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ビッグアイズ 黒い穴

人は弱いからなのか、なんなのか、避けても逃げても同じ失敗を繰り返してしまう。気付かない内に前と同じ穴に落ちている。

『ビッグアイズ』2014年アメリカ制作。ティム・バートン監督。エイミー・アダムス、クリストフ・ワルツ主演。1960年代アート界で人気だったビッグアイズシリーズの作者が夫ウォルターではなく妻マーガレットだったという実話を映画化。

以降ネタバレ。
自らもビッグアイズのコレクターであると言うティム・バートン監督。監督らしい50年代風のカラフルな住宅街の風景。鮮やかなエメラルド色の車で、暴力夫の留守中に娘と2人して逃げ出すマーガレット。

新天地で得意の絵の仕事に就き、娘と2人で暮らしていこうとするが、母子家庭の不安から、同じく絵を描く社交的な男性ウォルターと直ぐに結婚してしまう。

彼女の才能に着目していた彼は、初めは都合上、妻の作品を自分の作品だと偽って販売。けれど彼の社交性とメディアを巻き込んだ戦略、プレゼンテーション力でどんどん売れていく作品と利益拡大。彼女は彼のやり方に違和感を感じながらも、黙ってゴーストペインターとして絵を描き続けるしかなかった。愛娘や親友、世間を騙してまでも。

そんな彼女も遂に、彼の横暴なやり方に耐えきれず、娘を連れ車で逃走する日がやってくる。そして自分こそがビッグアイズシリーズの作者であると裁判で証明する。

 映画内で使用される絵画は、全て本物で作者のマーガレットの監修もあるのだろう、制作過程の絵もあり、作家の描き方がよくわかる。ビッグアイズは、先ず黒塗りした目に瞳の輝きを描き入れていくのだが、両眼が黒塗りまたは、片眼が黒目の時の不気味さは、当時の作者の心の不安定さと作風の陰鬱さと相まって、非常に暗く深い穴に思えた。
 
”目は口ほどに物を言う”

黒い穴。自分の力に自信が持てず、夫の横暴なやり方に従うしかない、惰性に流されて、遂には周りから隔離されたかのような穴蔵生活。そんな穴に一度のみならず2度まで落ちた彼女。優しいけ依存的で内向的な彼女は結局、我慢ばかり重ねていた。

そして私は彼女に自分を重ねる。ついつい愛したものに依存してしまう癖は、自分にも思い当たる節がある。
 
自立した自分でありたいと思っているのに、
好きな人が出来ると相手のことを思うだけで、時間が経ち、何にも手につかなくなる。
相手に依存的で、そぞろ浮ついた自分になってしまうのだ。

自分自身に言い聞かせる。
「そこに大きな黒い穴があいている。はまり込む前に立ち止まって考えろ!」
「人を愛することと、自分に自信を持って活動することは両立できるのだ!」
「自分の甘さ、弱さ、軽さに打ち勝て!」
「私は二度と同じ穴に入らない!」

ポッカリ開いた黒い穴は、私をじっと、見つめている気がする。






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