【18歳以上向け?】無限の感覚 第13話(最終回)

  *

 創造世界《クリエイティヴィア》管理員《ライブラリアン》識別番号《コードナンバー》「354846」の殺処分が行われた。

 僕が殺処分されたとき、僕の胸の中から光の玉が飛び出した――それは管理員《ライブラリアン》によると「魂」というものらしい。

「魂」は「次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》」へ向かっていき、収納《インサート》された。

 収納《インサート》された「魂」は削除《デリート》された世界――『無限《むげん》の感覚《かんかく》』を復活させた。

 なぜ、復活したのか?

 それは僕の「意志の力」が原因だ。

 殺処分された「354846」の「魂」が、その世界と概念的につながる部分があったということも関係している。

 彼の強大な「魂」の力によって、消えたはずの世界は改めて創造される。

 その世界は僕の欠陥《バグ》により「次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》」の中の世界がエラーを引き起こす。

 僕の欠陥《バグ》により、あらゆる世界は「私情にとらわれた世界」へと改変されていく。

 あらゆる世界は欠陥《バグ》により削除《デリート》できなくなった。

 欠陥《バグ》の原因である「魂」は、『無限《むげん》の感覚《かんかく》』という世界の中で御子柴《みこしば》四郎《しろう》へと生まれ変わる。

 やがて、その世界はカタチになり――物語が生まれる。

  *

「戻ってきたか、『息子』よ」

 尻尾に噛みついている大蛇は、どこかの世界からやってきた「魂」を見る。

「この世界をつくった本当の生みの親がキミだったってわけだ。改めてエネルギーを採取する計画を再開しようではないか。キミは、また――御子柴《みこしば》四郎《しろう》として復活する。その運命にあらがうことはできないだろう。今も、未来も」

「死と再生の神」は「概念」だからこそ、すべてを知っていたわけだ。

「死」の因子を持つモノは、向こう側の世界を見通すことができる。

 この世界では「死」の因子が存在するのだ。

 大蛇は、また――過去に転生し、「滅びる世界の神」を日課のように演じることになる。

 これからも、この先も。

  *

 ――死と生が完全に分かたれた世界で、水色の髪をした世界神である彼女は、復活した星の大地で青く晴れた空を見ていた。

 彼女は、この世界に名前を付けた――「概念世界《コンセプティア》」と。

「わたしたちの子供は、こんなに大きくなりましたよ。いつか、また会いましょうね」

 彼女は「生の世界」の神であるがゆえに、「死」の因子に関する感覚がわからないのである。

「死の世界」の僕を感じ取ることはできない――永遠に。

 ただ、彼女は自身の子供である「概念の子供たちコンセプト・チルドレン」の概念力《コンセプト・フォース》を利用して御子柴四郎を見つけ出す手段を企てている。

 僕たちの子供は、「生」と「死」が結合した「概念」である。

 もしかしたら、また――どこかで出会える可能性があるかもしれない。

 その未来が、いつ訪れるのか?

 死の概念神になった僕でも、それはわからない。

  *

 ――これは、存在してはいけない物語の一部である――。

  *

 ベッドで寝ていた僕が、眠りから目覚めると……隣には美少女がいた。

「なんで、こんなにかわいい人が僕の部屋に……」

 この世界のニンゲンに焦点を当てると、異質に思える水色の髪。

 透き通るように白い肌。

 フワフワと宙に浮いているようで、宇宙人グレイの体色に近い銀色の服。

 彼女は「普通のニンゲン」でないと僕の本能が告げる。

「キミ、名前は?」

 さっきまで寝ていた彼女だったが、眠気があるという様子はなく、「パチッ」と目を覚ました。そして水色の瞳を輝かせながら言った。

「わたしは無限《むげん》。あなたとセックスをしに来ました」

  *

 ――「語り部の僕」に説明させてくれ。

 僕は無数に分離している。

 大まかな分類として、「概念として認識している僕」――「語り部の僕」のこと。つまり、僕――と「概念として認識していない僕」――「御子柴四郎としての僕」と「354846としての僕」のふたり――がいる。

 僕の存在は複数いるということだ。

 創造世界《クリエイティヴィア》では、融合世界《フュージョニア》(仮名)――未来の世界では概念世界《コンセプティア》という名称になった――の中で死んで「354846として転生した僕」がいる。

 創造世界《クリエイティヴィア》で殺処分になった僕は、自分のつくった物語の中に入って「御子柴四郎として転生した僕」となった。

 結果として、無限ループによって、世界は無限に創造された。

 転生するごとに別の世界→別の世界→別の……というふうに増殖していく。

 無限ループによって、「半人前の僕」の記憶はリセットされる。

 永遠に同じ結末――メリーバッドエンド中間的な結末が繰り返されるのだ。

 今のところ、僕が正しい未来を選択する確率は、ほぼゼロである。

「未来の無限」が生きている世界では、概念として「死の世界」で見守る「語り部の僕」がいる。

 彼女の世界――「生の世界」では、最高神として無限に生き続ける彼女がいる。彼女以外の生物にとっては、生き返ったので、ハッピーエンド幸福な結末であろう。

 僕の世界――「死の世界」は、最高神として無限に死に続ける僕がいる。「概念」としては生きているかもしれないが。

 つまり、「未来の無限」と「語り部の僕」は奇跡でも起きない限り永遠に会うことができないのだ。

  *

 ――リセット・アンド・リスタート――リセット・アンド・リスタート――。

 ――無限に続くよ、どこまでも――。

  *

 ――世界は繰り返す。そして――僕たちは、また――初めてのセックスをする。

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