【対談】ひらさわたゆ×吉穂みらい ふたりでひとつの『Answer』~7つの質問とふたつのアンサー~
ひらさわたゆ×吉穂みらいのコラボ小説企画『Answer』をお読みいただきまして、誠にありがとうございます!
たゆさんの後日譚の後、はるかはいったいどうしたのでしょう。いろいろと想像がふくらみます。
「タクミはひどいヤツ。もう近づいちゃダメ」と思う方もいるでしょうし、「ちゃんと稼ぐようになって自分に自信がもてたらイイ人になってるかも」と思う方もいるかもしれませんね。皆さまのご想像にお任せしたいと思います。
本日は、みらっちが「ひらさわたゆ」さんと「吉穂みらい」をお招きして、対談と言う形で制作秘話などをうかがっていきたいと思います。
パチパチパチパチ。
ではまず、軽くふたりのご紹介から。
ひらさわたゆさんのこと
毎日投稿を5年以上続けているスーパーnoter「たゆ・たうひと」さんのペンネームです。毎日投稿を5年。なかなかできることじゃありません!!尊敬のひとことです。その間、創作も多数発表されています。
「たゆ・たうひと」さんと「ひらさわたゆ」さんのページはこちらです。
吉穂みらいのこと
note3年生の「みらっち」が昨年春から始めた創作アカウントが「吉穂みらい」です。kindle本を作ったり文庫本を作ったり、神保町で本屋をしたりしいます。
「みらっち」のページと「吉穂みらい」のページはこちらです。
さて、今日の【対談】は、お互いに出しあって作った質問7つに、それぞれが答えていく形で、小説を作る時に活用した「下書き共有機能」でやり取りしました。さらにそれをみらっちが取りまとめる方式を取っております。
トップ画像は、たゆさんの愛犬と吉穂の愛犬をイメージしています。
では、ふたりの語るコラボ小説制作秘話、ぜひお楽しみください!
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過去と未来を手帳が繋ぐ、というアイディアはどうやって思いつきましたか?
吉穂(以下吉):最初は『君の名は。』みたいにまだ知り合っていない主人公がそれぞれいて、最終的に出会うといった話とか、交換日記形式はどうだろうとか、色々案があったのですが、たゆさんが『シグナル』というドラマを教えてくださって。韓国発、日本リメイクの作品で「トランシーバーで過去と現在の人が交信して事件を解決するんです」と言う言葉に、急いで『シグナル』を配信で観ました。すごく面白くて。それの、事件版ではないハートフルなものはどうだろう、ということで、じゃあ何で繋がる?となり、いろいろアイディアをだしているうちに、手帳に行きつきました。
ひらさわ(以下ひ):そうそう『シグナル』。自分で言っといてなんなんですが、途中からすっかり忘れて遠ざかっていった。笑
どんなものを書きたいか…という話の中で、みらいさんから「交換日記」というワードが出て、そこから過去と未来で文通する的な案を出したかと思います。そこで『シグナル』が浮かんだんだけど、最初は「冷蔵庫にメモが貼ってある」案から出発しましたね。この案ももったいないな~と思っていて、だからタクミの漫画のネタにさせていただきました。最終話に苦戦したわたしはある意味この案には助けられました。
吉:あ!この、冷蔵庫に貼ったメモ案は、実はMarmaladeさんの掌編がとても印象に残っていて、こういう風にやりとりするのって面白いな、と思ってたからなんです。
Marmaladeさんのおかげ、とも言えますね。笑。Marmaladeさん、思いがけないところからのお礼になりますが、ありがとうございます✨
ひ:なるほど!これは面白いですね。続きが気になります!わたしたちの小説もそんなふうに思っていただけたらいいですね。
作品を書いていて、工夫したところや苦労したところはどこですか?
ひ:最初は「過去」のはるかの方が書きやすいかな~って思っていたのですが、実際書き始めたら、わたしはむしろ「過去」は書けなかったなって途中で気づいて。
パートを決める際、みらいさんがたたき台を書いてくれていて、過去の手帳を振り返る時の参考にさせていただきました。『逃げ恥』の部分はほぼパクリです(^-^; だからわたしはあまり苦労はしてないかも?
