持つことを提唱する。運動は脳の栄養物質である脳由来神経栄養因子を増やし、また生きがいを持つことで前向きに人生と捉えることができる。三浦雄一郎が「認知症サポーター大使」になった理由がわかったような気がする。

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