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「先生とケンカした」

「アイツ"先生とケンカした"って言いやがった」
「"ケンカ"ってなんや!?」
「ナメた態度とりやがって!」

小学校高学年で少し、中学校で度々
こんな怒りの声に出会います。


先生から指導を受けたことを
「先生とケンカした」と表現する子ども。

「指導」を「ケンカ」と表現するなんて
先生を友だちだとでも思っとるんか!と怒る大人。


でも多くの場合、「ケンカ」と表現することに
深い意味はないんです。


なにが「ケンカ」や!
自分がしたこと分かっとらんだろ!

と次の指導を入れる前に
少しだけ続きを読んでいただけると嬉しいです。





「ケンカ」という表現


「先生とケンカした」という言葉を聞いて、
大人が最も感じるのは
先生とあなたとは対等な立場ではないよ
ということなのではないでしょうか。

現に、この点に怒っている方に多く出会います。


次によく出会うのは、
自分に非があるから指導されているのに
認めていないに違いない。
だからあえて「指導」という言葉は使わず
「ケンカ」と表現しているのではないかということ。


つまり「ケンカ」という表現を使うということは

①先生を対等な立場だと思っている(ナメている)
②自分の非を認めていない(だから「指導された」と言わない)

という意味だと捉えることができるということです。


でも経験上、多くの場合
子どもにそんな意図はありません。

大人がいうところの「指導」を
受けたと思っている子がほとんどです。

ではなぜそれを「指導」ではなく
「ケンカ」と表現するのか。


年齢を少し下げて考えると見えてきます。


例えば、小学校低学年の子に
「担任の先生には"良くしてもらってる"よね」
などと言っても
子どもはポカンとするばかりです。


これは、こんなに手をかけているのに自分が「良くしてもらっている」と思っていないからではなく、


「良くしてもらう」という概念がよく分かっていないからだということは、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。


良くしてもらっているかどうか、気にかけてもらっているかどうかを知りたい時は、

「担任の先生と"仲良し"なん?」です。


担任の先生とは「仲良し」で
でもこの前「ケンカ」して
今日「仲直り」した。

子どもには、こんな表現がよく伝わります。


つまり子どもが「先生とケンカ」という表現を使うというのは、ほとんどの場合、先生をナメているからでも、自分の非を認めていないからでもなく

「指導」と「ケンカ」の区別がいまひとつよく分かっていない、表現を適切に使い分けることができない状態だといえます。





言葉を正さないのかという疑問

先生に対して「仲良し」「ケンカ」「仲直り」などという言葉を使うなんて。言葉を正さないのか!?

という疑問の声を
先生方や保護者から時々いただきます。

言葉を教えていくこともちろん大事なことです。
ぜひ、違いを教えてあげてほしいと思いますし、
私も可能であれば教えています。


ただ私の場合、仕事柄、子どもが安定した状態にない時にお話しすることがほとんどなので、子どもの言葉に合わせにいくことが多いです。


正しい言葉を覚えさせることが目的ではない場合が多いということです。


例えば、生徒指導を行う際には
聞き取りと指導を同時に行わない
というのが鉄則ですよね。

全部聞き取った後で、指導を行います。


仮に聞き取っている途中で、逐一、言葉の誤りを訂正してしまえば、おそらく深いところまで十分に聞き取ることは困難になります。


今、この話の目的は何なのかを考えながら、適宜、正しい言葉を教えていってあげてください。





言葉から見えるもの

「ケンカ」と「指導」の区別もつかないなんて。
まったくもう、けしからん!

と片付けるのはちょっと待ってください。


注目すべきは、こういった言葉を使う子どもの
頭の中はどんな世界になっているのか
なのではないでしょうか。

説明しますね。


私たちは生まれた時、まだ言語を操りません。

それが様々な経験を通して
言語を獲得していきます。


例えば、4本足の生き物を「わんわん」と覚える。

4本足=わんわん
というような枠組みのことをシェマといいます。


大型犬と小型犬は見た目がちっとも似ていないけれど、これらも同じ「わんわん」だと教わることで

「わんわん」というシェマに、大きさの違う犬たちが取り込まれていきます。(同化といいます)


ところが、同じく4本足だから「わんわん」だと思ったら、それは「わんわん」ではなく「ねこ」だと教わります。


4本足=わんわん だと思っていたけれど
4本足には「ねこ」も存在していることを学習します。(調整といいます)


こうして経験学習を重ねて、私たちは4本足の生き物を犬・猫・馬・カエル・鹿・ライオンなどなどを瞬時に見分けられるようになっていきます。



さて、話を戻します。

「先生とケンカ」をいつまでも使っているということは、先ほどの枠組みがまだまだざっくりとしている状態であることが予想されます。


ということは、です。


「ケンカ」以外の言葉や概念においても
枠組みが適切に調整(細分化)されていない可能性が
高いといえますよね。


これ、トラブルの元です。


例えば「犬」と「猫」の見分けがつかなかったとします。


猫が通りがかったのを見て「犬がおる!」
猫の目撃談を尋ねても「猫?…見てない」
周囲から見れば、この子はウソつきです。


先生が、保護者が指導をする
「猫を見た時は…」「猫というのは…」
どんなに言っても通じない可能性大です。
だって「猫」を認識してないのだから。


なんとなくお分かりいただけるでしょうか。


「ケンカ」「指導」以外の言葉も
誤って使っている可能性があり

区別がついていないことが原因で
トラブルになっている可能性や

大人からの話も入っていない可能性がある
ということです。




まとめ

「先生とケンカした」という言葉には
特段の意図がないことがほとんどです。


大人をナメていること
自分の非を認めていないことを
アピールするために
あえて「ケンカ」という表現を
使っているわけではありません。


ただ、言葉の枠組みが適切に
調整(細分化)されていないのだとしたら
それが原因で様々なトラブルを
抱えている可能性があります。

あなたがこれまでにしてきた話
何がどの程度理解できているのか
確認しておくと良いかもしれません。


正しい表現を獲得していくことは
重要なことです。

今、この話の目的は何なのかを考えながら
適宜、正しい言葉を教えていってあげてください。


今回は「先生とケンカした」と言った途端に
ものすごい勢いで怒られていた子たちも見て
わざとじゃないのに…と感じていた日々を
ふと思い出したので書いてみました。



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