みらいさんパートでタクミをいじる感じでダメっぷりが出ていたので、わたしの方は美咲をいじりました。他人の家に上がり込んでおいて自分のお土産捨ててみたり、よその夫婦が気になる…と首突っ込んでみたり、脇役なのに暴走しかけて、だから最終話に時間がかかってしまった。全員の問題を解決して終了したいと思っていたので、サークルの会合部分も入れたのですが、これがちょっとはるかとタクミのストーリーの邪魔になるような気がしていて、前後編にするか悩んで、最終的に番外編という形で昇華させていただきました。
吉:私のパートは2016年、「過去」の部分でした。27歳で社会人になって3、4年。充分大人なんですが、でも少し子供っぽい部分を強調気味に、恋愛に最も関心があり、友達や周囲のことに目が向いていないような、視野の狭さを出すようにしました。逆にたゆさんのパートははるかを取り巻く人が多く描かれ、視野の広さが表現されていたので、対比が出来ていたんじゃないかと思います。過去パートは展開が早いのでつじつまが合わなくさえならなければ、現在パートより楽だったと思います。
それと、タクミはかなりデフォルメした「だめんず」にするようにしました。でもこの「だめんず」具合は、たゆさんとかなり悩みました。借金まみれにする?実家がめんどくさい?などなど。そして結構な鬼畜のタクミが出来上がりました。笑
ひ:作品の中、タクミのポジションはわたしたちの中で一番最悪でしたね。
吉:美咲も、たゆさんによってかなり勢いのいいキャラクターになっていきましたよね。私は美咲みたいなタイプをたゆさんのように上手に書くことはできないな、と思ってました。美咲によって、2023年のはるかの不完全燃焼感みたいなものが際立ったんじゃないかと思います。
コラボして良かったこと、そのほか何でも思ったことがあれば。
吉:「みらっち公式」のトークで話し合い、noteの「下書き共有機能」でやり取りをしました。ひとりでは考えもつかない設定やアイディアがどんどんとび出して、とても刺激的でした。例えばはるかのフルネームは「吉平」という苗字にしたのですが、それは、「よしほ」と「ひらさわ」をあわせたものです。主人公の名前や主人公のディテールを話し合っているときはわくわくしましたし、どんなお話にするか、いちから話し合うのが本当に楽しかったです。
途中、ところどころでたゆさんご自身のいろんなお話を伺うこともできて、貴重なお話に勉強になることばかりでした。
あ、過去はるかが、トランシーバーの応答を「please」だと思っていたところは、私自身が疑いもせず「please」だと思っていたのです。「現在のはるか」担当のたゆさんに「それはoverだと思いますが…」と教えてもらって、顔から火が出ました。でもそんな時もたゆさんは笑ったりせず、いつも優しかったです!笑笑
それと、Marmaladeさんの小説がアイディアのヒントになったり、noteの他の方の作品や、この作品の連載中にいただいたコメントなどからもヒントをいただけて、noteの面白さ、醍醐味のようなものも感じられたと思います。
ひ:わたし、雑談多すぎますよね、いつも💦まぁ、まずは刺激ですよね。ふたりでやってると、当然すれ違う部分もあって、だけどそれも含めて点と線を結ぶみたいな。だいたいのストーリーは出来ていたけど、お互いのパートにはそれほど突っ込みはしなかったので「お~そうきたか」みたいな、じゃぁこっちは「これでどうだ」的なバトルじゃないけど、そっちがハト出すならこっちはうさぎだみたいな感じで楽しかった。
それと、自分だけでやってるとだらだらしてしまうけれど「待たせてる」と思うとさっさと書かなきゃとお尻を叩かれる気になるので、〆切はないけど阿吽の呼吸的ないいテンポがあったかと思います。
お互いの作風について意識したことはありますか?
ひ:わたし個人としては、みらっちさんの小説は「同じ匂いがする」と感じていたのですが、だからといってひとりの文章とみなすにはわたしの文章は稚拙で。みらっちさんの文章が一貫した流れに対し、わたしの方に違和感があったので、少し真似てみたりしました。
書き癖っていうのか、最近自分の悪癖に気付いたというか「…」をやたら多く使用しているみたいなんですが、全体を見渡すとうざいなぁと思って、みらっちさんの「――」⇐を真似て、緩和しました笑
パクリばっかですね( ̄▽ ̄;)
吉:私はむしろ、過去と現在の間に7年の時間があるので、違和感さえ出なければ、作風をあまり寄せない方がいいと思いました。なので、あえて意識しないようにしていました。たゆさんと真逆の考えでいたんだな、と、たゆさんの言葉を聞いて今ちょっと面白く感じています。27歳から34歳の7年って別人かと思うくらい違うことってあるように思います。設定の中で、同一人物であると感じさせることが出来たらいいなと思っていました。
ひ:そうですね、主人公だけは別人格になったら話にならない。ただ、未来はるかは大人なので、過去はるかを「自分」といよりよく似た妹のような感覚で見てましたね。
吉:やはり「現在」の人格が「過去」の延長線上にあるという点で、どうしても未来はるかが過去はるかを土台にするような感じになりますよね。そういう意味ではやっぱり「2023年」のパートのほうが「2016」年にあわせたりしなければならいことが多く、ご苦労があったかも――と今さら気づきました。「——」使ってみました。笑
今回ばかりでなく、お互いの作品を読んで感じたことを教えてください。
ひ:すべてではないのですが、いくつか作品を読ませていただいていて、わたしの知らない言葉を見つけると「そんな言葉があるのか」とか「あぁこういう表現でくるか」と、語彙力のないわたしにはとても勉強になります。
わたしは結構会話に逃げるところがあるのですが、みらいさんの小説は丁寧で、情景を想像させるに十分な文章に引き込まれますし、とにかくダラダラしていない。テキストのように勉強させていただいてます。
吉:たゆさんの作品は、私も沢山は読んでいないのですが、とにかく会話のテンポがよくて、主人公を取り巻く人物や状況を膨らませるのがうまいなあと思います。今回の『Answer』でも、冒頭、お母さんとの電話での会話から始まるんですが、自然に主人公の名前が呼ばれてディテールがわかるようになっていて、流石だなあと思いました。あと、個人的にルビの振り方が独特で好きです。なるほどこんな風に内心を表現するやり方があるんだなと思います。
ひ:やっぱり表現とか、そういうとこ見ちゃいますよね。
コラボ企画は今後もやりたいですか?
