旅する私のお気に入りのブックカフェ
ブックカフェが好き。本を読むのが好きだし、コーヒーを飲むのも好き。静かな空間が好きだし、ひとりの時間が好き。
こころゆくままに本を楽しむ時間
ブックカフェ、ここでは厳密な細かな定義は設けずに「カフェという空間でありながら本を読める場所」ということにする。
こういう空間は、必ずと言っていいほど静かである。むしろ「話す目的でのご来店は遠慮しています」と書かれていることも。私はその表現を見るたびに、ほっとする。「本をこころゆくまで楽しんで良いんだな」、と。
けれど、日々の生活に追われていると「こころゆくまで本を楽しむ時間」をないがしろにしてしまうことがある。必要に迫られない、完全なる余白の時間だから。それが悔しくて、でも目の前にはやるべき仕事や生活が連なっていて、結局「全然本を読む時間が確保できていない」と落ち込んでしまう。
そんなときに私が駆け込むのが、ブックカフェだ。「本を読む」という時間をいってしまえば強制的に確保してくれる存在。ブックカフェに駆け込めば、せめてその時間だけでもこころゆくままに本の虫になれるのだ。
ブックカフェでは、自由に本を読む。読みたい本を持って行くこともあれば、店内に並ぶ本との何気ない出会いを楽しむこともある。なんとなくぴんときた背表紙を選んで、何の前情報もない本を読んでみたりもする。
きっと、私はこの自由さが好きなんだと思う。大好きなコーヒーを飲みながら、そのときの私自身の気分に合わせて、セレクトされている本を選ぶこと。そして、スマホもパソコンも見ずに、ただただ本の世界に没頭すること。
”気分に合わせて”が鍵だ。落ち込んでいるときには軽やかなエッセイが読みたくなるし、失恋したときには同じような失恋が描かれた恋愛小説が読みたくなる。前向きな気分のときにはさらに背中を押してくれるような力強い物語が読みたくなるし、言葉そのものを味わいたいときには哲学的な本も読みたくなる。
そう、こんな感じで、本棚に並ぶ数々の本のなかから私自身の”いまの気持ち”に合わせてワクワクするような気持ちで本を選ぶ、そして読む、そのシンプルな流れが好きなのかもしれない。
ブックカフェにひとりの時間を見つける
それともうひとつ、私にとってブックカフェがかけがえのない存在という理由がある。それは、ブックカフェにひとりの時間を見つけているから。
ブックカフェに来ているひとは、たいてい1人で来ている人が多い。それぞれがそれぞれの席に着いて、コーヒーを注文して、あとは各々が本を探しに店内を巡るか鞄の中から自分の本を取り出して、ひたすらに本を読む。あの、ちょっと猫背になりながらも懸命に文字を追っているひとたちの姿を見るのが好き。
そして、そういうひとたちを見ていると、なぜだか”ひとりじゃない”と思いながらひとりの時間を過ごせるのだ。
たとえば、ふつうのカフェだと、友人同士で話をするための時間を過ごすひとが多いと思う。私自身も友人に会うときには気になるカフェに行って時間を過ごすことが多い。けれど、その空間に”ひとりの私”がいるとどうしても孤独を感じてしまうのだ。人の気配を感じれば感じるほど”ひとりでいる私”は孤独に感じてしまう。
それがブックカフェであればどれだけ人がいたとしても”ひとりでいていい”と思わせてくれる雰囲気がある。ひとりでいていい、ひとりの時間を過ごしてもいい、じっくりと自分と向き合える、そんな空間。
そんな空間で本を読んだり、ときにはぼーっとしたりしながら、ただただ時間を過ごす。そんな単純さで好きな時間を過ごしていたい。
日本各地を旅する私のお気に入りのブックカフェ
言い忘れていたが、私はいま日本全国を家を持たずに旅しながら暮らす、多拠点生活をしている。もともとカフェ巡りが大好きなので、旅先でも気になるカフェをチェックして、実際に足を運んでいる。
ただ、旅先での滞在先が共同生活になるため、完全なる”ひとりの時間”が欲しいと途端に感じることがある。
そんなときに駆け込むのが、旅先のブックカフェだ。ここでは最後に日本各地を旅する私のお気に入りのブックカフェをお伝えしたい。
【神戸】ink BOOKS & COFFEE
六甲駅から山の方へ登っていく坂の途中にある「ink BOOKS & COFFEE」さん。神戸大学の学生が運営や内装に関わっているそうで、店内には勉強したり読書したりする学生もちらほら。
店内の本棚には小説から雑誌、エッセイまで幅広い本がずらりと並んでいて。この空間を見ているだけで癒やされてしまうほど、とっても居心地の良い空間。コーヒーもたっぷりで本をじっくりと読むのにぴったり。
せわしない日常に、ゆっくりとしたひと時を
こんなコンセプトで日々のちょっとした時間に余白を設けて自分の好きなことができる時間があると、日々の充実度はぐっと上がる気がするなあ。
