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中編小説【3月の徒然】完結🌸

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和泉式部の和歌に触れたことから始まり、和歌に隠された意味、名前の意図から自分を再確認していく高校生の春のお話。 序・破・急・詠・囀(あとがき)
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3月の徒然(4)

3月の徒然(4)

🌸詠
下駄箱前でクラス替えのプリントを貰い自分の名前を確認していると、安藤が後ろから羽交い締めにしてきた。

「ナルミ!よかったよかった、これで記録更新、俺の勝ちな」

ギブギブ!!何勝ちって?

「覚えてるだろ?俺の予想通り今回も同じクラスだから、敗者の鳴海奏多は、今後も勝者安藤春樹のカラオケに付き合うこと」

新学期早々、元気な奴…。

新しいクラスへの緊張感は、安藤のおかげでマシになったが

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3月の徒然(3)

3月の徒然(3)

🌸急翌朝、夜通し降っていた雨はすっかり晴れ上がり、濡れたアスファルトがキラキラと日差しをはね返して寝不足の目に眩しい。

今日は終業式。
最後に宮原は何を話すかな?大好きな和歌の一つを、また聞いてもいないのに教えてくれるかな?何故か前より少し期待しつつ、まだまばらな教室に着いた。
中谷葉月いた。よし、と息を吐いて声を掛ける。

中谷、これ、宮原から渡せって預かってて。

「え、あ…鳴海君。ありが

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3月の徒然(2)

3月の徒然(2)

🌸破安藤春樹は、歌う為に生まれてきたんだと思う。歌うことが何より好きで、全て歌うことを中心に考えている。

だから、適当に見えて炭酸も烏龍茶も喉に悪いと聞けば飲まないし、逆にマヌカハニーが喉にいいと聞けば早速注文して毎日舐めている。

「俺、物心ついた最初の記憶が、バスの中で歌ってる記憶でさ。母親に連れられて、じいちゃん入院してたから、そのお見舞いかな?どこか行く為に珍しくバスに乗って嬉しくて、

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3月の徒然(1)

3月の徒然(1)

🌸序「3月の和名は実は沢山あって、どれも花盛りの優しい名前ばかりなんですよ」

弥生(やよい)
禊月(けいげつ)
花見月(はなみづき)
桜月(さくらづき)
花月(かげつ)
花津月(はなつづき)
早花咲月(さはなさきづき)

黒板にチョークの音がカツカツと鳴って、その度に砕けた欠片が光に当たってキラキラと散っていく。古文の宮原の声は今日も安定で眠気を誘う。

そもそも期末後の消化期間とはいえ、次の

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