吉:やりたいです。他にもいろんな方法や可能性があると思うので、チャレンジしてみたいです。
たゆさんも私も創作に対しては結構冷静というか職人肌というか、やり取り自体は若干仕事みたいな感じでしたが、とはいえ仕事のようにタイムスケジュールは決めずに、思いついた時に連絡を取り合っていました。それがなかなか絶妙で(たゆさんが合わせてくださっていたのだと思いますが)。夜討ち朝駆けではないですが、自由な時間が夜中だったり朝だったりしても、お互いにうまくやり取りができ、これは相性が合うのだろうなと思いました。
ひ:これはまた是非やりたいです
みらいさんの言う通り「相性」ってあるんだろうなって思います。お互いのやり取りに特に不便も感じませんでしたし、意見交換にしてもつまづくことなく、むしろやりやすかった。
今回は「過去」と「未来」だったので、書きやすい部分はありました。書き方その他について、まだまだ課題は盛りだくさんだとは思いますが、だからこそ次はもっと突っ込んだ感じのものをやってみたいと思います。具体的な考えがあるわけではないのですが。
お互いのパートで好きなところを教えてください。
ひ:まず『逃げ恥』が出て来た時点ですげぇなって思いました。当時のドラマなんかが出てくると、よりリアリティが生まれ、そこから話も膨らみますし、すごく入りやすかった。
「ほぼ日手帳」は知らなかったのですが、この手帳の特徴にもまた助けられました。なんの変哲もない手帳だったら、お互いの想像する手帳がまったく違って、うまいこと話が繋がらなかったかもしれない
過去はるかと未来はるかのやり取り部分は、みらいさん任せでしたね。虫食い文字の部分、あれはさすがだなと思いました。わたしは短気なので「予約不要」と書き込むことはできても、そのあとの過去はるかのこころの機微まではうまいこと表現できなかったと思うので、楽させてもらっちゃった感じです。
それと、個人的に「まさかまさかの真坂速報」が好きで、はるかの社内の話をもっと、みらいさんの文章で読みたいなと思いました。結果的にわたしのパートが多くなってしまいましたが、そう望んでいる人は多いと思います。
吉:迷いますが、私のイチオシはやっぱりここです。
迷いながら生きていたはるかがぱっと前を向くこのシーンがとても好きです。それまでの間に、はるかが自分を抑え気味にしていることなどが表現されてきていて、このときにパッと開けたなあ、と。
それと、たゆさんもおっしゃっていましたが、「冷蔵庫メモ」をタクミの漫画にしたところ。アイディアを覚えていて丁寧に拾い上げ、最大限生かして表現されていて、なるほどこういう使い方!とグッときました。
「まさかまさかの真坂速報」はとっさに思いついたのですが、ふと、真坂さん結構エグいな、文春砲みたいだなと思いました。笑 イメージは「ちびまる子ちゃん」の野口さんみたいな感じで「クックックッ」って。それこそまさか、ここに反応していただけるとは。笑 でも確かにちょっと読んでみたいですよね。笑
ひ:「まさかまさかの真坂速報」、やりましょうよ。
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というわけで、おふたりの対談、楽しんでいただけましたでしょうか。zoomなどを利用したわけではないのに、本当に会ってお話したような対談になりました。これも相性の良さゆえ、かもしれませんね。
またいつの日にか、ひらさわたゆ×吉穂みらいのコラボ、実現しますように!おふたりとも、ありがとうございました!
ひ:―—ありがとうございます!
吉:――ありがとうございました!
(文責:みらっち)
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