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おひとりサマ奮闘記

『ひとりの気楽さはわかるけどもね』

 けども……なんだ!含みを持たせるんじゃない!

 旅先で送られてきた父からのメッセージに憤りを感じる。激怒、したわけである。

 山梨は甲府にきている。生まれて初めての一人旅だ。

 一人旅を選んだのは、気楽だからに他ならない。気楽さに流されたいのは、私が弱いからなのだろうか。誰かと予定を組んで、2日も一緒にいるなんて耐えられそうにない。

 以前、一度だけ友人と旅行はしたことがある。浅い眠りのなかで、ぼんやりとしたまどろみを貪った私はいつも以上にどっと疲れてしまった。その友人とは、彼女の結婚を機に疎遠になってしまったし、ある種トラウマのようなものすら感じる。

何事も、ほどほどってやつがいいのかもしれない。喪失感にも耐えられそうにないし。

 最近、父の送ってくるメッセージに拳を振り上げたくなる私がいる。なぁんか、鼻についてしまうのだ。自分はファザコンだと長年思っていたのだけれど、どうやら違うみたい。

 最近の私は、父と言葉を交わしている間胸がざわざわと音を立てる。どうする?どうする?と、小さな声が頭に響く。

「うちの父さんたら、何も分かってないんだから!」

 そんなことを言う年齢でも、むき出しにするほど子供でもないから必死に振り払って、なんでもないふりをする。

 たぶん、遅れてきた反抗……いや、思春期だろう。一般的に遅いと言われようが、そこは私。どこまでもマイペースを貫くしかない。

 しかし、独りを否定されるのはいただけない。

 ボーイフレンドの一人でも連れ帰ってほしいという父の性、心配というべきなのかもしれないが、近ごろ私が一人で遊びまわっているのがとにかく気になるらしいのだ。

 映画、ショッピング、最近出かけたのはこれくらいか。

 しかし、最近のショッピングの目的といえば退職する上司へのプレゼント探しである。これを会社に関係のない友人と探すのは不自然だろう。だからといって、休みの日まで同僚と会いたくはない。だって、疲れがとれなさそうだし。

 映画に関しては、朝一で見に行く予定だったから、誰かと約束をしてしまうと自分が寝坊したときや相手が遅れてきた時のストレスが凄まじいものになりそうだった。前日は送別会もあって、私も帰りが遅かったし、ちゃんと起きれるか不安だったのだ。

自分の不手際で誰かに八つ当たりするのはいただけないし、被害は最小限にとどめておきたい。それだけのことなのだ。

 それに、今月はなんだかんだ誰かと過ごす約束が2件もある。来月だって、友人とちょっと遠出をする予定だ。どう考えても、孤独とはかけ離れていると思う。

 父は、とにかく一方の面のみで判断しすぎなのではないかと思う。私が父に多くを話さないことも心配の種の一つになっているのかもしれない。しかし、父は基本的に何を投げてもリアクションが薄い。メッセージを送ってもまともに返事が返ってこないのに、頻繁に連絡する理由はないだろう。メッセージの壁打ちほど、むなしいものはない。

 昨年の夏、仕事を始めたばかりの私が頑なに弱音を吐かないことに対して、親なんだから言って欲しいと非難めいたことを言われたけれど、言われたくない言葉だってある。

親だからこそ言われたくないこともあるし、誰からもこれだけは言われたくないというものがある。

それを言いそうだなぁ、この人……と予想できるのだから、弱音は吐きたくなかった。言うわけがないだろう。気分屋であることを自覚しているからこそ、自分が嫌な気分になることはなるだけ避けたい。自衛だ。

 怒って諭すように話す父に、気持ちのやり場がなくなり号泣する娘を前にして母は特に何も言わなかった。母にはこまめに連絡していたし、親としての不安もわかるから口を出しにくかったのかもしれない。

 言いたいことも言えず、キャパオーバーのすえ4時間ほど号泣した私は、10年来の付き合いのある友人たちとの予定を断ったことで少しだけ落ち着いた。

長い付き合いの上で受け入れてきた関係がぐずぐずになってしまっていたことも、私を不安定にする一因だったからこれはこれで良かったのかもしれない。ある意味、父のちょっと面倒な一言は関係を断つためのいい起爆剤となったといえる。

 こればかりは、少しだけ父の心配性に感謝しなければならないだろう。

 仕事に関しては、自分の選んだことで愚痴を言うのはやはりおかしいと思ってしまう。

特に気を張っていた、1年目の夏はそれこそ不満を言うなんてありえないと思っていた。やりたくて選んだ仕事に、ぐちゃぐちゃ不満を言うのは私の理想の大人のあるべき姿ではないである。

 だからこそ、愚痴を言ってもいいという父の言葉は優しいけれど、なんて私を理解していないのだ!と絶望したのかもしれない。でも、詳しく話すことを私は放棄していたのだから、私にも非があることは否めない。

 父への反抗は、やはり17歳までには終わらせておくべきだった。二十歳も超えて父に反抗するとなると、自分の中でも決着がつきにくいことが多い。

 マイペースなんていう言葉はいいものに見えるが、ある程度タイミングを見計らうべきだっただろう。

 遅すぎる(長すぎる?)思春期で、私は今日もモヤモヤを募らせるのだ。

 かといって、独りで動き回ることはやめるつもりはない。誰かと一緒じゃないと……なんていう、甘っちょろいことをいう年齢でもなくなってきているのだから。そこは、父にも理解と妥協を覚えてもらいたいところだ。

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久しぶりの更新……。ぼちぼち書いてはいましたが、なかなか一つのものとしてまとまらず。ようやく、息抜きによって言葉がたぎる!という感じに笑

サークルの創作活動は、一応さぼらずに頑張っていました!

公式サイトは以下からどうぞ!

「花筐」→https://mishika-hanagatami.tumblr.com/

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