【詩】爺ちゃん

折り曲がった千円札
古いコインケースにねじこんで
お腹がすいても
パンすら買うのを躊躇するのに

私が会いに行ったらさ
「お小遣いあげよう」
っていってクシャクシャになった
千円札をくれた爺ちゃん

私を見ると
抜けた歯をニッと見せて
笑ってくれた

その晩
爺ちゃんは亡くなった

爺ちゃんの葬式の日
爺ちゃんの周りには
いつも人なんていなかったのにさ
たくさん知らない人が集まってびっくりしたよ

爺ちゃん
元気してるか？
夢でたまに爺ちゃんを見るよ

クシャクシャになった千円札
あれなんで私にくれたの

栄養失調で亡くなった爺ちゃん
あの時の千円で
パン買って食べたら
亡くならずに済んだんじゃないの？

今でもずっとそればっかり
考えちゃうんだよ

爺ちゃん
天国でまた会おうな
まだそっちにはいけないけど

そっちに行ったら
一緒にパン食べてコーラ飲んで
いっぱい話そ

「爺ちゃんみたいに歯が溶けるぞぉ」
って脅してあまり飲ませてくれなかった
コーラ

たらふく一緒に飲も
お酒は私
飲まないから
コーラで許してね

爺ちゃん
今は寂しいかもだけど
まだそっちには行けないから
もう少し待ってて

クシャクシャになった千円札
何倍にもして返すから
楽しみにしてて

「ご飯食べないとだめじゃん」
その台詞も言わないとだから

爺ちゃん
また笑ってくれよな

【詩】爺ちゃん
作:前川咲紀　写真:稲垣純也
(おしまい)

見出し画像は稲垣純也様にお借りしました。綺麗な緑のお写真です。爺ちゃんがいびきかいてお昼寝してそうな素敵な場所ですね！天国みたいなキラキラした優しさも感じる素晴らしいお写真です。

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最後まで読んでくださってありがとうございました。今日の詩は爺ちゃんの世界観全開です。いままでとテイストを変えた文書を書いたので公開するのが手が震えます。

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