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ひとつ2,000円!? 秋冬の贅沢おやつ「堂上蜂屋柿」

俳句と暮らす vol.21

岐阜の里山の恵み、最高級干柿「堂上蜂屋柿」

秋になると必ず食べたくなる、私の大好きなおやつがあります。
それが、「干柿」です。

フレッシュな柿も大好きですが、干柿は別格のおいしさ。
自然の甘みがぎゅっと凝縮されたあの味、独特のねっとりとした食感は、ついいくつも手が伸びてしまう、この時季ならではのごちそうです。

「干柿」は秋の季語です。
岐阜生まれ・岐阜育ちの私にとって、柿はとても身近な果物。
実家にも隣家にも柿の木があり、家の近くに大きな柿畑があったり、軒先で柿を干している家が見えたりと、まさに「秋冬の風物詩」というイメージがとても強い果実です。

子どもの頃から干柿が好きだった私が、大人になってから出会って衝撃を受けたのが、今回紹介する、岐阜・美濃加茂産の「堂上蜂屋柿」。
最上級ランクのものだと、なんと1個あたり2,000円もする、最高級干柿です。
(ランクはいろいろで、1個800円ほどで購入できるものもありますよ!)

まず驚くのが、「本当に干柿なの?」とびっくりするほどの大きさと、ずっしり感。
「丸ごとかじるのではなく、縦に割いて食べるのがおすすめ」とのことで、そっと半分に、そのまた半分に…と割いていくと、キラキラと輝く飴色の果肉が顔を出してくれます。

ひと口目で、その濃密な甘さとなめらかな舌触りに感動。
とろんとした口当たり、驚くほどの甘みと、噛むほどに口の中にじんわりと広がっていく果実由来のジューシーさがもう、たまりません。

最初こそ価格にびっくりしましたが、この味を知ってしまったら「そのお金を払っても絶対毎年食べたい!」と素直に思えるほどの、感動的な体験でした。


1000年前から変わらない味、伝統の技法

「堂上蜂屋柿」とは、岐阜県美濃加茂市蜂屋地区を中心に栽培されている「堂上蜂屋」という品種の渋柿を原料とした干柿で、伝統の技法、熟練の経験を持つ職人たちによって作られたものだけがそう呼ばれています。

平安時代に、美濃国(現在の岐阜県南部)から朝廷へ献上した記録が残っている、とても歴史ある干柿。
「堂上」という称号は、朝廷への昇殿が許されたものだけに与えられた、とても名誉ある地位でした。

源頼朝や織田信長、秀吉や家康といった時の権力者たちから親しまれてきたそうです。
1000年前と今、同じ製法でつくられたものを味わっている奇跡。まるで、タイムスリップしているような気分です。


ひと枝に1個だけ残す、独特の栽培法

美濃加茂市蜂屋地区は、真冬でも晴天率が高く、それでいて適度に降雨もあるため、柿の栽培に適した地域です。
夜になると気温がグッと下がるため、糖度の高い柿が実ります。柿の栽培や干柿の加工に適しているこの地域で、1000年前から同じ伝統的な方法でつくられているのです。

毎年、夏になると、蜂屋柿の「摘果」が行われます。
堂上蜂屋柿は、1本の枝から1個の柿だけを選び、そのほかの蕾や実をすべて取り除いてしまう、というから驚きです。

ひと枝にたった1個だけ残すので、もちろん収穫数はぐんと減りますが、ほかを切り落として育てることで、その1つにだけ栄養を集中させることができます。
大きさは、通常の柿の1.4倍ほど。重さは350g前後にもなる超大玉の柿が育つのです。


手作業による、歴史ある伝統製法

大切に大切に育てられた蜂屋柿は、丸というより少し四角くて、先の尖った独特のかたち。11月に入ると収穫され、少し柔らかくなるまで追熟させてから、いよいよ皮剥きです。

蜂屋柿のかたちを生かして口当たりの良い干柿にするため、皮むきは機械ではなくすべて手作業で、一つひとつ丁寧に剥かれています。
皮を剥いたら、ヘタに紐をかけて吊るし、まずはかげ干し。
その後、天日干しでじっくりと甘い干柿をつくっていきます。


毎日毎日手をかけて、じっくり天日干し

すべての柿に日光と風が当たるよう、一日に何度も向きを変えながら干していきます。
天気や湿度を見つつ、柿の向きを変えたり、雨が降ってきたらすぐに取り込めるように、毎日つきっきりで柿を育てていきます。

ただ干しておくだけではなく、熟練の職人による「手揉み」作業も行われています。
これは、果肉の内側に水分が残らないよう、柿を優しく揉んで整形していく技法。この「手揉み」があることで、あの濃い飴色の、甘くてジューシーな果肉ができあがるのです。

陽の光を受ける柿たちを見守りながら、表を向けたり、裏を向けたり。
ひとつずつ、指の感覚で柿の柔らかさを確かめながら、優しく揉んだりと、何日も繰り返される地道な作業。
1000年経った今も機械化・効率化することなく、昔からずっとこの製法でつくられてきたことを実感する、秋の美濃加茂の風物詩です。

加工の終盤には、稲わらで作った、干柿専用のほうき「ニオボウキ」で、柿の表面を一つずつやさしく掃いていきます。
これにより、上品な白い粉をまとった「堂上蜂屋柿」が完成するのです。

決して目を離すことなく、まるで我が子を育てるような眼差しで、丹精込めて加工されてゆく「堂上蜂屋柿」。
口に入れた瞬間に驚く、その上品な甘み。その糖度は、ジャムや羊羹ほどの「65度」ほどを誇ります。

毎年、12月1日の8時30分から、オンラインストア「ぎふ JAめぐみのマルシェ」と、電話受付で、購入の受付を開始しています。

また、現在、この伝統技法を擬似体験できるクラウドファンディングも実施中。
リターンには、最高級ランクの木箱入り堂上蜂屋柿のほか、自宅で干柿にチャレンジできる、クラファンだけの特別セットもあります!

干柿好きな人はもちろん、これまであまり馴染みがなかったという人にこそ、ぜひ一度食べてほしい、岐阜の里山の、自慢の逸品です。

暮らしの一句

干柿に表も裏もないように 麻衣子

【季語解説】干柿(秋)
渋柿の皮を剥いて、串に刺したり吊るしたりして乾燥させた「干柿」。「甘干」や「釣柿」とも呼ばれます。
干された柿は水分が抜けて、やがて表面に白い粉を吹き始め、ぐんと甘くなります。古くから甘味の代表で、重宝されてきた干柿。名句もたくさん残っています。
今回は、干柿を手で揉んだり、向きを変えたりして丹精込めてつくっている堂上蜂屋柿の職人さんたちに、敬意を表した一句です。

堂上蜂屋柿
美濃加茂市堂上蜂屋柿振興会
岐阜県美濃加茂市蜂屋町上蜂屋6-1
URL:https://www.hachiyagaki.jp/