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遊び続ける「才能」発見

2016年7月2日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 昨年、長男が小学校に上がったのをきっかけに多くの習い事をやらせた。合気道、体操、英悟、水泳、子供向け塾等だ。
 息子も最初こそ、意気揚々とこなしていたが、数ヶ月もすると一つやめ、二つやめと長続きしない。自分の息子をこういうのもなんだが、とってもマイペース。興味のあるものには(たとえそれが毛虫が葉っぱを食べているところであっても)夢中になる半面、人の話を黙って聞くのが苦手である。
 親として心配ではあるが、これも持って生まれた性格だと割り切り、思い切って週1回のアウトドアプログラムのとびうおクラブ以外全部やめた。

 その代わりに今では毎日学校の友達が家に遊びにくる。ここでのルールは一つ、学校の宿題を先に済ませるということだけだ。
 子供は遊びの天才だ。あるもの何でも利用して遊ぶ。僕の家には天井から登山練習用のロープをつり下げているのだが、これをブランコにしたり、お互いにスイングを合わせて避けたりぶつかったり。さらにはアスレチックのように飛び移る。
 目の前が海なので最後は必ずといっていいほど海の中に入り、鬼ごっこや水かけファイトが始まる。先日、スタンドアップパドルボードを出すと、その上で相撲をとったり、誰がかっこよくボードから飛び降りるかを競い合ったり、ボードをばらばらにこいで自分の行きたいところに行く勝負をしたり、ルールは目まぐるしく変わるが、子供同士ではあうんの呼吸でそれが伝わり、新しい遊びが生まれる。

 5千組以上の双子比較研究を行った「双子の遺伝子」の著者、ティム・スペクターの見解によるとゴルフの天才と呼ばれるタイガー・ウッズと天才バイオリニスト、ヴァネッサ・メイの共通点は「10歳までにそれに1万時間以上費やしたこと」として、昔からある「才能か努力か」と言う問いに答えた。
 さてこうしたことを聞くと自分の子供も、と思うのが親心。しかし実際、子供を10歳になるまで一つのことに向かわせるのは並大抵ではない。その子供がよほど夢中になる「才能」があるか、教育的な親であればこそだろう。僕は親としてそれほど教育的でもない。しかし、長男もその友達も延々と遊び続けることができる「才能」を持っていることを発見した。その才能が何になるのか、楽しみではある。


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