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【休日にカフェ難民になっているあなたへ】心を満たすチェーン店での過ごし方

「サンマルク」とは、フランス伝統菓子の名称だと初めて知った日。

お菓子の名がなぜそうなったのかは定かでないが、新約聖書「マルコによる福音書」で知られているSaint-Marc (聖マルク)から来ているのだとか。レシピもみっけた。

ケーキ屋さんでよくみかけるあの表面をバリっと焼きつけたフランスの伝統菓子。あの苦みばしった美味しさは大人にはたまりません。

サンマルク|キユーピー3分クッキング

新しいことを知るのは何ごとにも変えがたい喜び。些細なきっかけで湧き上がった知識欲は、心が納得するまで収まらない。人間に生まれたことに感謝したくなる貴重な瞬間だ。

名前の由来を知りたいと思えたのは、今日のカフェの環境が珍しく自分に合っていたからだと思う。
お店の入り口の対角線上、部屋の角の席を無意識に選んだ私は、その居心地のよさに感動した。8割方席が埋まっている都会のカフェにいながら、サバンナの高台の木の上に陣取った気分だ。

人より寄り目で、かつ視力が0.1以下で分厚い眼鏡をかけている私の視野は恐ろしく狭い。目は顔の正面に付いているのにゾウやキリンやハイエナの襲撃に怯えている子ライオンのごとく、自らの後方200度くらいに気を張り巡らせている私にとって、部屋のすみっこは数少ない平穏の地だ。

紅茶とロイヤルミルクティー、どちらにするか迷ったけれど、ロイヤルを選んだ。こういう選択は疎かにしてはならない。「本当はミルクティーにしたかったけど…」という90円の我慢は、確実に自尊心を削る。塵も積もれば山となるというが、その重さで谷ができる可能性もあるから気をつけたい。

レジ奥では、ブォーという音を立てて紅茶とミルクが融合させられている。ロイヤルにしてよかった。うむ。いい香り。

ひと口含むと、「甘くない」。これは意外な喜びだった。ほのかな甘みに癒しを感じるタイプの人間にとって、甘さ控えめでお願いしますと言わなくても、シンプルな味で出てくるのは有難い。
お好きな甘さでどうぞ、という姿勢には謙虚さまで感じる。甘さのレベルを変えられる点に無限の可能性を見出して、その自由に歓喜するのだ。

砂糖がいい感じに溶けたロイヤルミルクティー

デフォルトが無糖なら、砂糖をどう入れても怒られないはずだという謎の安心感もある。ガムシロップを2割5分ほど残し、絶妙なバランスで癒しの甘みを作り出した私は、適当に麺つゆを入れて作った親子丼が最高に美味しかったときと同じくらいの喜びを感じた。

チェーン店でここまで味に集中できるのは珍しい。決して空いているわけではないが、誰の会話も物音も気にならないのは、客層が落ち着いているということもあるだろうが、BGMの音量と照明の色温度のちょうどよさだと思う。

ミルクティに砂糖をかき混ぜたように、まわりの話し声もパソコンのタイプ音も、Jazzyなピアノと夕方5時の照明に溶かされていく。

嗚呼、思うとおりには進まない毎日、ミルクティーだけでも自分にぴったりの甘さにできる幸せよ。

空間づくりに関わったすべての人と、ミルクティーを淹れてくれたスタッフさんにありがとうを唱える。
東京というサバンナで、老若男女に安らぎを与えているカフェは、まさにオアシスであった。

気づいたら陽が沈んでいる。そろそろお暇する時間。サンマルクの材料を買って帰ろうか。


サンマルクカフェなどを運営する株式会社サンマルクホールディングスさんのウェブページには、社名の由来が以下のように説明されています。

SAINTMARC(サンマルク)由来
古代東方教会で修道についての著作を残した修道士サンマルク(聖マルク)に由来します。

企業情報|ベーカリーレストラン-サンマルク

サムネイルには、マサルさんの「紅茶に沼落ち」を使わせていただきました。ティーカップの形と模様が可愛くて、どこか近くて遠い、異国に訪れたような気持ちになります。

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