【京都】本と珈琲 喫茶ゆかりや
京都の路地にたたずむ「本と珈琲 喫茶ゆかりや」さん。築100年の古民家を改装されていて、外観も店内も落ち着いた雰囲気。本当に静かな空間で、ひとりで来ているお客さんばかりで、せわしない外の世界が嘘のよう。
小説が中心に並んでいて、静かなこともあり1冊まるっと読了。集中して読む場所と時間があれば、ここまで本の世界に入り込めるんだ、と感動した覚えがある。
自家焙煎のコーヒーが飲めるのも魅力。本を読み進めているとついコーヒーが冷めてしまうけれど、冷めてしまってもおいしい、しっかりとした味のコーヒーでした。
【京都】古書と茶房 ことばのはおと
京都でも古き良き雰囲気の残る西陣エリアにある「古書と茶房 ことばのはおと」さん。町家の雰囲気がとっても素敵で、ずっしりとした店構え。
私が訪れたのは雪の降り積もる特別寒い日だったのだけど、店内のストーブが揺らめく感じとぽつぽつという音、窓から見えるしとしとと降り続ける雪、古民家ならではのキンとする寒さ、なんだか五感でしっかりとその空間を記憶しているのが印象深い。
ランチプレートはひとつひとつ丁寧に盛られていて、本当においしかった。本を片手に、おいしいごはんを食べ、また本への視線を移す。丁寧に丁寧に食べて、言葉を追って、ふと外の景色に目を向ける。この繰り返しにじわじわと心が落ち着いていくのを感じて。本当にほっとする素敵な空間でした。
【福山】風の丘 Book&Cafe
広島県福山市の丘の上にある「風の丘 Book&Cafe」さん。カフェと本屋、エステサロン、事務所、ジムがそろう複合施設の中にあります。
名前のとおり、丘の上にたっていたので外のテラス席からは街並みが一望。訪れたのは10月の下旬。こんな気持ちの良い晴れた日のおともにはなにを読もうかな~とワクワクしたのを覚えています。
心地のよい風、揺らめく木漏れ日、金木犀のふわっとただよう甘い香り、そんな空気の中、コーヒーを飲みながら本を読む。これ以上の心地よさがあるだろうか。毎年秋になると思い出しそうな心地よさ。こんなささいな幸せを日々感じられたらなあ、と思える場所でした。
【名古屋】星屑珈琲
私が名古屋に住んでいたときにお気に入りだった「星屑珈琲」さん。本の背表紙が並ぶ席では、じっくりとコーヒーと本と、そして自分自身と向き合える雰囲気です。コロナの影響でながらく”おひとり専用”としているのもとてもいい。静かに、そっとしておいてほしいときに駆け込みたい、そんな場所。
全然関係ないけれど、店主さんの日々綴る文章がおもしろくて時に胸につんときて毎回楽しみにしている。そのなかでも最近心に響いた言葉を引用させていただく。(文章を読むと、本当に店主の方はお店を愛しているのだなあ、その空間が放つ雰囲気を大切にしているのだなあ、と伝わってきます)
この文章を読んでいるだけで、どんな店だろうとワクワクしませんか?
【岡山】カフェモヤウ
岡山市、古き良き街並みが残る出石町にある「カフェモヤウ」さん。ここはブックカフェではないのだけれども、「静かにする場所」と「お話しをする場所」にゆるっと分かれていて、静かにする場所には壁一面に本が並んでいます。(最初にどちらの空間がいいか聞かれました)勝手にこの空間を「読書室」と名付ける。
背中に所狭しと並ぶ本の存在を感じながらも、ふと前に目を向ければ、おおらかな川とキラキラの水面が見えて、少し遠ざかってみてみると、窓が額縁のようになって、景色が切り取られていった。完璧な、青空。
丁寧に盛られた日替わりのご飯は優しい味で、しんみり。ご飯をたっぷり味わったあと、吉本ばななさんのキッチンを読みました。
少し眩しい明るい光と、目の前に広がる景色、こだわりが感じられるご飯、そして時間の許す限り本の世界に没頭できる静寂な空間そのもの。こんな空間が近所にあったら間違いなく通ってしまう。
【静岡】電気読書座
静岡駅からほど近い場所にある「電気読書座」さん。店内には植物がたくさん置いてあり、太陽の光が思い切り差し込む、読書をするための空間。
本棚にはエッセイからミステリー、雑誌までなんでもそろっていて、そのなかから読む本を選ぶだけで楽しい、そんな場所。
本を読むのに疲れてきたらふと大きな窓から外の景色を眺める。道行く人の観察をしたりして。そして目が休まったらまた本へと視線を戻す。この単純な動作で時間が過ぎていくのが好きだなぁ。
”お話し目的の人はご遠慮しています”と、思い切り本を読むためだけに空間を作っているのが素敵。
日々を精一杯生き抜いたり仕事に没頭してみたりするのももちろん楽しいけれど。こんな感じで、人生の余白に、”本を読むだけの時間”をたくさん入れ込んでいきたいなぁ。
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