人間の美しさは偽物である(短編小説)

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 人間の美しさは偽物である。
「人は、自分よりも美しいものに嫉妬する」と、誰かが言っていたように、自分の醜さを嫌というほど自覚している私は、他人が自分より美しくあることを妬むのである。
 私は、自分が醜いことをよく知っている。
 だから、私のような醜い者が、他人を羨んだり、その美しさを褒め称えたりする資格などないのだ。
 でも、それでもなお、私は、私の理想とする美しさを持つ者に、憧れてしまうのだ。
 私が本当に求めるのは、『美』ではないのかもしれない。
 それは、きっと、愛だ。
 私は、誰かに愛されたい。
 誰かを愛してみたい。
 だけど、私は、人を愛する方法を知らない。
 そして、私には、人を愛せない理由があった。
 なぜなら、私は、誰にも愛されないから。
 私は、人に憎まれているから。
 私は、人から嫌われているから。
 そう、私は、世界で一番、醜いのだから……。
 この物語は、私の自伝であり、小説です。
 これは、私の物語であって、決して、フィクションではありません。
 これは、ノンフィクションです。
 私は、子供の頃、両親に捨てられました。
 その後、ある施設で育ちましたが、そこでも、私は、みんなに嫌われていました。
 だから、私は、ずっと独りぼっちでした。
 学校に入って、友達ができたことがありましたが、みんな、私を嫌いになりました。
 私は、みんなを怒らせてしまいました。
 私は、みんなの怒りを鎮めるために、みんなに謝りました。
 私は、みんなに好かれるために、みんなに媚びへつらいました。
 でも、誰も、私のことを好きになってくれませんでした。
 私は、自分を偽って生きてきました。
 私は、他人に嫌われないように、いつも笑顔でいました。
 でも、誰も、本当の私を見てはくれません。
 みんな、私の外見だけしか見てくれません。
 みんなが私に求めているのは、笑顔という仮面を被った私なのです。
 私は、人の期待に応えるためだけに生きてきました。
 その結果、私の心には、大きな穴が開いてしまいました。
 どんなに頑張っても、誰も私を褒めてくれない。
 どんなに頑張っても、誰も私を叱ってくれない。
 どんなに頑張っても、誰も私を認めてくれなかった。
 そして、いつしか、私は、頑張ることを諦めてしまったのです。
 だから、私は、他人の評価なんて気にしなくなりました。
 他人からの賞賛や尊敬なんて、どうでもいい。
 だって、どうせ、誰も、私のことを理解してくれないんだから……。
 私が一番欲しかったものは、『愛情』でした。
 誰かに愛されたかった。
 誰かに必要とされたかった。
 誰かに褒められたかった。
 誰かに優しくされたかった。
 誰かに守ってもらいたかった。
 誰かに支えてほしかった。
 誰かにそばにいてほしかった。
 誰かと心を通わせたかった。
 誰かと一緒に笑い合いたかった。
 誰かと一緒に泣きたかった。
 誰かと一緒に喜びを共有したかった。
 誰かと一緒に悲しみを分かち合いたかった。
 誰かの特別になりたかった。
 他の誰でもない、たった一人の『私』という存在を、誰かに認めてほしかった。
 だけど、もう手遅れだった。
 私は、自分の殻に閉じこもってしまったから。
 私は、自分を表現することを恐れてしまったから。
 私は、自分が傷つくことに怯えてしまったから。
 もう、遅い。
 何もかもが遅すぎる。
 いくら努力しても、報われなかった。どれだけ頑張っても、誰も認めてくれない。
 そんな現実を突きつけられて、それでもなお、立ち上がれるほど、私は強くなかった。
 私は、弱い人間だ。
 私は、愚か者だ。
 私は、卑怯者だ。
 私は、臆病者だ。
 私は、裏切り者だ。
 私は、最低な人間だ。
 私は、生きている価値のない人間だ。
 私は、何の役にも立たないクズだ。
 私は、無価値なゴミだ。
 私は、何もできない無能だ。
 私は、生きる資格のない罪人だ。
 私は、誰からも愛されない怪物だ。
 私は、独りぼっちだ。
 私は、孤独だ。
 私は、不老不死だ。
 私は、永遠に生き続ける。
 私は、死ぬことができない。
 私は、死を恐れる必要がない。
 なぜなら、私は、死にたくても死ねないから。
 私は、死にたいと願っても、死ぬことができないから。
 私は、生きることに絶望している。
 私は、死んでしまいたいと望んでいる。
 だけど、自殺する勇気がない。
 自分で自分を殺す度胸もない。
 私は、本当に情けない人間だ。
 こんな人間、死んだ方がいいに決まっている。
 私は、生まれてきたこと自体が間違いだったんだ。
 でも、それでも、私は、生きていたいと思ってしまうんだ。
 私は、まだ、やり残したことがあるから。
 私は、まだ、叶えたい夢があるから。
 だから、私は、まだ、この世界にいたい。
 たとえ、それが、ただの幻想だとしても……。
 私が望むのは、ただ一つ、『希望』だけだ。
 この物語は、私の自伝であり、小説です。
 これは、私の物語であって、決して、フィクションではありません。
 これは、ノンフィクションです。
 だからどうした、という話ではあるけど。

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