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面白い本・好きな本|ユーラシア大陸 雄大な大地が綴る、壮麗なる文明史[文明の生態史観+風土]

飽き飽きするほど、秋が好き

もちろんいい意味で。夏になった瞬間から、秋はまだかと心待ちにしてしまう。そんな自分にうんざりしてしまうほど秋が好き、という意味で。

来週からいよいよ10月。紅葉狩りまで、あともう少し。日本の四季を慈しむ。

舞台はユーラシア大陸。

大陸の気候風土文明の歴史をまとめた良書として『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』がとても有名。

でも、梅棹忠夫の『文明の生態史観』と和辻哲郎の『風土』を併読すると、ユーラシアへの理解がさらに深まりおもしろい。

-雄大な大地が綴る、壮麗なる文明史-


日本は温帯で、四季がある

熱帯、乾燥帯、温帯、冷帯、寒帯、大きく5つある区分の中でも、温帯は人間が一番過ごしやすいところ。西欧も同じく温帯で、それぞれユーラシア大陸の両端にある。

ユーラシア大陸の略図|ほぼ点対称

VIVANTをユーラシア大陸で考える

ユーラシア大陸の中央には砂漠が広がる。TVドラマ『VIVANT』の舞台になった『バルカ共和国』もこのエリア。

ユーラシア大陸はほぼ点対称

西アジアの火種が「エルサレム」にあるように、東アジアの火種が「バルカ」にあると地政学的?にも読み取れる。つくり手がどこまで計算しているかわからないけど、とても面白い共通点。


西洋と東洋の間に中洋あり

梅棹忠夫は、東洋と西洋の間に広がる大きな範囲を「中洋」と名付ける。東洋と西洋の比較では世界はなにも見えてこない。中洋への理解が足りないという。

中央にあるのは砂漠遊牧民。その周辺にかつて発達したのが古代の文明社会。社会の教科書でお馴染みの黄河文明インダス文明、そして古代ギリシャ古代ローマ。遊牧民の暴力に対して、文明社会は巨大な専制帝国で対抗する。

東欧東南アジアも点対称
エルサレムバルカも点対称

対して、日本西欧はユーラシア大陸の端っこに位置する。中央の暴力が及ぶことなく、隣接する地域から文明を導入し、独自の発展を遂げ、世界を制する。が、成長は鈍化し、翳りも見え始める。

2050年、GDP世界一・二位が中国とインドに
2070年、イスラム教は世界一の信者数を誇る
今まさに、現実に起こっているロシアの戦争

中洋西・東洋中洋 と世界の中心が大きな時代のうねりの中で、波のように繰り返す。

まわるまわるよ、時代はまわる

参考文献

1956|文明の生態史観|梅棹忠夫

ユーラシア大陸を歴史・文明・生活様式から
2つの地域「第一地域・第二地域」に分類

「第一地域」
東の端と西の端。日本と西欧。
中緯度温帯。適度の雨量。高い土地の生産力。

古代文明の発源地にならなかったが、はしっこのため中央の暴力がおよぶことがなかった。そして、第二地域から文明を導入し、封建制、絶対主義、革命をへて、資本主義による高度近代文明をもつ地域。


「第二地域」
東と西にはさまれた全大陸。
4つの文明圏(中国・インド・ロシア・イスラム)

乾燥地帯。乾燥から生まれる人間は激しい破壊力を示す。建設と破壊を繰り返し成熟しない。古代文明はすべてこの地域に発生し、封建制を発展させる事なく、巨大な専制帝国をつくり、第一地域の植民地となりようやく近代化のみちをたどろうとしている地域。


1935|風土|和辻哲郎

ユーラシア大陸を民族・文化・特質から
3つの類型「モンスーン・砂漠・牧場」に分類


「砂漠」
本質は乾燥である。

乾燥は水をもとめる生活である。草地や泉は人間の争いの種となる。争うために団結する。団結するためには全体意志への服従が必要となる。

砂漠的人間は戦闘的・服従的性格を得る。砂漠における自然は死である。生は人間のみに存在する。従って神は人格神となる。イスラムである。


「牧場」
湿潤と乾燥との総合である。
夏の乾燥と冬の湿潤は雑草を駆逐して、農作の脅威である雑草と害虫の駆除が必要ない。自然は人間に対して従順となる。自然と戦う必要がないから、冒険、征服、権力へと向かう。

自然が従順であるのみならず奴隷的従順へと向かう。従順・制圧できることから合理的・統一的傾向が産まれる。統一的・普遍的教会としてカトリック教会がヨーロッパを支配する。


「モンスーン」

本質は湿潤である。
大雨・暴風・洪水・干ばつという自然の暴威が人間に襲いかかる一方、草木は生い茂り動物は繁栄する。

人と自然との関係は忍耐的・受容的となる。自然であらゆる生命が生まれる。日、月、空、風、森、動物...あらゆる自然は神秘性ゆえに神化される。多数の神々が自然の中で生まれる事になる。


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