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レプリカだって、恋をする。(電撃文庫)ネタバレ感想

 16歳、夏。はじめての、青春。――第29回電撃小説大賞《大賞》受賞作。

あらすじ(※特設サイトから引用しました)

 具合が悪い日、面倒な日直の仕事がある日、定期テストの日……。彼女が学校に行くのが億劫な日に、私は呼び出される。
 愛川素直という少女の分身体、便利な身代わり、それが私。姿形は全く同じでも、性格はちょっと違うんだけど。
 自由に出歩くことはできない、明日の予定だって立てられない、オリジナルのために働くのが使命のレプリカ。
 だったはずなのに、恋をしてしまったんだ。
 好きになった彼に私のことを見分けてもらうために、髪型をハーフアップにした。
 学校をサボって、内緒で二人きりの遠足をした。そして、明日も、明後日も、その先も会う約束をした。
 名前も、体も、ぜんぶ借り物で、空っぽだったはずの私だけど――この恋心は、私だけのもの。
 海沿いの街で巻き起こる、とっても純粋で、ちょっぴり不思議な“はじめて”の青春ラブストーリー。

感想

 レプリカだからこその視点で描かれる純粋な青春ラブストーリーでした。
 女性主人公一人称視点って、少年向けライトノベルレーベルでは珍しいのでは、と思いました。
 綺麗で純粋な心を持つ彼女、ナオちゃんの心境文は、どこまでも美しかったです。
 もし自分が心境文を書いてしまうと、ちょっと穢れた文章が出てしまいます……なので、とても勉強になりました。
 少女漫画に近い部分があると感じました。
 ナオちゃんとアキくんの関係が羨ましく感じる……。
 読後感も、よかったです。

ネタバレ感想(※未読の方は注意!)

 電撃文庫では、たぶん珍しい女性主人公(レプリカ)の一人称小説(※時々、アキくん視点の文章が入っています)。
 実はナオちゃんにとってのヒーローである真田秋也くんもレプリカだったのは意外に感じました。
 オリジナルの真田秋也くんは、バスケ部の早瀬先輩に暴力されたことが原因で足を怪我することになってしまいました。
 なので、オリジナル秋也くんは家に引きこもり、レプリカであるアキくんを生み出し、学校へ行かせていたのでした。
 タイトルの『レプリカだって、恋をする。』は、レプリカ同士が恋をする、という伏線だったのか、と感じました。
 個人的にはレプリカとオリジナルの恋が見たい気持ちもあったのですが、レプリカだからこその恋愛関係があっても、それはそれで美しさが増すのかな、と思いました。
 今作ではレプリカがなぜ生まれるのか、ということに関しては説明されません。
 でも、説明が次巻でも明かされなくてもいいかな、と思いました。
 説明文が多くなりすぎると文章が冗長になる可能性がありますからね。
 レプリカはオリジナルの痛みを共有する複製品だった、という情報があり、ほぼ人間と同じ存在(バイオロイドみたいな感じですかね……?)なのですが、オリジナルの意志で簡単に消すことができるという設定が、レプリカの存在意義を揺らがす原因となっているのかな、と思いました。
 今作の敵である早瀬先輩が、とんでもない人物でした。
 真田秋也くんへの暴力行為にとどまらず、電車が通るプラットホームにナオちゃんを落とすという描写があり、早瀬先輩は、どこまでも今作で最大の敵でした。
 早瀬先輩が電車に轢かれて亡くなったと思っていたナオちゃんに対して小物みたいにビビる描写がとてもよかったです。
 ナオちゃんが無事だったのは、よかったのですが、電車に轢かれて判明した伏線でレプリカはオリジナルが存在する限り、死ぬことはなく、もし事故で亡くなりそうになったとしても、蘇ることができる、という設定がありました。
 事故死したのが原因でナオちゃんは自分の意志で海で死のうとしますが、そこはナオちゃんのヒーローであるアキくんに救われるのでした。
 最後の場面のアキくんは、なかなかグイグイとしていて少女漫画のヒーローでしたよ。
 りっちゃんも、いいキャラしていてよかったです。癒やし系でした。
 オリジナルの愛川素直は、冒頭を読んだときは嫌なキャラなのかな、と思ったのですが、彼女は彼女で悩みがあって、ちゃんと共感できるキャラになっていてよかったです。
 昔の文学作品の描写と本作が重なる部分があり、うまく調和されていたと思いました。
 次巻があるのか気になりますが、もし次巻が出たら購入しようかな、と思います。
 ということで、『レプリカだって、恋をする。』のネタバレ感想でした。
 拙い感想でしたが、ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

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