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言葉を変える 行動が変わる

少し言い方を変えるとガラリと印象が変わった!という経験、皆さんあると思います。

実際には同じことを言っているのになんだか違って見える、いわゆる「フレーミング効果」というやつです。

このピザを2枚購入すると、半額!
このピザを2枚購入すると、2枚目無料!

どちらも支払い金額は同じだけど、「無料!」と言われた方がなんだかお得な気がしてくる。

もはや当たり前のように毎日触れているこの原理、もちろん教育の現場でもたくさん起こっていることなのです。

今日はそんな、言葉と印象のお話です。


人は「印象」で動く


毎日たくさんの方とお話していると、言葉には、文章の前後関係がどうであれ"その単語がもつ特有の印象"というものがあるなと、そして、その印象に引っ張られて意思決定をすることが多いなと実感します。

先程のピザの例でいうところの「半額」「無料」の部分です。

前半部分を読めばどちらも同じ価格だということはすぐに分かるのだけれど、「半額」→半分/「無料」→ゼロ という印象に引っ張られて、なんとなく「無料」の方がお得な気がして買ってしまうということです。

なぜこのようなことが起きてしまうのかを考えたとき、ポイントになるのは「考えれば分かるのだけれど」というところだったりします。

人間の身体や脳は、できるだけ省エネモードで生活する!というのが基本設定になっています。

動かなくてもいいのなら、動かない選択肢をとるし
考えなくていいのなら、考えない選択肢をとるということです。

動かなくていいのに謎に動きまくっていたり、考えなくてもいいことを真剣に考えていたら、消費エネルギーがとんでもないことになってしまいます。

(だから「これくらいのこと、ちょっと考えれば分かるでしょ!」と怒っている人を見かけると「考えればね…でも考えてないからね…」と思ってしまう)(余談でした)

つまり人は、あまり深く考えることなく、なんとなくの印象でパッ!と判断することが多いということですね。


言葉が与える影響


人はあまり考えずに動くということを前提としたとき、気になるのは、毎日よく使っている言葉です。

よく使う言葉=よく受ける印象

よく使う言葉があるということは、日常の中で何度も何度もくり返し受けている印象があるということです。

それが良い影響を与えている言葉ならば問題ないのですが、良くない影響を与えているとすれば、少し考えてみる余地はありそうです。

口癖を変えると人生が変わる、というやつですね。

ちなみに学校現場で、私が個人的に、この言葉はどうなのかなと思う言葉は「指導」です。(以下、あくまで私の印象です)

「指導」というと、"上から下へ"とか"間違いを正す"という印象を受けます。"強さ"とか"正しさ"みたいなものが前面に出るイメージ。

でもこの「指導」、英語にすると「ガイダンス」なんですよね。

「ガイダンス」といわれると、一気に印象が変わってきます。"広く伝える"とか"情報を与える"というような(私的には)「指導」よりも水平的なイメージが出てきます。

例えば子どもが何か問題を起こした時、
「指導しましょう」と言うのと
「ガイダンスしましょう」と言うのとでは
子どもへの接し方が変わるのではないかなと。

あくまで私の勝手なイメージなのですが、試してみる価値はあるような…(でもやっぱり、私の勝手なイメージです)


言葉で印象を変えた実例


言葉を変えて印象を変えた例というのはたくさんあるのですが、教員をしていた時にとても印象的だったエピソードがあるので、今回はそちらをご紹介します。

行事の際にリーダーを募って、そのリーダーたちに練習を取り仕切ってもらうことがあります。

そんな時によく見かける光景に、私はずっと疑問を抱いていました。

それは「がんばって練習してほしい」と願うリーダーたちの思いと相反する言動の(つまり練習をがんばらない)メンバーに対して、リーダーが「指導」をするという光景です。

普通じゃんって思いますよね?

でも、真面目にやらないから「立ち位置は一番前」とか、おしゃべりするから「みんなから離れて1人でいろ」とか、一生懸命歌っていないから「1人で歌ってみろ」とか…

それ、あなた(リーダー)はやるの?と思うような、リーダー自身もやりたくないし、絶対やらないようなことを、メンバーに強要する。
そしてその「指導」こそが僕たちの仕事です!というような雰囲気。

それは、価値観の合わないメンバーへの嫌がらせのような、「指導」という名の「制裁」のようにも見えました。

音楽科だった私は、合唱コンクールの時期になると、全校のリーダーたちを見ていたのですが、その異様な雰囲気は、特定のクラスが…とか、特定のあの子が…ということではなく、どのクラスからも、どの学年からも発されていました。

「合唱の時期はもめ事が起きる」いろんな先生から聞きました。

私は「こんなことしてたら、そりゃもめるでしょ…」と思っていました。

特定のクラスや特定のリーダーの問題でないのなら、きっともっと根本的な策があるはず…と、私はいろいろなことを試しました。

リーダーが練習時に困らないだけの材料を渡したり
合唱上達へのステップを示して見通しをもたせたり
リーダーが集える場をつくったり…

その中の1つが"言葉を変える"でした。

具体的には、リーダーの仕事内容(の伝え方)を変えました。

これまでリーダーは「指導」を任されていました。
任されたところで音楽的な素養があるわけでも、集団を動かすスキルがあるわけでもなかったリーダーたちは、仕方なく、力で押さえるという手法を取っていたのではないか、と考えたのです。

でもこれ、普段授業をされている先生方はよくお分かりだと思うのですが、場がぐちゃぐちゃに荒れた後でなんとかしようとするのは、良い手とは言えないんですよね。

練習を良いものにしたいのならば、必要なのは事前の準備です。

リーダーに「事前の準備が大事よ」と言うのではなく(それも時々は言うけれど)、リーダーたちが自ら「よし、準備しよう!」と思う方法は何か。

考えた末、私はリーダーに「指導」を任せることをやめました。

私がリーダーに任せたのは、練習の「デザイン」
(「ガイダンス」じゃないんかい!という突っ込み、分かります…)(でもここはひとつ「デザイン」で…)

練習がこれだけあるから、この部分を「デザイン」してほしい。

と伝えると、リーダーたちの会話は自然と事前準備に向き始めました。

練習の流れはどうするとか、内容はどうするとか、こんなことが起きたらどう対応するとか。

あぁ、あの異様な雰囲気は「指導」のイメージから来ていたんだな…と実感した瞬間でした。


まとめ


エピソードが長くなってしまいました。
今回は、言葉を変えると印象が変わるというお話でした。

人は省エネモードで動く生き物です。
深く考えることなく、印象だけでパッと判断することが多い。

だからこそ、私たちが当たり前に使っている言葉も、少し変化させてみると行動が変わるかもしれません。

皆さんが気になっている現象は何ですか?

その現象は、どんな言葉と共に出現していますか?


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