魂について考える(短編小説)

魂は存在しない。
その理由は、僕たちは脳で感じるものを魂と呼んでいるからだ。
そして、その脳が魂として僕たちを人間たらしめている。
そもそも、魂とは何なのだろうか?
魂について考える。
肉体とは、脳によってコントロールされる単なる器だ。
それが魂と呼ばれるのなら、そこに宿る意識はなんなのか。
人間の意識はどこにあるのか?
答えは、わからない。
だけど、もし仮にこの肉体に宿る意識が、脳から発せられる電気信号に過ぎないのだとしたら……。
つまり、この肉体こそが、魂の正体なのだとしたら……。
僕の意識そのものが、脳というハードウェアに組み込まれたソフトウェアでしかないとしたら……。
だとすれば、魂なんてものは最初から存在しないことになる。
そんなものは、ただの幻想だとしたらなぜ、人は心を欲するのだろう?
自分の存在価値を、他人の評価でしか計れない人間は、なぜ他人との繋がりを求めるのだろうか?
あるいは、人と人との関係性を実感できない者は、どうやって心の安寧を得るのだろうか?
――いや、違う。
そうではないのだ。
きっと、それすらも、全ては脳というハードウェアが生み出すまやかしにすぎないのだ。
では、何をもってして、自分という存在を証明するのか?
記憶? 思い出?
それとも、もっと別の何かなのか?
いずれにせよ、今ここでいくら考えたところで、答えなど出るはずもない。
ならば、今はただ進むだけだ。
その先に、たとえどんな結末が待っていようとも、もう迷わない。
なぜなら、今の僕には、僕を僕たらしめる確かなものがあるのだから。
だから、恐れることは何もない。
僕は僕自身の意志で、一歩を踏み出していく。
その先にあるであろう、本当の未来へと――。

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