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詩『森の入り口で会いましょう』

鋼の棘を呑む
鋼の棘を流しこむ
きみたちと対話することは 
棘の潜んだ最中を呑みこむこと
それでもやはり最中は甘い匂いを放つ

季節がある
どこまで削っても
掘りきれない季節がある
それを指は知っているのに
ちいさい刀は歩きつづけるもの

きみたちはいつまでも
眼球を結んでくれない
視線を逸らした赤信号だ
音楽の鳴らない遮断機だ
牙を隠したタイフーンだ
七色を紛失した虹の橋だ
時間を脱色した哺乳類だ

さんざ
さんざ
さんざめく鏡に照らされて
薄目でひかりの裏側を目撃する
第一発見者のぼくは逃げられない
事情聴取で再びライトを当てられる

嘘発見器にもかけられる
そもそも大地を泳ぐことが
嘘なのかもしれないのだ
生きているから
汗や涙の海にまみれて
嘘発見器に引っかかってしまった
嘘を呑んだんだろう

立体的な唇が詰問される

『生きている心拍数だけが真実だ』と叫んで
ぼくは首を吊る
あしたは切り揃えられてゆく麦畑
飛び抜けた成長株は歓迎されない

左向けひだりななめうえ
右向けみぎななめした
いち、に、さん、し、
いち、に、さん、し、
穂先を揃えて ピッピッピッピーッ

(お湯が沸きました)
(カップ麺に思想を注いで下さい)
(三分が経過しました)
(美味しく頂きましょう)

ザー、ザー、ザー、
海が絶えません
ザー、ザー、ザー
雨が止みません
ザー、ザー、ザー、
風が死にません

生きているから、恥をかきます、
恥をかくから、汗をかきます、
汗をかくから、黄ばみます、
黄ばむから、汚れます、
汚れるから、お風呂に入ります、
洗っても、洗っても、また汚れます、それが生きてゆくということ、

あおい静脈とあかい動脈が絡み合って
ふかい森を形成している
それを一本ずつ紐解いてゆく
一本ほどいて
またからんで
またほどいて 
やっとぜんぶほどけたら
いつかきみのいりぐちに
たどりつくかもしれない



photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、しのよしのさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

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