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農業インターン、という言葉では語り尽くせないもの

終わってしまった。


この長いようで短い1週間が、どれほど私を成長させてくれたんだろう。それが分かるのは、もっとずっと先かもしれない。

このプログラムで見て、聞いて、触れて、嗅いで、味わったものやこと。それらがどう生きるかは、これからの私にかかっている。このnoteを書くことも、私の経験を伝える上で間違いなく大きな一歩になる。


だいぶ時間が経ったが、振り返りといこうか。
まずは修了作文そのまま載せよう。ちょっと堅苦しいからまた別の記事でラフなことも書きたいな。


このプログラムで得た学びは、大きく二つに分けられると思う。ひとつは農業そのものや浦幌で行われている取り組みそのものについての学び、もうひとつは人としての生き方についての学びだ。この二つは独立して存在するわけではなくて、きっと農業の知識や浦幌での取り組みの根底にも誰かの思いや生き方が隠れているのだろう。


まず、農業や浦幌自体についての学びのなかでもっとも印象的だったのは、私が思い描いていた農業風景と、今回携わった農作業とのギャップだ。私が今まで触れたことのある農業は、どちらかというと大規模な生産よりも自給自足を目的にした小規模なもので、機械をほとんど使っていなかった。だから、プログラム内で農作業を行うと聞いたときも、外に出て手作業で地道にやるのだろうな、と思っていた。十勝の農業は大規模で沢山の機械を使う、ということは知識として持っていたものの、実際の作業風景と結びつけることができなかった。

今回のビートポット作りはそんな私のイメージとは真逆で、工業的・機械的で効率が求められる作業だった。レーンに載ってポットが回っていき、同じ作業を一日中繰り返して目標の数を目指す。機械音が大きすぎて、作業中は言葉でコミュニケーションがとれない。言ってしまえば単純で面白みがなくて疲れる作業だし、きっと作業初日や二日目の私もそう思っていただろう。

でもそのネガティブな見方は、作業二日目の夜に一人の農家さんからもらった言葉で大きく変わった。「一見すると同じ作業の繰り返しかもしれないけど、もっと細かく見たら一つとして同じ作業はないよ」ペーパーポット一つひとつの土の付き方、紙の折れ方、気温、自分や仲間の体力・体調など様々な要素によって、同じに見える作業にも変化が生まれる。そう思って作業に取り組むことで、楽しいというポジティブな気持ちを引き出すことができた。そんな細かい視点は、どうしてこの作業が必要なんだろう、どうしてこの道具はこの形なんだろう、と疑問を持つきっかけにもなった。仲間と休憩時や作業後にフィードバックやアドバイスをしあって、情報の共有・共感ができたことも、作業を楽しむことができた理由の一つだと思う。

自分の経験してきた農業と対局にあるような農業にこのプログラムで触れたことで、改めて農業には様々な種類があって、これが正しい、という形はないと気づくことができた。



応募するまで浦幌という地名すら知らなかったのに、私は到着した初日の時点ですでに浦幌の町に強く惹かれていた。海も山もあって、星がきれいで、美味しいものもたくさんあるという土地としての魅力はもちろんだが、それ以上に、自分の住む土地に愛着をもって、その土地を良くするために力を注いでいる人がこんなにもたくさんいるのがいいな、と思った。

同時に、自分の生まれ育った町や今住んでいる地域について、もっと知りたいと感じた。どんな土地にも、唯一無二の魅力や価値になる可能性を秘めているものがあるけれど、それに気づいて、発信する人がいなければ、その土地が輝くことはできないと学んだ。浦幌には浦幌なりの、札幌には札幌なりの、私の地元には私の地元なりの地域の個性があって、魅力の引き出し方も全く違う。

このプログラムでは浦幌で行われている新しい取り組みや展望について聞くことが多かったからか、浦幌は地域おこしに成功している町、のように思える。でも今も多くの課題を抱えているはずで、どうしたら全ての人にとってより心地いい場所になるのかを模索している途中でもある、ということは忘れずにいたい。



このプログラムを通じて得た自分の生き方についての学びは本当に様々だが、それらにあえて共通点を見いだすとしたら、「自分と他者」だ。私はプログラム期間中の大目標として、周りにいるすべての人に信頼される自分になることを定めた。そのために、普段苦手意識を抱きがちな、自分から人に話しかけることを心がけた。相手から信頼されるためには、コミュニケーションを通してまず自分が相手を知り、相手にも自分を知ってもらう必要があると思ったからだ。目標が達成されたのかどうかはみんなに聞かないと分からないけれど、個人的にはまだまだできたなと悔やむ部分もある。まだ、話しかけられるのを待ってしまう自分がいる。この目標はこれから先もずっと掲げ続けて、いつか、達成したと満足できるようになりたい。

農家さんや一緒に暮らしたみんなとの対話は、今までの人生で考え続けていた「自分と他者」の関わりについて、人にさらけ出した初めての経験だった。

他者を優先し思いやることが自分を犠牲にしている、逆に自分のことで手一杯になり他者を思いやることができないという葛藤。

他者からの評価をもとに動いてしまう自分。

プライドが高くて他者に頼れない自分。

他者と自分の比較によって自己肯定感を失う日々。

他者と関わりたいと思う反面、自分一人の時間を大切にしたいという矛盾する気持ち。

自分の限界や他者の人柄・能力を決めつけてしまう自分。

挙げればきりがないけれど、これらの複雑な感情を言葉にできたこと、そしてみんなの考えを聞けたことで、頭の中が整理された。



将来農業をやってみたいという気持ちは、このプログラムを経験してより強くなった。農業はただ作物を作るだけではなく、自然と向き合うことの難しさや食の大切さ、そして人との関わり方をも教えてくれるものだと気が付いたからだ。

プログラム前からいわゆる半農半Xのような生き方(農業以外のことで収入を得つつ自給のための農業を楽しむ)に興味を持っていたが、実際にそのような生き方をされている方と話し、半農半Xの中にも様々な可能性があるのだなと思った。農業に生活の軸を置きながら楽しみとして別の事業をやっていたり、街づくりという大きなテーマを掲げる中でアイデアを形にしていった結果、様々な分野の取り組みを手がけることになったり。出会った農家さんの多くが、農業一本ではなく、経営者など他のやりたいこともやるという生き方をされていたことも印象的だった。

まだ具体的に、農家になるのか・農家になって何を育てたいか・どうやってお金を稼いでいくかなどは決めていない。まずは大学で人と環境との共生の仕方や農業についての知識を学ぶとともに、サークルやイベントでの農業・地域のコミュニティーづくりという実践の機会に自分から関わっていこうと思う。



最後に、一緒に過ごしてくれたみんな、詠風さん、ばんちゃん、農家さんを始め、このプログラムに関わってくれた全ての人に感謝します。本当に、本当にありがとうございました。

また会おう。

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