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詩『瑠璃色のたまご』

爽やかな薄い青空を干す
花が洗ったばかりの空を
たんまり吸い上げてゆく
移り変わる花びらのいろ
細かく千切れた雲の群れ
茎のなかから突く啄木鳥
鮮やかに焼けてゆく挨拶
赤く染まった風を羽織る

雲がのんびり、と泳いでゆく
無記名の伝言を読もうとする
羊やソフトクリームの形の雲
ゆっくり結合したり分離して
さまよっている不定形の魂よ
あおい果実の形はないかしら
匿名のリクエストを発射する
熟す未来を待ち焦がれながら
 
佳日の果実はもう熟したのか
てのひらで温めていたたまご
還らない帰れない孵らない魂
どこから来てどこへ行くのか
匿名の乗組員は名前を捨てた
胎内の家庭菜園でかぜを耕す
いつか青い水辺で縄を解いて
小さな船の帆が羽ばたく日に

瑠璃色の林檎を形作ったオブジェを出品した。林檎が赤いなんて、誰が決めた、いつ決めた、どこで決めた。地球色したママの母乳に、瑠璃色の林檎がかじりついているもの。展覧会が閉幕したあとに、瑠璃色の林檎を真っ二つに切断した。芯に差出人不明の手紙が挟まっていて、季節の空が降り注いだ。作家はアトリエで土の傘を差した。風を混ぜ込んで、土を捏ねてゆく。金木犀の香りを閉じこめたあかい風船がぱあん、と弾けた。ちいさいはながたくさん裂かれて、赤ん坊みたいに咲いているね。地球のママがかたちのない乳房を展開している。雲が輪郭を作って、大空のnotebookにことばを綴ってゆく。既成概念の器を壊して、あたらしい器を創造して、当たり前になったら、また壊してしまえ。生きたインスタレーション。作品はつねに成長している。詩がすっと立ち上がる。ポエジーが歩き出す。そういう詩が書きたい。だからその日まで、琴線を柔軟に張り巡らせておく。

女の子は赤、男の子は青、誰が決めた、いつ決めた、どこで決めた。青いネクタイを締めよう、Ladies!赤いスカートを履こう、Jentlemen!タブーなタトゥーを刻め。赤と青を交換しよう。あかいサングラスはあおいサングラスに、あおいサングラスはあかいサングラスへ。色とりどりのランドセルから、お気入りのカラーを選ぼう。What is your favorite color?True colorをつかみとるまで、いたずらっ子の囃し立てる声を搔き分けて、沈んでしまわないように、あっぷあっぷ、あっぷっぷ。いびつなあかい林檎の海を泳ぐ。黒いJokerみたいな腐った林檎に侵食されないように、気をつけてね。ときどき埋まっている瑠璃色のたまごみたいな新作オブジェを発掘するために、道なき道を行け。色や形や味や匂いは更新されつづけるものだから、いつか芳しい花の香りを漂わせるような詩を書きたい。美しい音色、琴線に触れて、青空から産み落とされるその日に。


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、ふうこさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾


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